埋もれた逸材たちを世の中に発信したい!Web漫画家やしろあずきさんが語る若き漫画家たちの動向 Vol.3


Web漫画家として絶大な人気を誇るやしろあずきさん。現在は漫画家としての活動の他に、若き漫画家たちの支援も行っています。そんなやしろさんに、ご自身から見る若きクリエイターの動向や、彼らを支援するご自身の思いをお聞きします。 

>>オンラインで選択肢は増えた!僕がWeb漫画家になった理由 やしろあずきさん
>>会社員は向かない!信頼、信用が大事なフリーランスとして生きる Web漫画家やしろあずきさん

–漫画家になるのは狭き門だと言われています。一方で、雑誌などの紙媒体は徐々にオンラインに淘汰される時代が訪れようとしています。漫画家たちの活動の場が少なくなるように思うのですが、どのようにお考えですか。

実際に、若い漫画家の卵でもお金になっていない人はたくさんいますし、漫画家としてデビューしたものの、なかなか読まれずに人気が出ないと悩む人もいると思います。出版社も徐々に減っていきましたし、休刊に至る雑誌も増えてきています。出版社に原稿を送り、デビューが決まり、掲載雑誌が決まり、その連載を守り続けることだけがすべてではなく、表現方法は幾重にも増えたと考えられます。

というのも、従前は出版社があっての漫画家でしたが、ここ数年でブログやSNSを介して自分で仕掛けることができるようになり、そういうケースが増えてきました。例えばツイッターを通してたまたまリツイートされた作品を見て、「人に教えたい」と思われるとそれが世界中にリツイートされるケースが増えてきました。それによって、雑誌の編集者や企業やWeb媒体などの目に留まる人も増えてきたように感じます。共感されることによって、雑誌を介さなくても読者がつき、仕事をいただける時代になったと言えます。

もちろん、漫画家の道のりが楽になったとは思いません。ただ、ゴールへ向かう選択肢が増えたと考えられます。実際、私も先程お伝えしたとおり、オンラインを通じてたくさんの読者がつきましたし。

–才能溢れる若い作家さんは多いでしょうか。

僕が思わず嫉妬してしまうほどの才能を持つ人も実はいるんですよ。いち漫画家としては嫉妬心が芽生えることもありますし、脅威だと感じる場合もあります。ただ、作品のジャンルがバラバラですし、みなさん個性豊かな作品を描きますから、みんなで仲良く面白い仕事ができればいいなと日々思っているんです。

–チャンスを掴みきれない漫画家の卵たちはどのようなことに悩んでいるのでしょうか。

そうですね。どうアプローチをしたらよいか分からない点があるのかもしれません。アプローチもいくつかに分かれると思います。例えば、漫画を描いてはいるもののうまくお金になっていない人や、どう自分を売り込めばよいのか分からない人は、何かしらのきっかけがあれば売れるはずなのに、そのきっかけを作ったり、掴んだりするのがうまくないのかもしれません。

また、漫画家の中には人とのコミュニケーションが苦手な人もいます。それで企業とのやり取りがうまくいかないなど、外で働いた経験が少ない人もいるんです。ただ、ちょっとしたことで変わるはずです。それを僕がフォローできればと考えています。

–仕事につながらない、作品を渡してもギャラが支払われなかったらという不安もあり、自分から積極的にアプローチができない漫画家もいるかもしれません。

確かに、それはあると思います。会社からいきなり声をかけられたら怪しいと思う人もいますよね。漫画家の立場からすれば、その会社を信じてもよいのかどうか不安にもなります。ただ、そういう場面でも僕みたいな人が橋渡しになれば、「同じWeb漫画家が言っているのだから」と説得力が増し、彼らは安心できるはずです。

表現者、そして仲介者として

–やしろさんは現在ペらいちGANMA!のディレクターの他、若きクリエイターやオンライン上で活動する漫画家を支援する会社(株)wwwaapで執行役員としても活躍されています。これは先程の橋渡しにつなぐ役割を担っているということでしょうか。

そうですね。現在の僕についてお話をすると、漫画家としての活動はもちろんのこと、先程お話ししたとおり、あらゆるタイプの埋もれた逸材を発掘し、世の中に広めていくためにwwwaapでは漫画家を会社に紹介したり、さまざまなアイディアを出しながらクリエイトベースで色々なことを行っています。

–ブログやツイッターなどのSNS上で活動する漫画家を一つに束ねている会社は貴社以外にありますか。

おそらくないんじゃないかなと思います。YouTuberやインスタグラムで活躍するモデルやクリエイターたちをアサインしている会社はありますが、漫画家だけを扱う会社は聞いたことがありません。

–具体的に、どのようなプロセスでビジネスにつなげていくのでしょうか?

企業はどんな素材がほしいのか、何をしたいのかを先読みし、そこから立案、または企業の広告案件を漫画家に紹介して対価を得るというビジネスモデルです。広告代理店と編集者出身、そして会社員から漫画家に転身した僕というさまざまな分野の経験者がいるので、上記のようにビジネスに繋げられるのが強みですね。雑誌では連載を持つと1ページ数千円の世界のようですが、僕らは漫画家の価値を高め、もっと原稿料を上げていきたいと思っています。

–やしろさんのような最先端を行く漫画家に道標を貰えると、後進の漫画家の卵たちも安心できますね。

そうだといいなと思います。これは僕の夢でもありますが、僕たちは、漫画家たちの才能や作品をどう伸ばしていくのか、どういう方向性でこれから歩んでいくのがよいのかを一緒に相談しながらビジネスとして成立させていきたいと思っています。

ただ、いくらチャンスとなる場があったとしても、最終的には自分自身がどう考えるかが大切です。拡散される作品をどうやって出すのかよく考えないといけません。あとは運、そして少しの能力ももちろん大事ですが、どれだけ世間から共感を得られるのかも大切です。僕は社畜ネタや会社員ネタを多く描いていますが、今の時代こういうことで苦しむ人たちが多くいることを知っています。そういう人たちに対しての「そんなに頑張りすぎなくていいよ」というメッセージを含ませた漫画なので、より強い共感が生まれるのかもしれません。「強く」そう思ってもらえれば、バズる確率も当然高くなります。

僕はツイッターで共感され、拡散されたおかげで雑誌の連載が決まって漫画家デビューを果たしました。一回勝てたからこそ、次があったんです。諦めずに続けることが大切なんだと思います。

–頑張っても頑張っても手応えを感じなければ、諦める選択肢をとる人もいます。それは正しいことでしょうか。

難しい質問ですね。僕個人の意見を言えば、納得いくまで続けることにも意味があると感じています。たとえば半年頑張ってもフォロワーが増えないからもう諦めようと、そこでくじけたらおしまいだと思います。フォロワーが増えないならアプローチの仕方を変えるなど、一つ何か角度を変えてみることで、一気に増える可能性があるのがSNSの世界ですから。 

–他にWeb漫画家たちのために何かしたいという思いはありますか。

環境を整えていきたいと感じますね。例えば、食べていくために会社勤めをしながらWeb漫画家を目指す人もいますが、できれば漫画家一本で集中できるほうがよいはずです。そういう環境を整えていきたいです。世間では、一見フリーランスは敷居が高いと思われがちですが、世の中は変わってきています。それは、僕も肌で感じていますが、以前はコンテンツに目が向けられていたんですが、今は人に向いている時代なんです。そういう時代の中で、どう生きるのかが大切です。SNSで活躍する術があるのであれば、うまく戦略を考えて実行すればいい。色々なチャンスに巡り合う可能性がありますから、近道になると思います。

–ここ数年変わってきているとはいえ、終身雇用にこだわる人もいまだに大勢います。

たしかにお金のことを考えると不安になりますよね。生活を優先するか、自分のやりたいことを追求するか。それなりの給料をもらっているのに、リスクの高そうなフリーランスに転身するというのは、腰が引けるのも無理はありません。または大学まで出たのにいきなりフリーランスとして社会に出るというのも、なかなか怖いものがあります。

ただ、社会が変わりつつある中で、実は今の20代は結構しっかり考えていると思いますよ。終身雇用=古い考え方でしかないと断言できます。会社員時代もそう思っていました。もともと、ゲーム業界は出入りの激しい業界ですし、どんどんテンポよくキャリアアップして転職するのが常識でした。僕にとって会社員というのは嫌な思い出もありますが、濃厚な経験を積めた場であったと思っています。嫌だったら辞めていいと思うんですよ。面接で「ここの会社と合わなかったら、すぐ辞めると思います」と告げました。「またまた!」と笑われましたけど、本当に辞めましたからね。今は受け皿も整ってきていますから、神経質にならなくても、しっかり戦略を立てて臨めば大丈夫だと思っています。

一回勝てたから、次があった。諦めずに続けることが大事

–やしろさんはすでに成功者という立場でいらっしゃいますが、次にチャレンジしたいことはどんなことなのでしょうか?

僕はYouTuberぐらい稼げる漫画家になりたいと思っています。広告漫画というのは今後も増えていくと思いますし、市場も拡大していくはずです。自分自身が頑張ると同時に、まだ世に出ていない隠れたインフルエンサーたちをバックアップしつつ、一緒に成果を出していけたらなと思います。

それから、つまらない人間だけにはなりたくありません。やりたいと思ったことを熟考してそれが実現可能かどうか、できそうならば実行に移すというフットワークの軽さを今後も身に付けていきたいです。難しい環境だから挑戦しないのではなくて逆に飛び込んでいく、または自らが切り開いていくことも大切ですよね。

人生は笑いながら送るもの。最後は笑顔で死ねたらいいなと思います。

>>SNS 人気Web漫画家が語る「オンラインとの賢い付き合い方」

やしろあずき
1989年生まれ。自由業。株式会社wwwaap執行役員。元ソーシャルゲーム会社員で、2015年の投稿漫画が年間RT数4位の約13万RTを獲得し書籍化。動画サービス「vine」で再生数世界一位も記録。

 

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