ヨシダナギは世界中の少数民族の架け橋になる日がやってくるのかもしれない


アフリカを始めとした世界の先住民たちの様子を写真におさめ、日本中の人たちに伝えるフォトフラファーのヨシダナギさん。テレビを始めメディアへの出演も豊富で、各地での展覧会を通じてファンとの交流も欠かせません。自分が伝えたいモノ・コトをファインダー越しにとらえ、多くのファンとの交流を続けるヨシダさんは今、アフリカ以外の国々への渡航にも挑戦されているそうです。今回は、アフリカ以外の国々のヨシダさんの活躍についてお話をお聞きしました。

–フォトグラファーとして活動中のヨシダナギさん。昨年はヨシダさんから人生のターニングポイントをお聞きしました。ご多忙な日々をお過ごしだったと思います。4月には上旬にはアマゾン奥地を訪れたとお聞きしましたが、どのような旅でしたか。

これは雑誌の撮影です。4月のアマゾンはちょうど雨季です。ただ、私は運が良かったと思います。雨が丸一日降り続いたのは1日だけ。アマゾンの奥地はたどり着くまでが一苦労。飛行機の乗り継ぎや集落への移動で往復9、10日かかり、現地滞在は6日間でした。

–事前に準備することもありそうです。

アマゾンに入るにはワクチンなどの類は義務ではありません。しかし、「健康診断」が義務付けられています。なぜかといえば、少数民族の多くはすでに近代社会と接触しているため、国から保護されています。しかし、これまで外界に触れたことのない人もいるので気をつけなければいけないという理由からです。ただ、今回悩みのタネの一つだったのが「未知なる虫」。その未知なる虫はアフリカの虫とは異なるよく分からない虫ということもあり、事前情報がなく、対策を取ることができませんでした。

–アマゾンの集落に向かうには、川下りをするものなのでしょうか。それとも別の移動方法があるのでしょうか。

おっしゃるとおり、私もアマゾンでは長らく船移動をするというイメージがありました。でも、今回訪れた集落へは車で移動ができたんです。もちろん、そこにたどり着くまでは悪路でしたが、急にパッと開けた空き地のようなところに出るとそこが集落。今回は2度目となるアマゾン滞在でしたが川に沿って続く密林を分け入ってという、みなさんが想像する「これぞアマゾン」という景色は、私もまだ見たことがないんです。

ブラジルはアフリカと違って先住民の保護区がしっかりと分かれています。道なき道を行くイメージが強いですが、実はグーグルマップを使えばおおよその場所を見ることもできます。とはいえ、旅行客が気軽に立ち入ることはできません。今回はFUNAIという先住民保護団体の職員の方に同行していただいたのですが、まずは彼らに事前申請をして、そこから許可証が下りた後に改めてブラジル政府に提出、最終的なGOが貰えるという仕組みなんです。

–保護区に入るには、立ち入り料や入場料が必要になるのですか。

保護団体やブラジル政府への支払いは一切ありません。しかし、接触する先住民、つまり集落に対しては支払いが必要になります。たとえばそれは彼らの肖像権だったり、われわれの滞在費用であったり。金額は伏せますが、おそらくみなさんが想像する以上に高いと思います。アフリカでも数年前から情報が行き交います。特に南アフリカの地域では肖像権を請求されることもありますが、アマゾンと比べるとずっと安い。アマゾンはもう桁が違うんです。

–それだけ高額となると、集落の人たちはこの先何年も暮らしていけそうですね。

アフリカだったらそういうイメージはありますね。アフリカはもともと貨幣経済の成り立っていない地域なので、お金を持ったとしても使い方が上手ではないんです。けれどアマゾンの場合はどうでしょう。保護団体の方も心配していましたが、たぶんあっという間に消えてしまうのではないかな。彼らはものすごくネイティブな暮らしぶりなのですが、近代的な要素もあるんです。どこからどう見ても外界とほとんど接触していない先住民なのに、村で一台車を所有していることも。伝統を規律正しく守りつつも、適度に文明社会ともつながっているので、そう言った意味で今は貴重な時期、時代だと思います。

昨年の秋にヨシダさんとお会いしましたが、それ以降は何度海外へ行かれましたか?

そうですね。片手以上は行きました。アマゾン、ナミビア、そしてナイジェリアにも。よく「一年の半分ぐらいは秘境にいるんでしょ?」と聞かれますが、実際に現地に行くのは1年の4分の1程度と案外少ないのです。

しかし、以前と比べると渡航回数は確実に増えてはいます。1回現地へ赴くと全ての体力、気力を失った状態で帰国するのですが、それらが回復する間もなく次への旅へと出かけることが多くなりました。私は「家でじっとして、人と接触しない」ことが体力回復法。ただ、忙しくなった今はそうも言っていられず……。32なので、年の問題もあるのかもしれませんね。

–以前、カメラ機材は最小限しか持って行かないとおっしゃいましたが、それは今も変わりませんか。

はい、それは変わらずです。フォトグラファーになる前に現地でカメラが壊れたことがあったので、それ以降は必ずカメラは2台持って行くようにしているのですが、昨年11月に訪れたパプアニューギニアの旅でストロボが壊れてしまったので大変でした。撮影日数が残り少ないタイミングで壊れてしまったのでどうしようかなぁと、ダメもとで少数民族の方々に相談してみたんです。すると、アルミホイルで簡易的なレフ板を作ってくれました。アルミホイルはたまたま移動中の大きな街で見つけたものでしたが、なんとかそれで乗り切ることができました。彼らのアイデアってすごいんですよ。2本の木にカーペットのような布をくくり付けて「これを代わりに使えない?」とか。

–撮影に協力的なのですね。これだけ何度も足を運んでいると、ヨシダさんの評判がアフリカ中に知れ渡っているのではないですか?

そうだといいのですが、意外とマサイ族止まりですね(笑)。彼らの間では「ヨシダナギ」のことは噂になっているようですが、他の地域ではないと思います。ただ、現地に行く機会も作品も増えていく中で、これまで撮影したものを見せると、「こんなにきれいに撮ってもらえるの?」と喜んでくれます。だから行くたびに手応えのようなものは増してきますし、「ヨシダナギ」を通して少数民族同士が「僕たち以外にも(民族が)たくさんいるんだね」と、言ってくれるのが何より嬉しいことだと思っています。

–ここ日本で現地の知られざる伝統や文化を発信するだけではなく、少数民族間同士の橋渡し役も担っているというのは誇り高いことですね。

パプアニューギニアの人たちは写真を見せたら大喜びして、歌うわ踊るわで歓迎してくれました。私の撮影のモチベーションを上げてくれたのも嬉しかったですね。

パプアニューギニアはとてもユニークなところ。洋服を着ていて携帯電話も持っているのですが、服の下にはしっかりとペインティングを施しています。近代的な要素があるものの、伝統にも忠実なんです。

面白いことがあって、撮影でポーズを指定する時に「モンスターが歩いてくるような感じで」とお願いすると、アフリカでは「モンスターって何?」と聞かれるんですが、パプアニューギニアでは「スパイダーマンみたいな感じか?」って。原始的だけど、ざっくりと流行を押さえているのが面白いです。

–好奇心旺盛なんですね。滞在中は質問攻めになることはありませんか。

質問されることもありますが、そこまで多くはないです。私の方から尋ねることもしませんから、彼らもあまり聞いてこないのかもしれません。

でも、私は興味がないから聞かないのではなくて、彼らに対して変な先入観を持ちたくないんです。彼らが与えてくれることだけを大人しく観察して、自分の中で答え合わせをする。それができる限り現地を「生で感じ取る」良い方法だったりします。

–近々、また撮影のために海外に行く予定はありますか。

具体的にいつからいつまで行くというスケジュールは決まっていませんが、いくつかのプランはあります。少数民族や先住民との交流は、本当に楽しいです。ですが、先ほども話したように「体力が回復する前に次の旅」となるので、徐々に難易度が高くなりハードな旅になります。

正直なところ、もう少し休んでから行きたいなぁと思う気持ちもありますが、そうは言っても現地がどのタイミングでこちらを受け入れてくれるのか分かりませんから、彼らに合わせないといけないという問題もあります。観光目的では保護区に入ることはできませんからね。なかなか会う機会のない人たちなので、貴重な時間を優先したい。そのためには多少自分が犠牲になるのも仕方がないことだと思います。

今の私はとても恵まれています。でもやっぱり、アマゾンもアフリカも遠い!

(続きは近日公開)

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(聞き手:永原 由香子 撮影:髙橋 明宏)