日本のイノベーション拠点は渋谷から福岡に!?


全国の自治体が人口減少に頭を抱える中、人口増加数・増加率ともに日本一と、日本でもっともポテンシャルの高い都市として注目を集める福岡市。

そんな福岡市の原動力となっているのが、スタートアップです。中小企業白書によると、創業3年以内の企業は全事業所数のわずか8.5%にすぎない一方、新規雇用の37.6%を生み出していると言います。

つまり、スタートアップの誘致・育成は街の活性化に繋がると言えるわけですが、福岡市はスタートアップが生まれやすい土壌作りに取り組んでいるようです。

例えば、創業から5年間は所得税減額や法人市民税の免除といった軽減措置が適応されるため、日本の主要21都市中、開業率全国1位を記録するなど、市内創業が非常に活発化しています。

実際に紛失防止用IoTタグで有名な「MAMORIO」や、コネクティッドロック事業を展開する「tsumug」といった、近年注目されるテック系スタートアップも福岡市から生まれました。

“行政”と“テクノロジー”を掛け合わせて「ガブテック」を実践する福岡市


そんな福岡市の盛り上がりを支える一人が、2010年に36歳の若さで福岡市長に就任した、高島宗一郎氏です。

高島氏は「福岡市をスタートアップの都市に」というスローガンのもと、行政(government)とテクノロジー(technology)を掛け合わせた「ガブテック」を実践しています。

その一環として、AIやIoTを始めとした先端技術を活用した社会課題の解決や、市民生活の質の向上につながる実証実験プロジェクトを全国から募集し、スタートアップ企業やテック企業とのコラボレーションを積極的に進めているようです。

例えば、2018年には、LINEの子会社で福岡市で創業したLINE Fukuoka(2013年創業)と、地域協力事業に関する包括連携協定を締結しました。

それによって、150万人以上が登録しているLINEの福岡市公式アカウントから、市民一人ひとりに合わせて、ゴミ出し日や災害といった地域に密着した情報を発信することが可能になったのです。

起業家と政治家のコラボ「ビジネスを生み出すのは起業家、ビジネスと社会を繋げるのは政治家の役割」


時代の最先端をゆくテック企業やスタートアップ企業に対して、「行政が介入してはいけない」という意見も少なくない昨今、福岡市ではむしろ積極的に行政がスタートアップ企業とコラボレーションを行なっていくとして高島氏はこう話します。

「スタートアップの生み出す新しい製品やビジネスモデルは、今の法律や規制が作られた時には、想定されていなかったものがたくさんあります。シェアリングエコノミーもまさにそうです。法や規制に阻まれて社会に実際に使えない。それでは意味がありません。新しいビジネスを生み出すのは起業家ですが、社会がそれを受け入れるかどうかを規定するのは行政です」

そうした考えのもと、福岡市はスタートアップ支援拠点の「Fukuoka Growth Next」を開設し、起業家の労務、税務、マーケティングの相談窓口を設置しました。

さらに九州大学箱崎キャンパス跡地に新しく開設した「Fukuoka Smart EAST」では、スマートシティに実装される様々な最新技術やビジネスモデルの実証実験が行われています。

九州大学発のスタートアップに、世界の大手テック企業から注目が集まる


福岡に拠点をおく九州大学では、アメリカで大成功した起業家のロバート・ファン氏から寄付金を得て2010年に起業家育成センター(通称:QREC)を設立。その後、学内に「起業部」が発足しました。

実はこの起業部の発起人であるロバート・ファン氏は、九州大学の卒業生だったのです。

第二次世界大戦末期の1945年に台湾で生まれたファン氏は1964年に九州大学工学部に入学、その後、シリコンバレーでIT専門商社のシネックスを創業し、業界第3位の大企業にまで育て上げたことで知られています。

著名な起業家を多数輩出しているスタンフォード大学などでは、卒業生の支援によって、次の起業家が生まれるという循環が生まれていますが、九州大学でも同じような循環が起きようとしているのかもしれません。

と言うのも、有機ELパネルに欠かせない発光材料を開発している、九州大学発のスタートアップ「kyulux(キューラックス)」が、サムスン電子やLGエレクトロニクスから出資を受けるなど、すでに大きな成果が現れはじめているのです。

地理的なハンデをかかえていた福岡がテクノロジーによって活路を見出した


福岡市は政令指定都市の中で唯一、一級河川がなく、大量の水資源を必要とする工業には向かない土地です。

そのため、福岡市は早い段階で工業集積に見切りをつけ、テクノロジー産業やクリエイティブ産業を始めとした第三次産業の誘致・育成に乗り出しました。

その甲斐もあり、1990年には大手エレクトロニクスメーカーの開発拠点の誘致に成功し、ソフトウェア設計やインターネット技術の集積に成功したのです。そして今では九州全体の5割の情報サービス業やクリエイティブ産業が福岡市に集まっています。

さらに「妖怪ウォッチ」で一世を風靡したレベルファイブをはじめとした福岡の企業群が呼び水となり、さらにテック企業やクリエイティブ企業が集まるという好循環が生まれました。

実際、前述のLINEを始め、メルカリやサイバーエージェントなど、名だたるテック企業が次々と福岡に第二拠点を持ち始めています。

福岡が日本のイノベーションハブになる日は、そう遠くないかもしれない


現在、交通量の多いアメリカの大都市で「次世代交通インフラ」として電動キックスケーターが注目され、半年ほど前から現地でブームが起き始めています。

米・電動キックボード大手のLime(ライム)は2019年9月に日本に初上陸し、現在サービス提供に向けて実証実験を行なっている最中なのですが、その拠点となっているのが福岡市なのです。そして今後は福岡市から日本各地に展開を目指していると言います。

よく福岡は「日本のシリコンバレー(シアトル)になるのではないか」と言われることがありますが、今後、福岡市にテック企業が集まる流れが加速すれば、本当にそう呼ばれる日が来るかもしれません。

現在、日本でもっとも注目されている都市、福岡。「行政×スタートアップ×大学」によって引き起こされる化学反応で、福岡が今後どのように変化していくのか目が離せません。

 
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