和田浩一

【インタビュー】和田 浩一さんに聞く「あなたのターニングポイントは」VOL.2


――人には、自分だけの物語がある――

人には数え切れないほどの可能性があります。
夜空に無数にある星の中でひときわ煌めく星のように、自分の可能性を信じ、夢に向かって一歩踏み出し、輝き続けている人の原点やターニングポイントはどのようなものなのでしょうか。
今回は和田浩一さん。彼の物語とは?

最初の花挿しはウェディングフラワー

――挿してみようと誘われたんですね。和田さんにとって、店長さんは運命の人だったのですね。

そうですね。ただ、「やってみる?」と言われても、つい最近までデリバリースタッフだった素人ですから、すぐに出来るようになるわけでもありません。私の花挿しはホテルのウェディングフラワーが始まりでした。ホテルには結婚式場がありますよね。ゲストテーブルに飾るお花がたくさん必要で、同じものを何個も作らないといけませんでした。ウェディングフラワーといえば、豪華なものを想像されるかもしれませんが、当時のバリエーションは極めて少なく、バラ、菊、カーネーションの3種が基本で、デザインのパターンも大体同じでした。

最初はアルバイトだからって甘えもあったのかもしれませんが、いろいろな失敗もしました。でも、嫌だなとかやりたくないって思う気持ちはなくて、ずっと続けているうちに、どんどん花が好きになって、自分好みの花を探すようになったり、写真に撮ったりするようになりました。

――その店での在籍期間どれですか。

26歳までの丸6年です。実は私はお花屋さんの仕事を始めてから程なく、大学を退学しました。フリーターとして、まさかこんなに長く同じ職場で働くとは思ってもみませんでした。

お花屋というのは意外と重労働で、見た目の印象よりも過酷です。お花は生きていますから、水が必要です。入れ替えるだけでも大汗をかきます。寒い時期になると、あまりに水が冷たくなって手の感覚がなくなるし、肌荒れもひどい。徹夜仕事だって珍しくありません。男性は何かと融通が利くので、目をかけていただいた部分もあるかもしれません。

そう言えば、店長から切花用のハサミをもらったこともありました。もしかしたら、一人前になってほしいという願いが込められていたのかもしれないと後から振り返ると思いますが、その時は自分専用のハサミを見て、なんだか一人前になったような気がしました。それだけではなくて、正社員にならないかって言われたこともあったんですが、断っていました。

――他になにかやりたいことがおありだったんでしょうか。

実はですね、私はお花もやりつつ、音楽に夢中になっていました。プロになろうっていうのは考えていなかったんですけど、当時はお花よりも音楽に気持ちが傾いていたんだろうなって思います。正社員になったら負けっていうのではないですけど、当時はそんな自由感があって、適当にやっていればなんとかなるって思ったんです。正社員にならないことについての不安はありませんでした。就職すると会社に束縛されると思っていたので、会社と距離感を持ってやっている方が楽だったんです。おおらかな時代だったなと思います。

そんなある日、私の在籍していたお花屋さんが、ウェスティンホテル開業に伴いテナントを出すことになったんです。そこで、ウェスティンホテルにスタッフを派遣することになったのですが、当然ながら社員が優先で私は対象外。どころが、私をお花の世界に導いてくれたかの店長がウェスティンホテルに出向が決まり、私を誘ってくれたのです。

私はすでに26歳。ウェスティンホテルに行くか、この仕事を辞めるか二択だなって思いました。やりたい仕事も特にない、音楽で生計を立てていくのはもう難しい……。まさに人生の岐路に立ったわけです。

自分の将来を見据えて真剣に考えるうちに、話題の外資系ホテルのオープニングに立ち会える機会なんてそうあることではない、こんな大きなプロジェクトに携わるのは面白そうだと思うようになり、行く決意を固めました。それで、社員になりたいと自分からお願いしたんです。一緒に働く同僚も知っている人たちばかりだったので、不安は一切ありませんでした。

下積みを経て任された装花「同じデザインの花は2度と作らない」

ウェスティンホテルでは店長の判断でいろいろなことが進み、私は店長の下で数年下積みを経験しました。店長にはお花のことだけではなく、社会人のあり方やビジネスマナーも含めて、いろいろな事を教わりました。そんな時、ホテル内の装花を任されることになったんです。

――それはどこのスペースでしょうか。

1階のメインロビー、2階と地下1階、地下2階のパブリックスペースです。自分が選定したお花と考案したデザインがこの4ヶ所に公開されるんです。毎週月曜日に生け替えるという大仕事で、1年を52週とすると年間述べ208回です。だからもう必死に食らいつきましたよ、ほかの誰にも真似できないような仕事をして、お客様やここまで育ててくれた上司の期待にも応えたいと思いました。

装花をするにあたり、地下1階と地下2階、そして1階は大体基本のデザインが決まっていたんですが、2階のスペースはある程度自由にできるということが分かり、このスペースを有効活用しようと定めました。そこで自分自身に気合いを入れるためにあえてルールを課したんです。

「同じデザインの花は二度と作らない」

生活の軸をお花に置いた この1年間はお花とじっくり向き合おう

――同じデザインのお花は二度と作らないと決めて、どう行動されましたか。

もう、無我夢中になりました。どんなに辛くても一年間お花とじっくり向き合う生活をしようと決めてしまえば、自然と24時間お花のことで頭がいっぱいになりました。1週間お花を綺麗な状態に保つためにはどうしたらいいのか、どんなお花でどんなデザインをするのがよいのだろうかと四六時中考えていました。

また、アイディアを得るために、休みの日にお花の市場によく行っていました。砧公園の近くにある世田谷市場に朝7時に行って競りに参加していました。お花は買わないんですが、競り台に座って様子を見ていると、次から次へといろいろなお花が出てくるんです。そうすると、「これだ!」って思う瞬間があって、いろいろなインスピレーションがわきました。リラックスした状態、例えばお風呂に入っている時やバイクに乗っている時もアイディアは自然と浮かんできました。

お花を生活の軸にして、真剣に打ち込むことで自分へ良いストレスを与えていたのかもしれません。新しいチャレンジに夢中になっていました。

歳を重ねれば重ねるほど募る劣等感

――当時の店長さんは和田さんに期待されていたのですね。

確かに、フリーター時代にはなかった一生懸命な様子が上司の目にも映っていたのかもしれません。話題のホテルですから、身を引き締めて緊張感をキープしながら仕事と向き合っていましたので。

私と同じ年齢の男性が職場に一人いたんですけど、彼の存在も私を奮い立たせてくれた要因の一つだったかもしれません。競争心がなかったといえば嘘になりますが、あいつに抜かされてなるものか、負けてたまるかと意識しながらやってた部分はあります。

だけど、私は自分に劣等感や引け目を感じていたんです。私はお花の世界に入ったきっかけがアルバイトでデリバリースタッフ。ずっと心のどこかで、お花のことを学校で学んでいないことに対して劣等感を持っていました。いくら華やかな仕事をしていても、本当にこの仕事がふさわしいのだろうかと疑問に思っていたんです。

――それはどうしてでしょうか。

毎年、専門学校などで知識を身につけた新入社員たちが目標を掲げながら入社してきます。一方、私は大きな仕事を任されているとはいえ、元フリーターですから。考えてもみれば、お花業界の専門用語も知らない上、偉そうに職場で先輩風を吹かしている。さすがに焦りを感じました。もう誤魔化せないところまで来ていると思いました。だから、ある時に意を決して後輩にこうお願いしたんです。「学校で使ってた教科書を貸してくれないかな」と。それは、「ほー、なるほどねぇ」と思わず感心してしまうほど、私の知らなかったお花の基礎や知識が書いてあり、本当に屈辱的でした。コンプレックスが一気に湧き出してきました。

Vol.3では社会人経験を経て独立をした和田さんに迫ります。後輩たちに劣等感を取った和田さんはどのような行動をとり、そして独立に至ったのでしょうか。
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和田 浩一
1968年東京生まれ。20歳の時より花業に従事。ウェスティンホテル東京開業時より13年にわたりウェディングやパーティー・イベント等のフラワーデコレーションを多数手掛ける。レストランウェディングに主眼を置いたフリーランスの期間を経て、独自の世界観をあらわしたコンセプト花屋『劇的花屋|ドラマ ティックフラワーズ』を設立。以降、CMや雑誌の撮影・イベント・パーティー等、「花」と「植物」を使った空間プロデュースを提供している。

資格 オランダウェラントカレッジ認定ヨーロピアンフローリストリー修了/同オランダ大使館特別賞受賞

主な実績 CM『カネボウ化粧品 エビータ』/ミュージックビデオMACO『恋心』/JA共済 迎春新聞広告/KOSE 雪肌精 MYV ブランドムービー/ウテナ90周年プレゼントキャンペーン プロデュース

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