目指したのは、チャレンジする人が思い切れる仕組み。中山亮太郎さんの「ターニングポイント」Vol.2


>>世界の中の日本を知ったことがMakuakeの出発点。中山亮太郎さんの「ターニングポイント」Vol.1

事業はサイズ感が大事。藤田社長からの教え

―大学生の時に起業を志した中山様ですが、就職活動を経てサイバーエージェント社に入社した時には、藤田晋社長の運転手もされていたそうですね。かけていただいた言葉で印象に残っていることはありますか?

そうですね。まだ入社1年目の時ですが、僕が担当していた事業が黒字になったんです。本当にもう嬉しくて、「社長、黒字になりました!」とものすごい笑顔で言ったんですけどね。

「小さな黒字にとらわれるな」

とピシッと指摘されて(笑)。事業というのは、大きな絵を描き、組織をしっかりまわして大きなインパクトを残すような事業を目指さないとダメだよ、というようなことを言われたんです。その時は経営者としての目線の高さの違いや、あり方を感じました。

僕は会社を作る、事業を作るということだけを意識してサイバーエージェントに入社したので、そのためにはどんな能力を磨けばいいかということを常に考えていました。ただ、若い頃は世の中のことをよく分かっていませんでしたから、事業を作りたいと思うだけで、その意義や規模などのビジョンを持ち合わせていませんでした。

でも、藤田社長のその言葉はもちろん、仕事の取引先やパートナーさん、当時の上司など、いろいろな人や物事と接して話をさせていただくなかで、ただ事業を作るのではなく、事業の「サイズ感」というものに興味を持ち始めたんです。そして、世界の隅々にまで価値を残し届けられる事業を作りたいと思うようになりました。


世界を知る必要性を痛感したタイミングで舞い込んだベトナム赴任

―そうした矢先にベトナム行きの話が舞い込んだわけですね。

口では「世界世界」って言っているのに、当時の自分の頭の中には山手線と東京メトロの路線図ほどの世界しかなかった。これはまずいなと思って、どこかのタイミングで海外に出て仕事をするチャンスがないかなと思っていた時に、当時の上司から「ベトナムでベンチャーキャピタルをやってくれる人を探している」という話を聞いて、すぐに「僕が行きます」と返事しました。これが自分にとってとても大きなターニングポイントになりました。

―当然、物価も違えば食も違うでしょうし、カルチャーショックもかなりあったのではないでしょうか。

日本人との違いということで最も強く感じたのが、欲しいものに対する貪欲さ。例えばiPhoneだと、ベトナムでは並行輸入品が多くて日本で買うよりむしろ高いんです。でも年間で数百万台も売れているといいます。分割払いの文化もあまりなかったようで、じゃあそのお金をどうしているのかと聞いたら、「友達から借金した」とか「親から借りた」と。給料の多い少ないに関係なく欲しいものは何が何でも手に入れるんだという、人間の根本的な欲求を見た気がしましたね。

また、家電を売る店のラインナップにも非常にショックを受けました。日本のメーカーの製品が日本以外のメーカーにどんどん追いやられていたんです。2年半ベトナムにいましたが、日を追うごとにその度合いが激しくなっていきました。でも、考えてみたらiPhoneの中身には日本の技術がたくさん使われている。ものづくりの技術の高さは絶対に世界最高レベルにあるのに、最終製品として出していくところで競り負けているということに、非常に悔しさを覚えましたね。

コンテンツに関しても、日本の新しい音楽や映画はほとんど流通していなくて、代わりに韓国のものがどんどん入ってきていました。ゲームも中国や韓国のものがベトナムだけではなく東南アジア全体で遊ばれていた。日本では「クールジャパン」だとか「メイドインジャパンが海外を席捲」だと言って報道されていたけれど、その感覚には程遠い日本の危機感を強く感じるようになって、何とかしなければという想いを強く持って帰国しました。

ポテンシャルを埋もれさせない。思い切りチャレンジできる仕組みを作る。それが、想い。

―ベトナムで感じた日本の危機感が、Makuakeの理念に繋がっているということでしょうか。

そうですね。アジアの家電製品はそもそも日本の製品をモデルにしているはずで、そうした製品は価格勝負で勝ち上がってきた。でも価格競争には必ず限界があります。ならば、もっと思い切った、これならプロダクトそのものの魅力で勝てるんじゃないかという思い切った製品を出していくことが、これからの時代には求められるだろうと。

しかし、新しい製品を作るにしても、お店やコンテンツを出すにしても、前例のないことをやっていくということに対して日本のビジネス環境はとてもリスクが高いと思うんですね。これは決してチャレンジする人に勇気がないということではなく、そのリスクを下げていく仕組みが日本にはないということであって、そのことが本当のポテンシャルを埋もれさせる大きな要因になっていると感じたんです。

「もっと思い切れ」とか「勇気を出せ」とか「叩かれて強くなれ」とか、そういう精神論でなくても思い切れるような仕組みが作れないだろうかと。それが自分の関わるべき事業の意義でもあり、チャンスポイントになるのではないか、というように発想が繋がっていったんです。

そうして、僕はクラウドファンディングを通じてチャレンジを促進する仕組みを作ろうと、Makuakeのサービスを立ち上げることになります。

>>Vol.3では、中山さんにMakuakeの今後の展開、起業を志す若者を取り巻く現状、ご自身の夢まで幅広くお話を伺います。中山さんが実現したい世界とはどのような世界なのでしょうか。

(聞き手:髙橋晃浩 撮影:髙橋明宏)