日本の先を行く?QR決済の規格化を進める 台湾キャッシュレス事情


2016年のVISAの「キャッシュレスシティ:デジタル決済がもたらす恩恵の実現」によると、東京と台北のキャッシュレス成熟度は5段階のうちレベル3(デジタル成熟過程)にとどまっています。しかし、今や台湾はQRコードの規格化に成功し、キャッシュレス化比率を大きく向上させようとしています。台湾のキャッシュレス化の取り組みについてご紹介しましょう。

官民一体でキャッシュレスに取り組むワケ

台湾金融監督当局(FSC)は、キャッシュレス化に向けてモバイル決済の比率を2015年の26%から2020年に50%、そして2025年に90%まで引き上げる計画を掲げました。そのためのタスクフォースには、台湾国内の銀行が加盟する銀行間ネットワークを運営するFISC、クレジットカードのネットワークを統括しているNCCCなども参画しています。

台湾のスマートフォン普及率は世界的に見ても高く、2018年は93%に達するとみられています。それに加えて、国家発展委員会の「歷年數位機會(落差)調査報告」よると、人口の80%以上はモバイルからインターネットにアクセスしていると言われています。つまり、台湾では豊かな経済とスマートフォン普及率というモバイル決済が浸透する基盤をすでに備えていることがいえるのです。

しかし、隣国の中国でモバイル決済市場が急速に拡大しているにもかかわらず、台湾政府はセキュリティの観点からモバイル決済について保守的な立場をとっていました。ようやく政府が重い腰を上げ、モバイル決済に新規参入できるよう規制を緩和したのは2015年になってからです。

中国のように急速にモバイル決済が浸透し市場が拡大すると考えられていたのにもかかわらず、現金やクレジットカードでの支払いの方が安全であるという考えが根強く残っていたため、普及は限定的でした。それは、中国やインドのように成熟した金融システムがなく、郊外での銀行の利用が制限されていることから、偽札が横行する国ではモバイル決済市場は急速に成長しています。反対にその不便さがない台湾では伝統的な支払方法が支持される傾向にあるのです。

こうした状況を打破するべく、官民一体となってキャッシュレス化に取り組む背景には決済トランザクションのデータが外国に流出することへの懸念があります。デジタル立国を目指すためにも、キャッシュレス化を向上させることで決済データ量を増やし、データ分析に使用したいという狙いがあるのです。

乱立するQRコード規格を制す台湾Pay

キャッシュレス化推進の一環として政府主導で進めているのが、モバイル決済サービス「台湾Pay」です。台湾Payは「QRコード決済の統一方式」を実現したもので、台湾Payに対応した銀行カードを登録すると使えるようになります。

わずか1年の準備期間を経て2017年にスタートし、2018年には加盟する銀行は23行、対応する流通カードが全体の3分の2にまで達しました。2018年中には、QRコードによるクレジットカード払いも対応する予定です。今後は交通系電子マネーも対応し、最終的には身分証明機能も視野に入れています。

台湾Payの普及を加速させるため、政府は店舗側のサポートにも力を入れています。クラウドレシートや店舗アプリの提供など、店舗支援機能が充実しているだけではなく、税金支払や金額のモバイル引き出しも可能です。また、会計時に店舗がQRコードを印刷して決済する方式も選択できるため、設備投資の負担を軽くしています。

店舗側のメリットはそれだけではありません。台湾政府はモバイル決済時における営業税を2020年まで5%から1%に引き下げる法整備を行いました。また、銀行間資金移動の手数料も無料としており、店舗側のメリットを厚くすることで普及を一気に進める狙いです。

2015年にモバイル決済に新規参入が可能となってからQRコードの規格が乱立し、国内は競争に疲弊し普及の進まないという図式になっていました。これを打開するべく、台湾政府はQRコード規格を統一し、法整備を絡めながらいままでキャッシュレス決済が進まなかった中小店舗などでの普及を図っています。

日本においてもQRコード規格統一の動き

日本においても、高度経済成長期を経験して成熟した経済と、高いスマートフォン普及率、そして現金決済をという点では台湾と似ています。QRコードについてもNTTドコモ、LINE、ヤフーなどが次々と参入して乱立状態となっており、店舗側の導入負担が重く、消費者が混乱し選べなくなっている状態が続いています。

こうした状況で日本政府もQRコード統一に向けて動き出しました。産学官が連携するキャッシュレス推進協議会では、2018年8月にQRコード統一に向けた初会合を開催しました。協議会には金融機関やコンビニエンスストアなど約130企業が参加し、2018年度中に規格の統一を目指します。

中小小売事業者がメリットを感じられる決済手段を

金融機関と流通では思惑も異なることから、日本国内における規格の統一も難航が予想されます。この困難な状況のなかで規格を統一するには、台湾のような店舗ファーストの視点が参考になります。今後キャッシュレス決済比率を高めるには、利害関係の壁を超えていかに中小の小売事業者が導入にメリットを感じられるかにフォーカスしてキャッシュレス化を進めていくことがポイントとなるでしょう。

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