経営のプロとの出会いと法人設立、そして今後の展望「熱帯植物育成家」杉山拓巳さんVol.3


2016年にBANKS Collectionを設立した、熱帯植物研究家の杉山拓巳さん。きっかけは、経営のプロであるCEO栗田雅裕さんとの出会いだったといいます。今回は、BANKS Collection設立の経緯、そして杉山さんの将来の展望を伺いました。

杉山拓巳
熱帯植物栽培家。BANKS Collection取締役COO。Indoorplants Tom’sを経て独立、創業。2015年TBSマツコの知らない世界、2016年NHKあさイチ「グリーンスタイル」2017年NHK趣味の園芸、NHKあさイチ「グリーンスタイル」などにも出演経験がある。
BANKS コレクション(https://bankscollection.com/)

 

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–2016年に立ち上げた、BANKS Collectionについてお伺いします。CEO栗田雅裕さんとはどういった経緯があってご縁が繋がったのですか?

出会いは会社を立ち上げる前年2015年の年末、友人の紹介でした。同級生の会社の取締役だった栗田さんが僕の温室に興味を持ってくださったようで、見学にいらしたんです。すっかりあたりが真っ暗の中、スマホのライトで熱心に植物を見ておられて、面白い方だなぁというのが第一印象です。その次の日、予期せぬ企画書が栗田さんから届いて、そこには「3年後、あなたが現在展開している事業を僕ならこう出来ます」という、綿密な計画が綴られていたんです。要約すると、一緒に会社を立ち上げて事業を拡大していきませんかというお誘いでした。

本来は僕が会社を先に作って、経営のノウハウを熟知している栗田さんを迎え入れる形を取りたかったのですが、僕の重い腰がどうしても上がらなくて。というのも、両親がいるのを差し置いて会社を立ち上げるのはどうなんだろうという心の迷いがあったんです。今の僕がいるのは両親がそばにいて、植物を栽培できる環境を与えてくれたからなんです。父は長いこと洋ランを山ほど集めていましたから、僕が栽培家としてやっていく下準備がすっかり整った状態だったんです。そういった背景もあって、なんか違うなぁ、どうしようかなぁと。

–結局、自身の会社は立ち上げずに、栗田さんと共同経営する運びとなったのですね。

そうです。半年後、業を煮やした栗田さんから「では僕とハーフ&ハーフで会社を作りませんか?」と、改めて提案して頂いたんです。それを受けてまず僕がしたことは、奥さんの了承を取り付けること。栗田さんが実績のある経営者だということは知っていましたが、数回しか会ったことがない。素性だってよくわからないのに、だけど僕はなにか感じる部分があったんでしょう。だからそれを正直に奥さんに打ち明けて、「借金を作るかもしれないし、騙されるかもしれない。それでもいい?」と聞いたら、わりと即答で「いいんじゃない」。それが決め手となって、「ありがとう。頑張ります。精一杯やります」ということに。そこからはトントン拍子で、あっという間に会社を設立しました。

それで「一緒にやります」宣言した4日後に、TBSテレビ『マツコの知らない世界』から出演オファーを頂いたんですよ。不思議なタイミングってありますよね。そうか、こういうものなのかと当時は驚きました。さらにその5日後に収録があったこと、いまでも鮮明に覚えています。

–込み入った話になりますが、共同経営をするにあたり、銀行から借入などはされましたか?

全然です、それはありませんでした。僕はあくまでも生産者という立場なので、作ることに集中。経営に関することは、栗田さんにお任せしました。僕はそっち方面のことがわからなかったということもありますが、大きな変化があったのかと聞かれればそれは「気持ち」でしょうか。今は慣れて楽しんでますが、当初は頭の切り替えが大変でした。それまでは植物を生産して流通させることばかり考えていましたが、これからは新しい商品開発へ果敢に挑んだり、植物に関連することにもトライしていかなければいけない。単純に、難しさを感じました。お客様がなにを感じているのかも読めませんでしたから、不安だったんだと思います。

でも、良い意味で視野を広げることができたのは、BANKS Collectionのお陰なので、今となっては何もかもが当たり前の環境になってますけどね。

–資金繰りはいかがですか? 以前と比べると、変化はありますか?

いいえ、以前と変わらずです。僕は生産者、栗田さんは経営者という立場なのでそこは現在も基本、線引きされた状態です。資本金を入れて大きな投資をするというのは、今でも抵抗があります。商売も大事、それはわかっているのですが植物あってのBANKS Collectionですから手を抜かずに着実にやっていきたいと考えてます。

–経営のことで栗田さんと意見が合わず、言い合いになることは?

それもないです。先ほどと被ってしまいますが、僕は植物のプロ、栗田さんは経営のプロだと思っているので、役割分担や筋道は整った状態だと思っています。研究開発だったり、植物に向き合う時間も以前とそう変わらず注力できているので、環境的には非常に風通しの良さを感じています。総体的な部分は、すべて栗田さんを信頼しているので、心配事もないです。よくいうのが、栗田さんは木の主軸の部分で、僕は枝や葉をいっぱい生やす人。それが土であったり肥料であったり、またはバイオマスプレートを使って植物の数をより増やしていく部分かなと。

–なぜ栗田さんは、杉山さんをビジネスパートナーに選んだのだと思いますか?

うーん、どうなんでしょう。

深く考えたことがないので難しい質問です。あとから聞いた話なんですが、栗田さんは50を過ぎたら自分の好きな仕事をしたいとおっしゃってて、それが植物だったり動物の仕事として、今に繋がってる。僕の同級生の会社とタッグを組んだのも植物の会社と縁があるからということでした。

実は僕自身も自分の生産に限界を感じていた部分があったので、誰かと組みたいという気持ちがありました。生産というのはどちらかと言ったら上流の部分なんですよ。市場がいて、卸屋さんがいて、花屋さんがあって。植物を作っているのに、お客様からは一番遠い存在。だからなにかしら変えないといけないとは思っていました。お客様にもっとよりよい、正確な情報を伝えようと、それまで努力はしていたつもりなんですが、全然うまくはいかなかった。だったらここで空気を一旦入れ替えて、広い世界の中でトライしてみるのも面白いんじゃないかって。

だから今はとても楽しんで仕事に取り組めています。ネットの情報や花屋さんのアドバイスにはやはり限界があって、そうじゃないのにという情報もたくさん目に入ります。だから正しい植物に関する情報を伝承、提唱していくことが、僕の僕のこれからの務めだと感じています。

–BANKS Collectionを立ち上げたことで視野が以前よりも広がって風通しもよくなったとお話されましたが、将来的な展望についてなにか思い描くこと、挑戦したいことがあれば教えてください。

何年先になるかはわかりませんが、将来的にはやはりラボを作りたいです。生産よりもラボで実験や試行錯誤しながら植物と向き合っていきたい。今後はそこへ向かっていくような気がしています。大学や専門の研究所では、想像をはるかに超える最先端技術などを駆使してすごいことをやっているはずなのですが、僕はそれに近づきたいのではなくて、もっと馬鹿げてて、誰もがわかるやり方。だけど真似できないことを成し遂げたいんです。不労所得といえば大げさですが、自分が作った苗が世界に出て、それを世界中の人が育ててくれたことで生まれるロイヤリティでラボが動いていくというのが理想ですね。

だから一品種を出してお金が入ったら、まず一人雇いたい。農業高校の生徒がいいですね。農業高校というのは出先が少ないんですよ。せっかく勉強をしたのに、農業の仕事に就ける子はごく僅かというのが現状なんです。そういう子たちに道を一つでも与えて、一緒に新しいことをやろうという思いは若い頃から持っている夢です。

–明確なビジョンをお持ちなのですね。

そうだと思います。お金があれば実際なんでもできますし、やろうと思えば明日にでもラボを構えることだってできる。だけど結果を出してからにしないと長続きしないと思うんですよ。だからまず、自分がそこにいけるまでステージを上げることが大事かと思います。あとは情熱があるかないか、ですね。3年やって結果が出なくても、5年後出ればそれでいいんじゃないでしょうか。遠回りは決して無駄ではありません。

–今後のビジネス展開については?

とにかく、園芸を楽しくしたいです。植物が好きな人には失敗して欲しくないですし、失敗しないために僕がなにをすればいいのか、その答えがBANKS Collectionだと思っています。ゆっくりですけど商品はコンスタントに出していくので、もし街で見つけたらお手にとって頂けると嬉しいですね。活力剤は5月に発売。それを使って頂ければ一瞬の違いが必ず見えます。

ビジネスとは少し離れてしまうかもしれませんが、高校生たちとの繋がりや品種開発など、今後も継続していきたいです。僕が元々いた生物工学科がなくなってしまって、現在はフラワーサイエンス科に名称が変わりました。新しい科ではフラワーアレンジメントの勉強もしているそうで、生徒たちが先日素材が欲しいと温室にやって来ました。どれを持っていってもいいから、面白いもんを作ってよと無償で提供したんです。

–たくさんありすぎて、目移りしたのではないでしょうか?

どれを選ぶかというのも、勉強の一つかと思います。かなり前ですが僕は名古屋で結婚式を挙げたんですけど、装飾花はニコライ・バーグマンにやってもらったんです。その時にこういうアレンジをしてくれたんだよとスマホの画像を高校生に見せたりして。彼らにこうしようああしようとたくさん情報を与えても意味がないので、なにかしらの点を一つだけ渡しておく。そうすれば作業の過程で次の一つの点がきっと見つかるので、それが線になるときっと面白いはずなんです。高校生とは年が離れてますが、対等でいて欲しいという気持ちもあります。面白いことを一緒に考えて実践することには年齢の壁はありません。僕が上で君が下、という決めつけも好きではありません。

–最後の質問となります。杉山さんにとって理想的な職場環境とはなんですか?

繰り返しになってしまうかもしれませんが、とにかく園芸とは本来楽しむものなので、そのことだけは忘れずにいたい。そしてどんな過酷な状況下であっても、笑っていられること。僕の場合は農業が生業なので、メリハリも大切かな。締めるところは締めて、笑うところで大きく笑う。そういったことを意識しながら、大好きな植物とこれからも向き合っていきたいです。

(聞き手:永原 由香子 撮影:髙橋 明宏)

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