新しい価値を生み出す開拓者の考え方 シンデレラ・テクノロジー研究家 久保友香氏×J.Score 大森隆一郎


「10年前、20年前、30年前を思い浮かべてください」と言われたら、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。ある人は当時の政治経済を思い出すでしょうし、またある人は当時ブームを巻き起こしたカルチャーやガジェットなどを思い浮かべるかもしれません。そういった時代において、新しい価値を生み出す開拓者たちは、当時どのように考え、行動を起こしてきたのでしょうか。

日本の10年前、20年前、そして30年前というと、今とは大きく時代の様相が異なっていました。ちょうど今から30年以上前にはY世代(ミレニアル世代)が誕生。その後バブルが崩壊し、日本は長い不況に突入しました。そんな中、1990年代後半から2000年代初めにはZ世代が誕生。ここ数年α世代という新しい世代も生まれ、世代の波を感じます。

時代の様相についてお話をすると、ちょうど30年前にあたる1988年は東京ドームが完成しました。また、社会現象にもなった「ドラゴンクエストⅢ〜そして伝説へ〜」(エニックス、現:スクエア・エニックス)が発売された年でした。

そして、20年前の1998年は冬季長野オリンピック開催やFIFAワールドカップフランス大会初出場など、スポーツ分野で新たな1ページを刻んだ年でした。そして、今や私たちの生活にも欠かせない存在になっているiMacの発売などで、世界が変わろうとする息吹が芽生えた年でもありました。

加えて、10年前にあたる2008年はリーマン・ショックが起き、世界が未曾有の金融危機に突入しました。ただし、リーマン・ショックが起きる約2ヵ月前にはAppleからiPhone 3Gが発売されるなど、新しい時代の幕開けを感じた人も多いのではないでしょうか。

こういった時代背景には、いつの時代も「今よりももっと素敵な自分になりたい」「もっと世の中をよくしていきたい」という開拓者たちの変わらない思いや強い考えがあります。

今回は、10代の女性たちを対象にシンデレラ・テクノロジーの研究をしている久保友香さんと、20代・30代を中心に幅広い世代に向けて日本初AIスコア・レンディングを提供している株式会社J.Score代表取締役CEO大森隆一郎さんが見てきた、時代の開拓者たちの考え方や行動についてお聞きしました。

シンデレラ・テクノロジー研究家 久保 友香

1978年、東京都生まれ。都内の私立女子高を卒業後、慶應義塾大学理工学部 システム工業科へ進学。2006年、東京大学大学院新領域創科学研究科博士課過程を修了。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、2014年より東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員に就任。専門はメディア環境学。

 

株式会社J.Score 代表取締役社長CEO 大森 隆一郎(おおもり りゅういちろう)
大阪大学法学部卒業後、旧富士銀行(現みずほ銀行)に入行。本部で法人企画を務めた後、自ら志願してリテール部門へ。リテールビジネスの企画経験が長く、チャネル戦略、マーケティング、会員制サービス、資産運用・コンサルティング、ローン等、リテールの主要分野の企画を手掛ける。支店長としても5期連続業績表彰や、支店指導部長を務めるなど現場でも活躍。本部では企画マンとして数々の新商品・サービスを生み出し、大半が現在のみずほ銀行のリテールビジネスのインフラとなっている。J.Scoreのビジネスモデルも自らがリーダーとして当初から企画推進し立ち上げている。2015年みずほ銀行の執行役員に就任。2016年11月より現職。

 

自分のなりたい自分を表現できる子は人から見つけてもらえる

−−久保さんはシンデレラ・テクノロジーの研究を通じて多くの10代の女性たちとお会いになる機会があると思います。10代の子たちの様子をどのようにお感じになりますか。

久保:日本の10代の女の子たちは、所属するコミュニティとの協調がとても上手だと思います。彼女たちはそれを「見た目」に示すことが多いので、私はそれのみを分析対象にしていますが、例えば、かつて渋谷にいる女の子たちは、トレンドの服を着て、トレンドのメイクをして、大人には同じように見えました。それがコミュニティに向けた「仲間だよ」というの非言語の表現になっていました。彼女たちのそういう性質は、大人からはとかく批判されてきました。しかし今、彼女たちは協調のコミュニティを、「リアル」な渋谷の上ではなく、「バーチャル」なインスタグラム等の上で、「世界」にも広げ始めています。バーチャルで起きているので、大人は知らないし、批判もしなくなりましたが、彼女たちは持ち前の協調能力で、これからは世界とつながっていくと思います。

−−彼女たちはコスメなどにも意識が高いと思いますが、やりくりなどはどうされているのでしょうか。

久保:私なんかはいつも使っている安心のブランドの商品をちょっと高くても買ってしまいますが、彼女たちはインターネットを使って情報収集し、お小遣いの中でやりくりできる安いものを見つけて、上手に使いこなして、インターネット上で見栄えする写真を作り上げることが本当に上手だなと感じます。

ただし、過去から現在まで共通しているのは、いくらインターネット上でのバーチャルな表現が主になっても、日本の女の子たちは必ずリアルなものづくりを大事にしていること。いくらプリクラやスマートフォンアプリでバーチャルな顔加工技術が発展しても、もちろんそれも使うのですが、リアルなお化粧も組み合わせます。

時代とともに自分を映し出す道具はプリクラだけではなくスマートフォンでも高性能のデジタルカメラを内蔵するようになっていきました。それにより、写し出そうと思うものは、自身の顔だけでなく、自身のライフスタイル全体のようになっています。お小遣いの範囲でやりくりし、化粧品や服だけでなく、安い雑貨などを買い集めて、写真映えする「ものづくり」がさかんです。

リアルもバーチャルもコミュニティの中心にいる子は共感され上手

−−1995年にはプリント倶楽部が生まれ、空前のブームが巻き起こりました。そして、1999年のDDIポケット、2000年のJ-PHONEのカメラ付き携帯電話、高画質のデジタルカメラに加えて2008年のiPhone3Gの発売、スマートフォン他の高画質化によって、人はどんどんなりたい自分を映像や画像として残せるようになりました。これに加え、インターネットというバーチャルの世界でも心の中にいるリアルな自分を表現できる時代に変わっています。

久保:インターネット上のSNSや動画サービスで情報発信できるようになったおかげで、ハンドルネームとプロフィール写真で作られるインターネット上の「バーチャル」な自分が、「リアル」な自分よりも先に、新しい人と出会うということが起こりました。かつてから芸能人などにはそれがありましたが、一般の人にもそれが起こりました。リアル世界では、基本的に、学校などの身近な集団とのコミュニケーションを、一つのアイデンティティでやっていくしかなかったのですが、バーチャルの世界であればいくつものアイデンティティで、いくつものコミュニティを持つことができます。

リアル世界でつながる小さな集団だと、全員に共感してもらいたいという気持ちになりがちですが、バーチャル世界でつながる不特定多数のコミュニティだと、中に数人でも共感してくれる人がいれば、自分に自信がつき、発信力が増す人もいます。それが、インターネットコミュニケーションの魅力だと思います。

−−リアルな場面で人と一緒にいるときには、仲間意識からか閉鎖的になる場面もあります。また、人から悪く思われないように協調性を発揮する人も多いのですが、インターネット上ではオープンに自分を表現できますね。インフルエンサーの存在などはまさにこれに当てはまりますね。

久保:そうですね。インターネットが普及する前、影響力がある女の子というのは、渋谷などの繁華街に毎日出向き、目立つ装いをして、積極的に人と交流するような、会ってみると元気でハキハキしているような女の子たちばかりでした。でも、今、インフルエンサーと呼ばれているような、影響力のある女の子たちは、地方に住んでいる方も多いし、会ってみるとおっとりしているような方が多く、たくさんの共感をフォロワーやコメントなどで受けています。

新しい原則は疑問、怒り、不安、違和感を解消したいという思いによって生まれる

−−イノベーションやブームはどういったことから起きるとお考えでしょうか。

久保:個人的に思うのは、日本の女の子たちの協調のコミュニケーションの中に、未来のコミュニケーション技術のイノベーションのヒントがあると考えています。実は古くから、日本の女の子たちの中だけで行われていたコミュニケーション手段が、のちに広く広がるということがあります。古くは平仮名なども、最初は女の子たちだけで使われていたものが、のちに男性や大人にも広がりました。現代では、絵文字や自撮りなどもその例です。それらは、最初はばかにされがちなのですが、女の子たちが、面倒なことはいやだけど、いつも誰かとつながりたいという中、採用してきたビジュアルコミュニケーション技術はすごく広がりやすいのです。彼女たちは、開発者が思いもしなかったような使い方をすることもあります。そういうところに、イノベーションのヒントがあると考えています。

若い世代の開拓者たちは会社に固執せず、学び続けてチャンスを掴み、成長していく

−−大森社長は若い世代の人達について、どのようにお考えでしょうか。

大森:今の子たちは私たちの世代とは考え方や行動に違いがあると感じます。僕らが学生だった時代は「どこの大学に進学するのか」が最重要視されました。就職活動では「どこに就職するのか」社会人になれば「定年退職するまで勤め上げる」という考え方がほとんどでした。

−−かつては決められたレールに乗ることが重要でした。しかし、勉強熱心な人は今も昔も変わらず多いと聞くこともあります。

大森:確かに過去も今も優秀で勉強熱心な人は多いと思います。僕たちの世代と現在の若い世代はキャリアの考え方が違うことは肌で感じます。先程、僕たちの時代は定年まで勤め上げると話ましたが、若い世代は決してそうではありません。キャリア形成という観点でいえば同じなのですが、彼らは自分を高めるために学び続け、そして良いめぐり合わせやチャンスがあれば転職することもいとわない。

−−学生時代に起業するのも当たり前になりました。

大森:僕たちの時代は希望する大学に進学が叶わず一発逆転を狙って起業するという考え方の人もいましたが、今はそうではないですよね。いったん就職をして何年か企業勤めをして社会人としての基本動作や仕事のやり方を学び、豊富な人脈を得てから起業するという人もいます。こういった働き方、キャリア形成に関する価値観の違いを大きく感じます。

世の中に対するインパクトや社会貢献を意識したイノベーションが行われる

−−今は会社勤めを経て起業する人も増えてきましたし、学生ベンチャーも増えているように思います。欧米化したともいえるかもしれません。

大森:そうですね。以前シリコンバレーに行ってスタンフォード大学の学生たちと話をしたときのことをお話すると、彼らのスタンダードは学生時代に起業すること。起業できなかった人たちが会社勤めをするんです。優秀な人達は、学生時代にそこでアイディアを出し合ってそのまま起業する流れなんですね。

つまり、海外の学生は就職せずに自分たちで社会を変える、世の中の役に立つようなサービスを考え、起業するんです。そして、そこで得た資金をもとに次の事業を立ち上げていくんですよ。日本人から見ると「バイタリティがあるなぁ」と感じますが、彼らにとってはそれが当たり前なんです。

最近は日本でも少なからずそのような風潮が生まれてきました。失敗をおそれずにはじめてみようという学生が本当に増えたという感覚が強くあります。最高学府に進学した人たちであっても大学で学生ベンチャーを立ち上げていますし、学生時代に起業して学生ベンチャーを立ち上げて失敗しても、いったん就職して人脈と実績を作ってまた起業する人もいます。いろいろな選択肢が増え、行動し挑戦し続けている人にはチャンスも生まれるんだと強く感じます。

−−以前は起業してIPOすることが目的だった人も多かったように感じますが、今はどちらかといえばIPOで資産を増やすというよりも、「自分がやる事業や会社が社会にどうインパクトを与えられるか」「社会貢献ができるか」を意識した情報発信が多いように思います。それに共感した学生や社会人が新たにジョインするなど、会社のブランドや報酬に固執しすぎていないということがいえるかのかもしれません。

やりたいことを目的に、働くことを自由に捉える若い世代が増えている

−−久保さんは現在研究者として大学に勤務されています。大森社長のお話を受けて、同じようにお考えになることはありますか。

久保:同じようなことを思う場面は多いです。私の世代は、工学系で修士課程を修了すると、皆が一斉に大手メーカに就職しました。だから、博士課程に進んでお金も稼がず不安定な未来が待っている私たちと、就職して安定した未来が待っている人たちとのずれが大きくて、大学に残った人たちは精神的に苦しんでいました。そんな中では、比較的女性たちの方が気楽に研究を楽しんでいることが多く、男性たちの方が苦しんで、途中でやめて就職してしまうことも多くあり、すごく残念でした。

そういう意味では、2018年の今、大学で学生たちと話すと生き方や働き方にも多様性が見られるようになったと感じます。修士課程で就職した人でもフリーランスになったり、博士課程に進みながら働いている人もいるので、ずれが小さくなったと感じます。

人生100年時代 誰もがいつでもチャレンジし、時代の開拓者になれる

−−これまで若い世代の方々についてお2人の視点からお話をお聞きしました。少子高齢化で労働力が減少する中、第四新卒採用というネーミングで性別や年齢を問わず採用を募集したところ定員に対して220倍の応募があるなど、ミドル世代の中にも新しい動きがあるように思われます。大森社長はミドル世代の働き方についてどのようにお考えでしょうか。

大森:そうですね。新しい時代といえば若い世代の人たちの活躍を思い描いてしまうかもしれませんが、自分がやりたいこと・新しいことへのチャレンジは決して若い世代だけではなく40代・50代だとしてもできるものだと思っています。

ある有名な起業家が最近こんなことを言っていたのを聞きました。

若いうちに起業すると成功する人もいるけれど、人生経験が少ないし人脈もないから失敗する可能性が高い。だけど、50を超えるとモノが分かったり見えたりする。起業は50歳くらいからやったほうが成功する確率が高い。

私もミドル世代の1人として思うことをお話すると、50歳から新しいことをはじめたいと思ったとしてもそれまで積み上げてきたものをすべて1度リセットすることになりますから、勇気がいるというのも分かります。ただ、人生100年時代を迎える今、こういったチャレンジはいつ始めても遅くないと思います。「50代以降の起業のススメ」ともいえるかもしれませんね。

起業だけではない!チャレンジは会社の中でもできる

−−大森社長はジョイントベンチャー(J.Score)の立ち上げを経験されました。現在は代表の立場で日本初のAIスコア・レンディングを展開されています。日本を代表するみずほ銀行とソフトバンクの2社のジョイントベンチャーの代表ともなれば、絶対に失敗できないプレッシャーがあるのではないでしょうか。

大森:プレッシャーと捉えるのか、チャンスだと捉えるのかどうかは考え次第だと思いますよ。これまでも銀行の本部でずっと新商品やサービスの開発ばかりにチャレンジしていましたから。失敗したらどうしようと考えるよりも、思い切って挑戦できる土壌があったので、今回も毎日このJ.Scoreのサービスをどう良くしていこうかと思い巡らせています。とても楽しいと感じます。

既得権に浸らないで、会社の中でチャレンジしたほうがいいと思います。個人的な思いという点では、若いときに起業していろいろ経験してみたかったと思うものの、この年齢になって会社を立ち上げてチャレンジする機会を得たことは本当に良かったと思うのです。

というのも、これまでいろいろなステージを歩んできた経験値があるので、課題が生まれてもすぐに動き出すことができる。これは大きいことだと思います。銀行にいたからこそ今回の事業にチャレンジする機会を得たわけですから。

−−企業というコミュニティで突出するのと、10代の女の子たちのコミュニティでスターが生まれるその一連の流れは似ていると感じる部分があります。チャレンジは起業だけではなく、年齢も場所も関係なく、チャレンジをすることが大事なのだと感じました。「働いている会社が好きだ」「その会社を通じて世の中にもっと社会貢献していきたい」と思う人は、企業の中で守るべきルールを守ってやりたいことに対して手を上げてチャレンジするのも大切なのだと感じます。

一番になれるものさしを見つけ、学び続けることが大事

−−一方、「チャレンジしたい」「夢に向かって踏み出したい」と思っても足踏みをしている人もいます。ためらってしまう人たちはどのように考え、行動するのがよいとお考えでしょうか。

久保:私がよく意識しているのは自分が一番になれるものさしを見つける、なければ作るということです。 私は小学生の頃、私は足の速さもびりっけつで、給食を食べる速さもびりっけつだったので、人間としてびりっけつだと自分で思っていました。でも、ある時、テストで「算数」が一番だということを知り、それ以降は自己評価のものさしを「算数」一本に絞り込んで、18歳くらいまでは、それでなんとかやってきました。以降は、それでは通用しないので、ものさしを作ろうとしています。

あとは、やり続けることだと思っています。何でも、人より長くやれば、人より優れると信じています。それには好きなことを見つけないとだめだと思っています。

今日より若い日はないのだから行動あるのみ チャレンジすれば新しい世界が見える

−−大森社長はどのようにお考えでしょうか。

大森:そうですね。「チャレンジすること」「失敗をおそれないこと」だと思いますね。「失敗するかもしれない」「失敗したらどうしよう」と不安に思いながら取り組むと、事の大小関係なく失敗するものです。ただ、あくまでも失敗は結果論です。やってみたら成功するかもしれません。悩んだらとにかくはじめてみましょう。

しかも、現在はまさにインターネット社会。AI(人工知能)を活用したビジネスチャンスが至るところに転がっています。ちょっとした工夫や気付きがきっかけになったり、見ている視点を変えるだけで生まれたサービスが人気になったり、大ブームを巻き起こしたりしていますよね。無限に可能性が広がっていますよ。僕らが伝えていきたい「未来への投資」や「時間を買う」というメッセージは若い人たちに共感を持ってもらえているのかなという手応えもあります。

だから、僕も新しいことに対して興味が湧いてくるというか、「こういう世界があるのか!」と思うこともあります。この会社を立ち上げてまだ1年ですが、5年後は絶対に成功していると強く信じています。そのためには世の中の人たちに対して、自分たちのビジョンやAIスコアの仕組みや意義を伝え、受け入れてもらえるように「日々チャレンジ」ですね。

今日より若い日はないのだから行動あるのみだと思いませんか。

(聞き手 永原 由香子 撮影 髙橋 明宏)

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