アリババのプラットフォーム戦略とは?「相互保(シャンフーバオ)」がもたらす新たなインシュアテックのカタチ


2018年10月16日、アリババの関連会社であるアント・フィナンシャル社が発表した新しい保険「相互保(シャンフーバオ)」。同年11月14日までになんと1,800万人が加入しているこの保険の背景にあるアリババグループの強みと信用スコアについて解説します。

信用スコアの結果で加入可否が決まる「相互保(シャンフーバオ)」

「蚂蚁金服(アント・フィナンシャル)」が2018年10月に販売した「相互保(シャンフーバオ)」は、アリババグループの「支付宝(アリペイ)」から申し込める保険です。加入から支払いまでのすべてをアリババグループのサービスでまかなえるのが特徴です。加入条件にはアリババの会員であること、加入年齢が18歳から59歳までであること、健康状態が要件となっています。また、同社グループの芝麻信用が650点以上の人だけが加入できるのも特徴です。

相互保に加入すると、がんや心筋梗塞などの生活習慣病を始め100ほどある疾患に発症すると一定以内の保険料が支払われます。期間は1年であり、支払い条件はあるものの、39歳以下なら30万元まで、40歳から59歳までなら10万元を上限としています。

重要疾病にかかると書類を提出して保険金を受け取ることになりますが、加入者全員が他の加入者の個人情報以外の情報の閲覧権限があります。そのため、個別の申請に対して異議申し立てが可能となるため、虚偽の申請を防ぐことができるのです。

そもそも芝麻信用は、そのスコアによって就職、結婚、転職先などにも影響があり、受けられるサービスにも差があります。保険料の虚偽申請や不正受け取りが分かれば信用スコアにも影響を及ぼします。そのため、保険料の不正受け取りよりもスコアを高く保つほうがよいと考えられ、健全な運用が期待できるのです。

相互保は信用スコアが高い人の相互扶助のもとに成り立つ

相互保は保険料の支払い方に特徴があります。一般的に保険は加入時に支払いが必要になりますが、相互保は無料で加入できるのが特徴です。保険料はアリペイから月に2回(14日、28日)引き落とされ、期間内に加入者の病気によって支払われた保険料を他の加入者たちで負担するとういう仕組みです。アント・フィナンシャルには運営管理費用が10%入るだけで、それ以外の手数料はかかりません。

アント・フィナンシャルの公式HPでは500万人が相互保に加入し、約2週間の期間内で100人が重大疾病を患い、全員に30万元が支払われた場合、3,000万元に管理費10%を加えた3,300万元を加入者全員で割賦して負担することになるので、一人あたりの負担額は6.6元になると伝えています。

重大疾病を患った人が500人いて、全員に30万元支払われた場合は1億6,500万元を500万人で負担するので一人あたり33元支払うことになります。また、加入者数が1,000万人になれば、重要疾病を患った人が100人だったとしても、支払いは3.3元です。

加入数が増えれば増えるほど支払い保険料は安くなりますし、重要疾病にかかる人が減少すれば負担する保険料が少額になるということです。

健康に気遣える人は信用スコアが高いという仮説

この保険はブロックチェーンで情報をつないでいますが、中国で保険への意識が高まったのはここ最近です。中国では公的医療制度が徐々によくなっているといわれていますが、重要疾病にかかる治療には50〜60万元かかり、そういった疾病にかかった層の42%については、医療費が家計に大きな負担を与えています。

中国保険業界協会が発表した調査によれば、重要疾病に備えるべきだと思っていても保険に加入していない割合が82.1%、医療保険に加入する必要があると考える47.8%のうち実際に医療保険に加入しているのは6.7%程度で、保険の重要性は分かるものの実際に「備え」に向けた行動が行えていないことが分かります。

一方で、健康に対する意識の高まりから、早期発見・早期治療を意識する人が増加傾向にあるのも事実です。高額な人間ドッグや健康診断を受ける人、病気にならないように食事や運動に気を使う人などさまざまですが、高収入層を中心に医療ツーリズムなどを活用して日本でよい医療を受ける人もいるほどです。

また、中国の医療機関の診察費は前払いが原則ですが、芝麻信用が650点以上の人は1,000元の与信枠が設けられる特権があり、病院を受診した時には、与信枠から医療費が自動精算されるので、前払いが免除されるのです。よって、信用スコアが高得点の層は健康投資を行い、自分の健康を維持するため、必然的に相互保での保険料が抑えられるのです。つまり、健康に気を使う人は信用スコアが高くなる可能性があるのです。

日本でもこれから増える?信用スコアとインシュアテックの融合

こういった動きは少子高齢化社会が進む日本でも起こり得るかもしれません。日本でも予防医療に向けての取り組みが増えており、住友生命の健康増進型保険Vitalityや、東京海上日動あんしん生命の歩く保険など、健康を意識した保険が登場しています。

2018年11月現在信用スコアと融合した保険は登場していませんが、信用スコアによるデータが蓄積され、加入から支払いまで一貫して行えるサービスのプラットフォームが形成されれば、保険大国の日本でもこういった動きが見られるかもしれません。

今後、こうしたメリットのあるサービスが登場した時のために、自分の信用度を高める取り組みとして、健康への意識が重要だといえます。「信用度の高い人=心身ともに健康な人」という図式が成り立つ可能性が出ている今、日々の生活習慣を見直し、より健康的な生活を送る努力をするのがよいでしょう。

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