今後は更なる拡大も? イーサリアムとコントラクト技術に迫る!


現在、仮想通貨は世界中に1,000種以上存在すると言われています。仮想通貨の中でも、ビットコインの次に時価総額が大きいのが「イーサリアム(Ethereum)」です。

イーサリアムは単なる仮想通貨という側面だけでなく、それを支える「スマートコントラクト」技術とともに、これまでのビジネスのあり方を根本的に変える可能性を秘めています。イーサリアムの概要やスマートコントラクトの仕組みを分かりやすく解説します。

仮想通貨「イーサリアム」とは?

イーサリアムは、ロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が19歳のときに考案した仮想通貨のプラットフォームです。イーサリアムは、2015年7月にリリースされ、独自の通貨単位である「イーサ(Ether)」で取引を行います。

ビットコイン以外の仮想通貨は「アルトコイン」と呼ばれます。中でも代表的なアルトコインと言えるのが、このイーサリアムです。ユーザーが独自に定義した契約・財産を扱うことができる柔軟性の高さが特徴です。

イーサリアムは、新しい資金調達方法である「ICO(Initial Coin Offering)」にも使われています。
イーサリアムは2016年に大きな動きを見せました。しかし、6月にイーサリアムに関連するプロジェクト「The DAO(ダオ)」がハッキングを受け、当時の価格で約52億円のイーサリアムが流出する事件が発生します。

その後、イーサリアムを一部切り離して、新しい仮想通貨「イーサリアム・クラシック」が誕生しました。

イーサリアムを支える「スマートコントラクト」技術

ビットコインには「ブロックチェーン」と呼ばれる基盤技術があります。ブロックチェーンとは「過去の取引データが全て記録されている台帳」と言い換えることができます。ビットコインを受け渡した記録を積み重ね、情報の信頼性も保たれています。

同様に、イーサリアムを支える重要な仕組みが「スマートコントラクト」技術です。スマートコントラクトはブロックチェーンを応用しており、仮想通貨のみならずビジネスや組織のあり方を根本的に変える可能性を持つと言われています。

スマートコントラクトとは「賢い(Smart)」と「契約(Contract)」という意味の単語を組み合わせた造語です。一言で表すと「人的なリソースを使わずに取引を自動的に実行すること」です。

スマートコントラクトの例として、よく用いられるのが「自動販売機」です。自動販売機では買いたい飲み物の価格以上のお金を入れると、購入できる商品のボタンが光ります。買いたい飲み物のボタンを押すと、自動販売機から商品が出てきます。その一連の取引には人の手が必要ありません。

また、スマートコントラクトは管理者なしで電子取引をすることを可能にする仕組みです。ここでいう取引とは、契約や合意を基に金品や労働を提供することです。取引する際には「契約・合意内容が取引中に変更されないこと」「所定のやり取りが正しく実行されること」が重要です。

スマートコントラクトでは、これまでの電子取引に存在した仲介業者が不要となる可能性があります。運用コストを削減し、カウンターパーティーリスク(取引が完結しないリスク)も軽減します。インターネット上で人の手を介さずに取引が完結するので、距離や時間などの物理的制約も受けません。

また、他の暗号通貨はスマートコントラクトの記述が開発チームに制限されているのに対して、イーサリアムは誰でも自由にスマートコントラクトを作成、実行できます。

イーサリアムを活用したい企業が続々と

イーサリアムは投機的に仮想通貨を売買するだけではなく、所有権の移転や契約の自動執行など企業間取引への応用が期待されています。しかし、開発されてまだ日が浅く、商用として利用されるまでには時間がかかるようです。

そんな中、イーサリアムを支える技術の幅広い活用を目指す企業連合「エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(Enterprise Ethereum Alliance:EEA)」が2017年2月に発足しました。EEAは、JPモルガン・チェースやマイクロソフト、インテルなど欧米諸国の30社が立ち上げた組織です。発足時から注目を集め、現在では150以上の企業が名を連ねています。

EEAでは、現在のイーサリアムとの相互運用性や互換性を維持した上で、企業向けにカスタマイズされたイーサリアムベースのプラットフォーム(Enterprise Ethereum)の構築を目的としています。イーサリアムを企業取引に応用する上での課題研究や仕様づくりを進めています。

● 携帯電話の契約最適化を図る、KDDI

2017年9月にEEAに加盟したKDDIは、Enterprise Ethereumを活用したスマートコントラクトの実証実験を開始しました。同社はKDDI総合研究所、クーガーと共同で、携帯電話の店頭修理申し込みから完了までの工程をリアルタイムに情報共有し、オペレーションを効率化する可能性を検証しています。

具体的には、携帯電話の修理の際、修理価格や機種変更価格、中古市場価格といった異なる事業者が採用している、複数のシステムの情報をプログラムが自動判別して、最適な契約が行えるかを検証しています。また、今後は修理事業の実験だけでなく、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの技術とスマートコントラクトを組み合わせた複数の実証実験を実施する予定です。

● トヨタ子会社が自動運転にも応用

トヨタ自動車の研究開発子会社である米トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)は、2017年5月にEEAに参加しました。米MITメディアラボと共同で、自動運転の開発に必要な走行履歴や各種センサー情報を収集する基盤を構築する計画を明らかにしています。

自動運転車のオーナーが走行履歴データを記録することで、データの所有権を維持しながら、自動車メーカーなどにデータの使用権を販売するという仕組みです。個人と企業の間で走行履歴データを共有することで、使用権を売買する市場が構築できるとともに、走行履歴を記録する機能によって自動車保険の査定やカーシェアリングへの応用を見込んでいます。

● 保険証券を電子化する実証実験、NTTデータ

NTTデータと東京海上日動火災保険は2017年4月、イーサリアムを活用した保険証券を電子化する実証実験が完了したことを発表しました。銀行が発行する支払いの確約書である信用状と、保険内容を保証する保険証券などの保険契約に必要なデータを全て電子化し、契約手続きや内容確認といった業務を自動化することを検証しました。

保険証券の電子化では、証券データの改ざんリスクがあるため、データ改変の危険性がないシステムを構築することが課題でした。Enterprise Ethereumを使えば、複数の事業者が参加してもデータ改ざんが不可能なシステムを安価に構築できます。現在、実運用に向けてコンソーシアムを設立しています。

イーサリアムとスマートコントラクトの技術は今後も拡大が続く

ここまで見てきたように、イーサリアムとスマートコントラクトの商用利用に向けた機運が高まっています。将来的にはイーサリアムが本格的に企業活動の基盤として利用されるようになるかもしれません。

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