デジタル証券による資金調達「STO」とは何?ICOとの違いとは


ICO(Initial Coin Offering)に代わる資金調達法として欧米を中心に拡大を続けるSTO(Security Token Offering)。日本においても2020年に暗号資産に関する改正資金決済法が実施されることからSTOやトークンとして発行されるデジタル証券(デジタルトークン)への関心が急速に高まっています。ここではSTOとICOの違いとともにデジタル証券がもたらす潜在的なメリットについて紹介しましょう。

デジタル証券とは?

通常ICOやSTOで利用されているトークンは、ブロックチェーン技術を利用したもので、プロジェクトなどの資金調達目的で発行されます。例えば通常の株式投資では投資家は株式証券を受けとりますが、STOではデジタル証券(Security Token)、ICOでは主にユーティリティートークン(Utility Token)を代わりに受けとるというわけです。

デジタルトークンを利用した投資法であることを含めSTOとICOにはいくつかの類似点がありますが、本質は異なります。

資金調達額が58分の1に縮小?ICO低迷の理由

デジタル証券の火付け役となったのはICOです。近年、インターネット上でさまざまな活動の支援資金を集めるクラウドファンディングが活発化していますが、ICOは「トークン版クラウドファンディング」の位置づけにあると考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。ICOは低コストでグローバルな資金調達の機会をスタートアップや中小企業に提供するという観点から新たな資金調達法としてメリットをもたらします。

しかし問題点としてプロジェクトやトークンの価値に対する不透明性や不確実性が指摘されているのです。各国で規制環境が整備されていない状況で売買が行われていたため、架空のプロジェクトをめぐる詐欺行為やトークンの価値が急落するといった不安定な状況が続き2018年以降は需要が落ち込んでいます。

また「一部のICOに証券法を適用するか否か」をめぐり、米証券取引委員会(SEC)を含む各国の金融当局がICOの規制強化に乗り出したことも失速の要因の一つです。ウォールストリート・ジャーナル紙の調査によると2019年第1四半期のICO調達資金総額は、2018年同期の58分の1に値する1億1,800万米ドルに減少。

2017年以降に確認されたICOのプロジェクトのうち資金調達に成功したのはわずか45%でした。

金融商品取引法に準拠するSTO

ICO市場の失速とともに投資家の関心はSTOへと移行しています。STOは市場の健全性と流動性を両立させることを目的に有価証券の価値をトークンにもたせたデジタル証券を利用した資金調達法です。有価証券とは株式や債券、手形、小切手、不動産など、財産的価値を有する証書を意味します。つまりSTOで発行されるデジタル証券は、従来の証券の延長線上にあると解釈できます。

そのため発行国で従来の金融商品・証券取引に適用されている法律および規制に準拠する義務が課されており厳格な発行基準が設けられているのです。例えば米国で発行するためには「Howeyテスト」と呼ばれる証券の基準を満たしている必要があります。Howeyテストは、1946年にSECと米サービス企業Howey間で生じた投資契約をめぐる起訴事件を機に開発されたものです。

具体的には、以下の4つの項目に基づき特定の取引が投資契約に該当するかどうかを測定します。

・お金の投資か
・投資先から利益が見込めるか
・投資先が共同事業か
・プロモーターまたは第三者から利益が見込めるか

また米国においては、年間所得20万米ドル以上の適格投資家にのみ購入資格が与えられているなど参加者の基準も設けられています。

日本でもSTO促進が加速

STOでは発行や売買のハードルが高くなる分、投資家の保護や市場の健全性維持への期待も膨らむでしょう。またブロックチェーン上に取引情報が記録されるため、取引の透明性向上にも役立ちます。こうした背景から2018年第1四半期には14件だったSTOの資金調達は、第2四半期には26件、2019年第1四半期には47件と急増しました。

2020年現在までにビットコイン財団のブロック・ピアス氏が中心となり立ち上げたBlockchain Capital(調達資金額1,000万米ドル)や仮想通貨融資プラットフォームのNexo(5,250万米ドル)、STO発行プラットフォームのHarbor(3,800万米ドル)などが、STOによる資金調達に成功しています。

日本においても三菱UFJイノベーション・パートナーズや野村證券が、デジタル証券の管理・発行企業米Securitizeに出資。SBI証券率いる日本STO協会がSTOプラットフォームのガイドライン作成を検討するなど活動が活発化しています。今後も世界各国でSTO市場が発展するに伴いさまざまな有価証券のトークン化を促進する動きが加速すると予想されます。

Photo by Alexlukin on Shutterstock.com

 
【この記事を読んだあなたにオススメ】
・ICOで調達も 歯に特化した仮想通貨デンタコインのポテンシャル
・投資は「自己責任」ICOに参加する前に確認すべきメリットとリスク
・ESG投資とは?世界で拡大している理由
・通勤は特急で?ビジネスパーソンが考えるべき「時間への投資」
・ヒゲ脱毛はコスパの良い投資?ビジネスパーソンこそ脱毛する理由とは