ルワンダが中国・深センよりも次世代イノベーションの拠点となる!?


売上1000億円以上の企業は、アフリカにいくつあるでしょうか。

100社に満たないと推測する人もいれば、中には1社もないと答える人もいるかもしれませんが、実際にはその数は400社以上にも上ります。

近年世界中の企業がこぞって注目するアフリカの中でも特に注目が集まっているのがアフリカ大陸の赤道付近に位置するルワンダ共和国です。

ルワンダは世界のイノベーションの実験室になりつつある?


四国地方のわずか1.5倍の国土面積に1200万人の人口を抱えるアフリカの小国ルワンダが注目されるようになった要因は、ICT分野における大幅な規制緩和です。

規制緩和に伴いフォルクスワーゲンを始めとした世界中の企業が実証実験の拠点としてルワンダに集まるようになり、今や世界が注目するイノベーションの実験室になりつつあるようです。

中でも特に注目に値するのがドローンの実証実験で、ルワンダではドローンを活用した事業が活発化しています。

そんな中、アメリカに拠点を置く配送用ドローンのスタートアップ「Zipline社(ジップライン)」はすでにドローンを使った医療品(ワクチンや血液)の配送事業を展開しているようです。

ルワンダでドローンビジネスが成功したのは、山谷が多いルワンダ特有の地形要因に加え、都市間を結ぶ道路がまだまだ舗装されておらず、陸路を使った輸送には不便が伴うからでした。

ルワンダではドローンの普及によって、これまでは40キロの山道を4時間かけて運んでいたものが、45分以内に届けられるようになり、医療環境の改善に一役買っています。

そうした点が評価され、今ではルワンダ国内における血液供給の2割を同社が担っているのだそうです。

資源大国アフリカの恩恵をまったく受けていないルワンダ


ルワンダが世界のイノベーションの実験室になった背景にあったのは、輝かしい経済成長を続ける他のアフリカ諸国とは異なった経済発展手段を見い出さざるを得なかったからです。

現在世界でもっとも人口増加率が高いアフリカの人口は、今世紀半ばまでには現在の倍にあたる25億人にまで急増すると予測されていることから近年では「最後の巨大市場」と呼ばれています。

またアフリカが世界から注目されているのは豊富な天然資源も理由の一つで、原油はもちろんのこと、パソコンやスマホにも使われるレアアースや金・銅・鉄、そして原子力発電の燃料となるウランに至るまで、豊富な天然資源を巡って世界がアフリカに注目しているのです。

とは言っても、それはナイジェリア、南アフリカ、あるいはコンゴ民主共和国といった資源大国に限った話で、ルワンダは国土面積も小さく、資源にも恵まれていないことから資源バブルの恩恵を受けることができません。

それに加えて、人口も1200万人と少ないことから、途上国が得意とする労働集約型産業で価格競争を売りにしたビジネス(大量生産ビジネス)にも不向きで、内陸国であることから輸送コストを加味すれば輸出産業にも適していません。

こうした背景からルワンダは他のアフリカ諸国とは全く異なった経済発展計画を立てる必要に迫られ、それがICT分野の大幅な規制緩和による投資の呼び込みと国内企業の操業促進だったのです。

紛争で国が崩壊したルワンダがイノベーションの実験室になれたワケ

ルワンダがここまで思い切った規制緩和ができたのはルワンダが置かれた地理的要因だけでなく、かつての暗い歴史も関係していたようです。

ルワンダでは「フツ」と「ツチ」という2つの民族による紛争が長年続き、紛争が激化した1994年には3ヶ月間の間に約100万人が犠牲となりました。

紛争によって、ルワンダは国としての機能やシステムが完全に破壊され、全くゼロの状態から国づくりを始めなければならない中、流れを大きく変えたのが2000年にルワンダの大統領に就任したポール・カガメ大統領です。

カガメ大統領は既存の民族制度を廃止し、戦火を逃れるために長年ルワンダを離れてアメリカやヨーロッパで暮らしていたルワンダ人に対して、税金の優遇や二重国籍を認める制度を作って彼らの帰国を促しました。

それによって海外在住の優秀な100万人のルワンダ人がルワンダに帰国し、ルワンダの躍進に寄与しています(現在ルワンダで活躍するルワンダ人起業家の9割が海外からの帰国組)。

近年ルワンダではリープフロッグ(飛び越す)という言葉がよく使われるようになり、これは文字通り、先進国が100年かけて発展させてきたテクノロジーをこの地で一気に導入して躍進させるという意気込みを意味するそうです。

紛争で全てを失った歴史は、悲しい歴史である一方、前向きに捉えれば、全てを失ったからこそ真っ白なキャンバスに一から線を引けたと考えることもできるかもしれません。

Amazon、Google、Walmartのはるか先を行くZipline社「ルワンダでノウハウを蓄積し、アメリカに技術を持ち帰る」


地理的不利な条件と紛争によって失われた国家基盤をゼロから立て直す過程で決断した大幅な規制緩和によって、今ではイノベーション国家アメリカよりも自由に本格的な実証実験が可能になったルワンダ。

そんなルワンダでドローン事業を展開するZipline社はAmazon、Google、そしてWalmartなどの大企業のはるか先を行っています。

これらの大企業も配送用ドローンの実証実験を次々と進めていますが、アメリカで事業を展開するには厳しい規制が待ち受けており、規制に阻まれ思うように実証実験が進められていないのが現実です。

実際、アメリカでのドローンによる配送はネバダ州やヴァージニア州など一部の地域で行われている不定期のテストフライトに限られており、事業を大規模に展開するためにはFFA(連邦航空局)からの承認を得なくてはならないなど、乗り越えなければならない壁は高いと言われています。

そうした中、Zipline社はアメリカを飛び出し、ルワンダで事業展開を行うことでノウハウを蓄積し、現在ではタンザニアでの事業展開にも着手し始めているようで、最終的にはアメリカにて事業展開を行う予定なのだそうです。

アメリカ発のスタートアップがルワンダでノウハウを蓄積し、最終的に母国アメリカでサービス提供を本格化させる準備をしているという事実は、ルワンダが「イノベーションの実験室」として機能し始めている証拠なのかもしれません。

「イノベーションの実験室といえばルワンダ」が当たり前になる日はそう遠くないかも?


暗い歴史と大きな決断によって過去を乗り越えるルワンダのストーリーは、シンガポールと重なる部分があります。

かつて日本の植民地支配下にあり60年代までマレー半島先端の寂れた漁村だったシンガポールは、リー・クワンユー首相のリーダーシップによって急速な経済発展を成し遂げ今ではアジアにおけるビジネス拠点の一つにまで成長しました。

カガメ大統領率いるルワンダとシンガポールには共通点が多く、それゆえルワンダを「アフリカのシンガポール」と呼ぶ人も少なくありません。

実際、現在のルワンダはアフリカでもっとも企業活動がしやすい国の一つにあげられるほどになりました。

その意味では、「ルワンダといえばイノベーションの実験室」と呼ばれる日はそう遠くないのかもしれません。

 
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