「未来への投資」の話 ZUU社長 冨田和成 × J.Score社長 大森隆一郎対談 Vol.3


今回は、新時代を生きるためのお金と時間のプラットフォーム「ZUU online」などのメディアビジネスを手掛ける、株式会社ZUUの冨田和成社長をお招きして、J.Scoreの社長 大森隆一郎との対談が実現しました。

新しい金融サービスのあり方から、二人の共通点である企業の経営者という立場から見るリスクとリターンに対する考え方へと話が及びました。

「未来への投資」の話 ZUU社長 冨田和成 × J.Score社長 大森隆一郎対談 Vol.1
「未来への投資」の話 ZUU社長 冨田和成 × J.Score社長 大森隆一郎対談 Vol.2

金融サービス新時代の考え方

冨田:私はよく、時間はお金とすごく近い概念だという話をするんですね。「時間をお金で買う」というイメージが昔から私のアタマの中にはあって。

例えば、ある会社が別の会社をM&Aする。それは投資であり、ある意味「時間をお金で買う」わけですよね。時間をお金で買うことで、未来を先取りしに行くという考えは、個人の人生においても同じことが言えるんじゃないかと私は思っています。

たぶん今後、未来においては、住宅ローン、自動車ローンにかぎらず、もっといろいろな形で個人が融資を受けられる金融サービスが出てくるでしょう。その時に、「未来への投資」という考え方が有効になってくると思います。

考えてみれば、家をローンで買う、自動車をローンで買うということも、「時間をお金で買う」ことなんですよね。これらについては多くの方が安心して融資を受けるのに、それ以外で融資を受けるとなると、急に「将来どうなるかわからないから」と不安になってしまう傾向があります。

もちろん、住宅ローンや自動車ローンは金利が低く設定されていますし、多くの方が利用しているから安心できるという側面はあるのでしょう。あとは、家、車といった固定資産が目に見えるものだということが、貸す側としても安心ということがありますね。

じゃあ、個人はどんな「固定資産」なのかと考えると、自分自身から将来にわたって生み出されるキャッシュフローの源泉を能力資産や人的資産と考えて計算すると、ある程度までは予想できるわけじゃないですか。

大森:確かに、これまでの個人ローンは現時点で目に見えるもの、分かりやすい外形的な情報からしか評価していませんでした。

J.Scoreではその部分を変えました。さまざまなパーソナルな情報を個人の方からお聞きして、「信用力」+「可能性」を、AIを活用してスコア化しています。そのスコアに応じて、借りる時の条件が変わってくるというものです。また、お金を使う目的も、融資の前にお聞きしています。将来のための投資なら、できるだけ支援したいと思いますから。

経営者から見るリスクとリターンの話

大森:私は今、みずほ銀行時代に自ら考えた事業を形にして、J.Scoreの社長としてやっています。支店長の経験はありましたが、それでも社長として、会社の成長のためにリスクを取る・取らないという経営判断をする際に感じる重圧は、その時の比ではありません。

冨田社長はスパっと前の会社をやめて、ご自身で会社を創業して大きくしていますよね。やはり大きなプレッシャーを抱えていると思うんですけど、いかがですか。毎日ぐっすり眠れていますか?

冨田:そうですね、ありがたいことにぐっすり眠っています(笑)。私のこれまでの人生で、夜中に何度も目が覚めてしまったり、食事が喉を通らなかったりしたのは一時期だけです。リーマン・ショックの時でした。ZUUを起業してからも、あの時のほうが重圧は格段に大きかったです。あれはもう、自分の範疇を超えすぎていました。

マクロ経済とか、マクロ金融市場というものはまったく信用できないなと、あの当時は思いました。私は、リスクはリスクだと認識した上で取ったほうがいいと思っていますし、そう思っていれば、リスクはある程度コントロールできるはずだと考えています。でも、金融市場は理屈じゃない。それに比べたら、事業のほうがまだコントロール可能です。

大森:J.Scoreはベンチャーですが、母体がある中でやっているから、ある意味守られている部分もあります。資本もしっかりしている。でも自分で、ゼロから会社を創業するということは、資金調達も大変だし、一度信用を失うとどうなるかわからないし、今はよくてもマーケットの流れが変わると競争相手に全てさらわれる可能性もある。そういう脅威に常にさらされていますよね。

冨田:私が金融業界にいてよかったなと思うことは、「一発アウト」にならなければ、つまり「再起可能な状態」までのリスクであれば負っていいし、仮に失敗しても何度でもやり直せる、ということを学べたことです。

「一発アウト」というのは、例えばインサイダー取引とか架空計上などのことです。会社法や金融商品取引法に触れて退場処分になってしまって再起不能となります。それは絶対にやってはダメなこと。

あとは、法律でも白黒はっきりしないようなグレーな部分がありますが、そういう部分も黒だと思っておいたほうがいい。FinTechのような新しい分野もそうなのですが、ある程度センシティブに考えないと、「一発アウト」のリスクがあります。

リスクをコントロールする

冨田:投資の世界に「10%ルール」ってありますよね。大森さんは当然お分かりと思いますが、この対談記事を読まれる方のために説明すると、ある株を持っていたとして、価値が10%下がったら損でもいいから感情なしに自動的に売ってしまおうという、売買をする上での教訓のようなものです。この「10%ルール」はすごく理に適った概念だと思うんですね。

例えば100だったものが10%下がると90になります。これを100に戻そうとしたら、90の約11%を増やさないといけません。100が20%下がると80ですから、100に戻すには、80の25%を増やす必要がある。じゃあ50%下がったらどうか。もう、2倍にしないと戻れないんですよね。そうなってしまうと、簡単には再起できないでしょう。

何が言いたいかというと、10〜20%くらいまでのリスクであれば、ある程度コントロールできてさえいれば、リスクは取っていった方がいいということです。そうしないと、逆に成長しませんから。リスクを取るということは、チャンスをつかんでいくということでもあると思うのです。

ただ、それ以上のリスクだと再起することが困難なくらいになってしまうので、どこまでならリスクを負っても大丈夫か、ということを考えながら事業をやり続ける。そうしていれば、多少マイナスを負っても挽回のチャンスはあると思います。

大森:確かにね。いま、非常に面白いと思って聞いていました。人それぞれ、どこまでが再起可能なリスクかという価値判断も違うけれど、ちゃんと「自分のリスクの限界点はここだな」と見極めておくことが肝心ということですね。

冨田:「投資」と「リスク」って実は同じもので、ポジティブな言葉でいうと「投資」だし、ネガティブにいうと「リスク」になる。

何でもいいからリスクを取るのであれば、それはただの「無鉄砲」なだけで、その姿勢こそ本当のリスクでしょう。私たち、企業の経営者が言うリスクという言葉は、結構コントロールできているリスクなのかもしれないなと思います。

大森:「無鉄砲」という言葉を聞いて思い出したのですが、最近、ブリヂストンの元CEO荒川詔四氏が書かれた『優れたリーダーはみな小心者である。』という本を読んで、「なるほどな」と思うことがあって。

小心者って、要するに、いろいろなことに気がついたり、常に先回りしてリスクを排除したり、すごく繊細な人のことであると。鈍感だと、リスクに気づかなかったり、タイミングを逃したりしてしまいますからね。

小心者というとちょっと聞こえが悪いけど、何のリスクも取らないで小さな殻に閉じこもっているという意味ではなくて、あらゆるチャンスを繊細に見極めながら勝負をしているということで、必要なのはまさにそういうことなんだなと思います。

私は社長になって日が浅いですが、それでもいろいろな局面の中で、リスクを取る・取らないという判断を日々しています。そこを正しく判断できる人が、事業を成功に導くことができるのでしょうね。

自分の会社を、いろんなリスクについて繊細に考えながら進めて行けば、5年後、あるいは10年後にこうなっている、みたいな、将来のビジョンを自分では描いているし、現実にそうしていきたいなと思っています。

冨田:これからの世の中の流れがどうなっていくのか、ユーザーさんの層をどう広げていくのか、マインドがどう変わっていくのかといったことを考えないといけないですから、いろいろなことを繊細に捉えていかないといけないというのは、まさに仰る通りだと思いますね。

 

冨田 和成(とみた かずまさ)
株式会社ZUU 代表取締役。神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

大森 隆一郎(おおもり りゅういちろう)
株式会社J.Score 代表取締役社長CEO。大阪大学法学部卒業後、旧富士銀行(現みずほ銀行)に入行。赤坂・福岡の支店勤務を経て、本社の業務総括部へ異動。法人の企画を務めた後、自ら志願して、リテール(個人向け事業)部門へ。リテールでの経験が長く、チャネル、データベースマーケティング、資産運用・コンサルティング、ローンなどを担当し、数々の新しい商品・サービスを生み出し、大半が現在のみずほ銀行のリテールのインフラとなっている。2015年、みずほ銀行の執行役員に就任。2016年11月より現職。

(聞き手:畑邊 康浩 撮影:高橋 明宏)

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