EMSとは?米中摩擦の影響で世界の市場に変化のきざし?


独自ブランドを持たない「受託製造サービス(EMS)」。台湾や中国の企業がEMSの分野で世界を席巻していますが、米中貿易摩擦や中国の人件費高騰によって「東南アジアシフト」が鮮明になっており、日本企業には追い風となっています。東南アジアでの事業ノウハウを既に有している日本企業は少なくなく、勝機が出てきたのです。

そもそもEMSとは?

EMSとは「Electronics Manufacturing Service」の略語です。自社でブランドを持たず、他社からの受注でさまざまな製品を製造するサービスのことを指します。委託企業側にとっては、自社で製造ラインを持つ必要がなくなるので、全体的なコストダウンにつながるというメリットがあります。

EMSの大手といえば台湾のホンハイやペガトロン、中国のBYDエレクトロニックやカイファ、シンガポールのフレクストロニクスなどが挙げられます。東アジアや東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々にそうした企業が集中している傾向です。各社とも自社ブランドを持たないだけに、こうしたEMS大手の社名まで知っている人は少ないかもしれません。

しかし世界最大手EMSのホンハイはApple製品を受託製造していることで知られています。ホンハイは台湾企業ながら中国の製造拠点でiPhoneの大半を組み立てており実際には中国が世界のEMSの最大の主戦場となっているのです。

東南アジアに強い日の丸EMSに強み

日本は世界のEMS業界でその存在感を落としていましたが、最近状況がにわかに変わりつつあります。その背景にあるのが、アメリカと中国の経済制裁合戦となっている米中貿易摩擦や中国における人件費の高騰です。EMSを利用して中国で自社製品の製造を進めてきた世界企業は、米中貿易摩擦による追加関税の影響をダイレクトに受けます。

そのため委託先を中国から東南アジアにシフトする動きがあり、この流れが日本企業にチャンスをもたらしているのです。タイやベトナムなどの東南アジアでは、日本企業が製造拠点を積極的に展開してきた歴史があります。そのため日本のEMS企業が東南アジアシフトを目指す海外企業から製造を受託しても東南アジアの製造拠点でその生産を進めることができるのです。

こうした商機をつかもうと日本のEMS企業の中には東南アジアにおける生産拠点の増強を計画している企業が少なくありません。中国における人件費の高騰も追い風となり21世紀の「世界の工場」といわれた中国の存在感は薄れつつあると指摘する専門家もいます。

日本のEMSに追い風、復権のチャンス

日本の大手企業も脱・中国の動きを加速させています。2018年3月には大手衣料品ブランド「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが中国よりも賃金の安い東南アジアへの生産シフトを表明。2019年7月は電子機器大手の京セラも生産拠点を中国から東南アジアに移管する計画があることが報じられています。米中貿易摩擦がさらに長引けば、こうした動きはより加速する可能性があるでしょう 。

もちろん台湾のEMS大手なども生産工場の増強を東南アジアで今後進めることを考えれば日本のEMS企業も決して楽観視できる状況ではありません。しかし東南アジアにおいて利がある現状をうまく活かせば、これを機に存在感を高めていける可能性はおおいにあります。パソコンからスマホ、今後は自動運転車やコネクテッドカーなどの次世代自動車などもEMSで盛んに生産される可能性が高まるでしょう。

なぜなら次世代自動車の開発は自動車メーカーだけではなくIT大手も取り組んでおり、IT大手が生産しようとすればEMSを活用することが目に見えているからです。米中貿易摩擦や中国の人件費の高騰、そしてEMSの対象品目拡大の流れを日の丸EMSがうまくつかめるかに注目しましょう。

Photo by dihetbo on AdobeStock

 
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