世界に大きな影響を与える「Deep Tech」で注目の3つの領域


世界を切り開く技術として注目されている「ディープテック(Deep Tech)」。未だ誰も成し遂げたことがない、世界を変えるイノベーションの可能性を秘めた3つの領域について見てみましょう。

新しい革命をゼロから創造する「ディープテック」

「〇〇テック(〇〇×テクノロジー)」という言葉を耳にする機会が増えましたが、ディープテックはどのようなテクノロジーの融合を指すのでしょうか。
ディープテックという造語の生みの親である、エンジェル投資専用プラットフォーム「Propel(x)(プロペルX)」の設立者、スワティ・チャトゥルヴェディ氏は「科学的発見や有意義で革新的な技術を駆使し、世界に大きな影響を与える問題の解決に取り組んでいる企業」と定義しています。

テクノロジーの加速により社会は様々な新商品やサービスで溢れていますが、その多くが既存のテクノロジーを活用してエンドユーザーへの提供を目的に開発されたものです。例えば、配車サービスUberは「共有経済」に焦点を当てた新たなビジネスモデルを構築することで商業的成功を収めましたが、科学的発見や革新的な技術の開発には貢献していません。

これに対しディープテックは、重要な影響を世界に与える可能性を秘めた「新しい革命をゼロから生みだすこと」を目的としています。AI(人工知能)やロボット工学、ブロックチェーン、バイオテクノロジー、量子コンピューティングなどが代表例です。

3つの注目領域(領域、企業例、実現できる世界)

多様な領域でディープテックの採用や開発が活発化していますが、ここでは特に注目されている3つの領域を見てみましょう。

1.バイオテクノロジー(生物工学)

テクノロジーを活用し、生物・生命分野の研究・開発を行うバイオテクノロジーは、ディープテクノロジーと共に最も加速している分野です。難病・疾患、食料・資源危機、環境汚染、温暖化、高齢社会化など、地球が直面している深刻な問題の解決に役立つ技術として期待されています。

広く知られている例として、複数の異なる細胞を組み合わせて新たな細胞を作り出す細胞融合や、害虫や病気などに強い作物を作るための遺伝子組み換えなどがあります。近年は医療・再生医療(ゲノム創薬・抗体医薬・分子標的薬など)から農業・食料(品種改良・バイオ農薬など)、環境(バイオ燃料・成分解性プラスチックなど)まで、さまざまな用途への活用が進んでおり、AIやビッグデータ、ブロックチェーンなどと組み合わせたプロジェクトなども活発化しています。

この領域に取り組んでいる企業としては、遺伝子情報を元にして人工的にDNAを合成する米Twist Bioscience(ツイスト・バイオサイエンス)社や、米Integrated DNA Technology社、米Ansa Biotechnologies社、小児腫瘍などの難病治療のために、DNAをベースとするカスタム・バイオテクノロジー医薬品の研究・開発を行っている伊Biogenera、世界初の生分解性プラスチックを開発した伊Bio-on社などが知られています。

2.AI(人工知能)

金融から医療、教育、スポーツ、製造、セールス、メディア、公共機関まで、既に広範囲で活用が広がっているAI。GoogleやAmazon、Microsoft、Facebookといった大手IT企業がリードする中、斬新なアイデアをもつスタートアップも続々と登場しています。

AIが分析した収集データを医師と共有することで発作の兆候や体調の変化を早期発見できる、てんかん患者用のウェアラブル・ブレスレットを開発した米Empatica社、自動視線追跡カメラ技術やデータ分析、アルゴリズムチェッカーなどを組み合わせた、子供の失読症の特定ツールを提供するスウェーデンのLexplore社など、特に医療分野におけるディープテックが注目されています。

3.脳マシンインタフェース(BMI)

BMIとは、ニューロン(脳の神経細胞)の情報をコンピューターやロボットアームなど、外部ソフトやハードウェアを制御できるコマンドに変換するシステムです。頭で考えるだけで指1本動かさずに機械を操作したり、オブジェクト(対象物)を見ずに頭の中で直接視覚化したりすることが可能なため、運動あるいは感覚障害がある人の生活支援機器として開発・活用が進んでいます。

将来的にはスマート機器と接続することで、例えば「コーヒーが飲みたい」と考えただけで自動的にコーヒーメーカーのスイッチが入る、といったことも可能になるかも知れません。Teslaの共同設立者イーロン・マスク氏が2016年に設立したニューラリンク(NeuraLink)は、この領域で注目されている企業の一つです。同社は「人間の脳内にインターフェースの役割を果たすデバイスを埋めこむ」というプロジェクトに取り組んでいます。

ニューラリンクの興味深い点は、BMIを機能障害者の生活支援だけではなく、AIの脅威から人間を保護する意図があることです。以前からAIの能力が人間を超える可能性を懸念しているマスク氏は、人間とAIを調和させる手段としてBMIが有効となる点を主張しています。

 
これらのディープテックが今後さらにどのような展開を見せるのか、現時点では予測できません。しかし、ディープテックが人間に有益な恩恵をもたらす重要なテクノロジーであることは間違いないでしょう。

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