「eスポーツ」の正体とは?トヨタ、サントリー、レオパレス21が次々と参入


年間9.6%の速度で急成長しているゲームビジネス。

その市場規模は現在では日本円にして15兆円を超え、身近な尺度で評価すれば映画産業(約5兆円)や音楽産業(約4兆円)をもってしてもゲーム産業には敵いません。

その意味では、ゲームはコンテンツ業界の王様といっても過言ではない存在だと言えるかもしれませんが、そんなゲーム産業の中でも近年とりわけ注目されるのがeスポーツの存在です。

プロゲーマーがメジャーリーガー並に稼ぐ時代。世界的ゲーム大会の賞金総額は32億円

eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、コントローラーやキーボードを操作して遊ぶ「格闘ゲーム」を始めとしたビデオゲームのことを指します。

日本ではスポーツと言えば体を動かして汗をかく肉体的な競技のことを指すので、ビデオゲームを「スポーツ」と呼ぶことに違和感を感じるかもしれません。

しかし、本来スポーツという言葉には運動だけではなく「競技」の意味もあり、そうした視点で捉えれば対戦型のビデオゲームもスポーツの一部と考えることができるのではないでしょうか。

そんなeスポーツの市場は想像以上に大きく、例えば、『リーグ・オブ・レジェンド』というゲームタイトルの月間アクティブユーザー数は1億人を超え、これは全世界のテニスの競技人口と肩を並べます。

日本ではそれほど認知度が高いとは言えないeスポーツ。その一方でアメリカ、中国、そして韓国といった国々ではeスポーツは広く浸透しており、『Dota2』というゲームの世界大会の賞金総額はなんと約32億円にものぼります。

新時代の「広告媒体」として大企業から注目されるeスポーツ

そんなeスポーツ市場は、近年新しい広告媒体として数多くの企業から注目されるようになりました。

実際、名だたる大企業がプロeスポーツチームやゲーム大会のスポンサーとして参入するケースが増加傾向にあります。

ここで興味深いのは、その中にレオパレス21、トヨタ、サントリーといったゲーム産業とは結びつきが強いとは言えない企業が含まれている点です。

その背景にあるのは、eスポーツプレイヤーの平均年齢の低さにありました。

eスポーツプレイヤーは10代〜20代の若年層がその大半を占めており、異業種各社はeスポーツを通じてこうした若年層と接点を持とうとする狙いがあるのかもしれません。

例えば、レオパレス21は若年層の入居者に対するアプローチとしてeスポーツ大会を主催し、トヨタは20代30代向けのカローラスポーツという自動車をeスポーツ大会の副賞として提供、またサントリーはeスポーツ選手が試合中に飲むドリンクとしてサントリー天然水を提供するなど、eスポーツとの接点作りに励んでいます。

eスポーツはSNS時代を代表するコミュニティビジネス

異業種各社がeスポーツに注目しているのは、プレイヤーの年齢はもちろんのこと、eスポーツ業界を語る上で欠かせない「コミュニティ」の存在です。

eスポーツが急速に成長したのは、YouTubeやTwitchといった、eスポーツ配信やゲーム実況などが楽しめる動画配信サービスが充実していたため、プレイ人口のみならず、eスポーツを「観る」人口が増加したことにあります。

プロゲーマーの多くはツイッター上で数多くのフォロワー(観客)を抱えていて、ゲーム好きという共通点を持ったフォロワーによってSNS上で巨大なコミュニティ形成が行われているのです。

こうしたコミュニティがいくつも存在することから、eスポーツ業界はインフルエンサーマーケティングが成立しやすい構造となっており、お気に入りのプロゲーマーが試合中に口にする水や食べ物、使用するヘッドホン、着用する衣類のブランドにも大きな注目が集まります。

近年は若年層を中心に従来型の広告が機能しにくくなっていることもあって、異業種各社はeスポーツを通じて新しい広告のあり方を模索しているというわけなのです。

日本がeスポーツに乗り遅れた理由は日本のゲーム機メーカーが優秀すぎたから

日本におけるeスポーツ市場はまだ過渡期と言えますが、それとは対照的に、eスポーツ先進国であるお隣の中国や韓国では大規模な世界大会が開催されています。

中国では北京オリンピックの会場として有名な「鳥の巣」で5万人以上の観客を集めた世界大会が開催され、韓国でもワールドカップ会場で知られるソウルワールドカップスタジオに4万人以上が集まるなど、さながらワールドカップのような規模感で試合が開催されているのです。

これらの国々と比較すると、日本は「eスポーツ後進国」と揶揄されることも少なくありませんが、とは言っても日本はソニーや任天堂を世に送り出したゲーム大国。それにも関わらず日本でeスポーツの発展が遅れたのは日本独自のゲーム事情に原因がありました。

日本は世界トップレベルのゲーム大国で、スーパーマリオやドラゴンクエストなど、家庭内で一人もしくは何人かの友人と楽しむゲーム機が広く普及したため、海外で主流だったPCゲームの人気はそれほど高まらなかったのです。

一方、海外のゲーム市場はゲーム機とPCゲームの割合が半々で、ネットの普及により海外ではネットで繋がった不特定多数のユーザーとチャットをしながらゲームを楽しむという文化が発達しました。次第にそれが他者と対戦する文化を生み出し、現在のeスポーツへと発展していったのです。

それに加えて賞金のあり方にも違いがありました。海外諸国ではゲームの世界大会でメジャーリーグ並の賞金が出るのにも関わらず、日本では法律上それができなかったのです。

日本には「不当景品類及び不当表示防止法」という法律があるため、ゲーム大会の賞金額はゲームソフトの金額の20倍、あるいは最大10万円までに制限されていました。

そのため、ゲーム大会の賞金のみで生計を立てることが難しく、ゲーマーが育成されにくい環境だったことから、eスポーツの発展が遅れたという背景があるのです。

eスポーツがオリンピックの正式種目に採用!?

こうした状況にあった日本のeスポーツ市場ですが、2018年を境に状況が一変します。

この年に競技団体「日本eスポーツ連合(JeSU)」が設立され、同団体がプロライセンス制度を考案したのです。これは2年に1度、5000円の発行手数料を支払うことによって「プロ」として活動することができるようになるもので、プロライセンスを保有することによってゲーム大会で高額な賞金を受け取ることが可能になりました。

さらにeスポーツ業界にとって追い風となっているのがオリンピックの存在です。

近年のオリンピックはマーケティングの観点から若者をいかに取り込むかという点に注力しており、その解決策としてeスポーツを正式種目に取り入れようとする動きが高まっています。

実際、パリオリンピック組織委員会は2024年にeスポーツを正式種目として採用するため、国際オリンピック組織委員会(ICO)と協議を重ねており、ICOバッハ会長も前向きに検討している様子です。

まだまだeスポーツの認知度が低い日本ですが、カーリングなどのスポーツがオリンピックを機に認知度を飛躍的に向上させたように、オリンピックでの正式種目採用はeスポーツの認知度拡大において追い風になると考えられています。

これまで単なる「若者の娯楽」という文脈でしか語られることのなかったゲーム。

しかしそんなゲームは今や若者を中心に大企業やオリンピックを巻き込む「eスポーツ」という一大ビジネスへと姿を変えつつあります。

そんなeスポーツ業界の動向から今後も目が離せません。

Photo by iStock.com

 
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