PayPay登場!新興国のリバース・イノベーションが先進国を凌駕する可能性


ソフトバンクとヤフーの合弁会社であるPayPayが、2018年10月にスマホ決済サービスを開始しました。PayPayにはインドのPaytmの技術やノウハウが活用されています。ソフトバンクが出資した企業の技術やノウハウを別の企業が取り入れて、日本の新しいサービスに組み込まれるという面白い動きが行われています。新興国のサービスが新興国に普及することをリバース・イノベーションといいますが、こういった傾向が加速しています。

突如現れた決済サービスPayPay

2018年10月にローンチしたPayPayでは、インドのPaytmのモバイル決済サービスのノウハウを活かしたバーコードやQRコードスマホ決済サービスの提供を始めました。支払い方法は電子マネー(電子マネー、Yahoo!マネーのいずれか)とクレジットカードから選ぶことができます。

キャッシュレス決済導入店舗を増やすには、都市部のマーケットを囲うほうが浸透する可能性は高まるはずですが、PayPayはこれまでキャッシュレスへの対応に足踏みをしていた全国に何百万とある個人商店や屋台などをターゲットにしており、全国各地に営業所を設置しています。地方にPayPay導入店舗が増えれば、都市部中心の利用顧客の購買行動とは異なる新たなデータが取得できるはずです。それを都市部の加盟店のデータと比較・部分積することで、地方ならではの新しいビジネス創出や地方創生の促進、インバウンド(訪日外国人)からの満足度向上にも可能性があります。そのため、まずはPayPayの認知度を高めて同サービスの加盟店を増やして、日本中に広がるYahooIDをもつ会員のデータを取得するという戦略を取っているのかもしれません。

なお、PayPayは国内の飲食店を中心に利用が拡大しており、2018年11月以降、全国のファミリーマートの一部店舗より順次利用が可能になり、さらに12月4日からはセルフレジを除く国内ファミリーマート全店で利用可能となる予定です。また、ドラッグストアやタクシー会社、ホテル、アパレルショップなどでもサービスが追加され、今後も利用店舗が増えて行く予定です。

また2018年10月25日には、中国のAlipayとも連携を開始し、需要が高まるインバウンドの飲食やショッピング時にも支払が可能になりました。アジアを中心とする海外顧客を取り込もうとしている様子がうかがえます。

リバース・イノベーションはなぜ起こるのか

PayPayが戦略的に地方マーケットの獲得を意識しているのは、ある種のフロンティア精神があるからだと考えられます。これまでイノベーションといえば、アメリカや欧州を始めとした先進国発で世界に浸透していきました。しかし、技術やノウハウが先進国から新興国に伝承されるにつれ、新興国でもそれらを活用した新たなイノベーションが生まれるようになったのです。

先進国は便利で「なんでもある」状態で新たなイノベーションを起こそうとします。一方、新興国は未整備の状況から試行錯誤を繰り返して新たな道を模索しています。そのため、新興国は自分たちで利便性を高めるためにフロンティア精神を持って推し進めていくので、これまでの切り口に新たな視点が加わります。そうして生まれたイノベーションは大きなノウハウとなり、新興国から先進国に至るまで世界中に広まっていくといえるでしょう。

インド発のリバース・イノベーション事例

実際に新興国から先進国に広がるリバース・イノベーションの事例をあげると、インド発のさまざまなケースがあります。

●GEはインド市場向けECGをインドから世界へ

GE(ゼネラル・エレクトリック)はインド向けのECG(携帯型心電計)の開発から販売までをインドで行いましたが、「小さく・軽く・低価格」が受けて、インドから欧米を始めとした世界に広まっていきました。

●タタ・モーターズは低価格自動車をインドから世界へ

タタ・モーターズもリバース・イノベーションを起こした企業の一つです。タタには10万ルピーで購入できる低価格自動車「ナノ」があります。2008年にインド国内の自動車の普及を目的に、低価格でシンプルに作られたナノは、改良を加えて欧米でも販売されるほど人気になりました。

これからのビジネスのヒントは、新興国にあり?

PayPayはPaytmのノウハウを活かしていますが、Paytmはもともと中国のアリババ系列のアント・ファイナンシャルからの出資を受け、彼らの技術をベースにインドで商品開発を行い、インド国内から海外に展開していきました。新興国の技術はその国の状況に合わせて伝播し、日本にやってきました。先進国での当たり前が新興国では当たり前ではなく、新たなインフラやビジネスにつながっているのです。これからは新興国発で新興国とは異なるイノベーションが起きるかもしれません。

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