本当はマイペースで自由。そんな私は多くの人に拾われている フォトグラファー・ヨシダナギさん Vol.2


なかなか行くことのできない少数民族が暮らす秘境。誰しもが憧れるものの、なかなか訪れることができない場所に果敢にも挑み続けるヨシダナギさん。彼女の作風は多くの人の心を掴んで離しません。一見活動的なフォトグラファーに思えますが、お話をお聞きすると一言一言じっくりと考えながらお話されます。そんな彼女は書籍『ヨシダナギの拾われる力』を昨年発売。彼女の仕事術や周りとの関わり方とはどのようなものでしょうか。

>>ヨシダナギは世界中の少数民族の架け橋になる日がやってくるのかもしれない Vol.1

–昨年2018年3月15日に初の哲学・仕事術を綴った書籍『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)を発売されました。これはどのような内容なのでしょうか。

はい。これは私が日頃考えていることや、ぬるっとやり抜く仕事術などを一冊にまとめたものです。

アフリカに頻繁に通う人というのは、エネルギッシュな印象があります。着ている洋服も原色だったり、笑い声が大きい陽気な人。そういう精力的な人じゃないとアフリカには行けないのではないかと思うんです。でも私はどちらかと言えばその真逆で、性格は内気で非社交的。最近は明るくなりつつありますが、それでも大きく分類すれば見事なまでのネクラ人間です。テレビに出演すると、大きく口を開けて楽しそうに笑うヨシダが編集によって切り取られ、放映されています。でも自分でいうのも変な話なんですが、とても不自然に思えます。

–テレビで見るヨシダさんと実際にお会いするヨシダさんには大きなギャップがあると思います。物静かで一言一句、噛み締めながらお話しされます。

この本を出すきっかけは、その「ギャップが面白い」ことが始まりでした。2017年5月に雑誌『Pen』で『ヨシダナギが案内する美しいアフリカ』という特集号を持たせていただいたのですが、その時にお会いした編集長が「テレビのヨシダさんと実際に会うヨシダさんは全然違うんですね」とおっしゃったんです。

アフリカに行くくらいですからもっとバイタリティあふれるタイプかと思っていたそうですが、「この人はなんて危なっかしくて、ゆっくりとマイペースなんだろう」と。

トークショーなどのイベントに行っても「意外と静かですね」とびっくりされる時もありますし、撮影中も「あの……、大丈夫ですか?」と言われたり。そう思われてしまっていることがしんどいなと感じることもありました。

そんな時に雑誌『Pen』の編集長が私を拾ってくださったのです。「ヨシダさんは世間から誤解されているから、本当は自由でマイペースに生きてるのを伝えられたらいいね」と、企画してくださったんです。

–タイトルの『拾われる力』には、そういう意味が込められていたんですね。文字通り、雑誌『Pen』の編集長に拾われたと。この本では「拾われる」「あきらめる」「受け入れる」という3つのテーマに分かれていますが、この「拾われる」についてもう少しお話を聞かせてください。

たとえば、私のマネージャーでプロデューサーでもあるキミノでしょうか。私は彼にも拾われたと言っても過言ではありません。

彼との出会いは7,8年前になります。引っ込み思案な私は、珍しく友達を作りたいと前向きに思った時期がありました。できればエチオピア人とつながれたらいいなという思いから、Facebookの「あなたの喋れる言語」に、日本語と英語、アムハラ語と設定しました。

–アムハラ語はエチオピアの公用語ですね?

はい。Facebookにアムハラ語と書かれた私のプロフィールを見て、エチオピア人がコンタクトしてくれたらいいなと受け身の姿勢で待っていたのですが、そこに食いついたのがキミノだったんです。彼にはどういう検索方法で私にたどり着いたのかを聞いていないので分からないのですが、彼は図々しくもこういったぶしつけなメッセージを寄こしてきたんです。

「ちーっす。アムハラ語ってなんスか?」

普通ならば完全無視で返信しないのですが、その時の私の精神状態はアムハラ語に食いついてくれた人がいることの喜びが勝っていた状態でした。

「エチオピアの公用語です」

「そうなんスね」

「はい」

「ちなみに普段は何をしている人なんですか?」

これがキミノとの出会いだったのですが、彼とはそんなやりとりが始まったんです。

–まるで漫画のような出会いだったんですね

今考えると不思議ですよね。それで、気付けば一緒に食事へ出かける友達になっていました。キミノは気を遣わず話せる人なので、非社交的な私でも一緒にいてラクな相手。半年くらい経ったころでしょうか。私がアフリカ旅行へ出かけたんです。例の、現地の少数民族と打ち解けるために同じ格好になった時です。

私は昔からの夢が叶った瞬間だったので、その話を誰かに伝えたいと思いました。ですが、いくら仲良くなりたいからって、普通ならならないじゃないですか。Facebookに写真をアップしても驚かれるだけですし、どうしたの?なんで?と質問を浴びせられ、一から説明するのがしんどかったです。事情を理解して否定をしないのは、母親とキミノだけでした。

–お母様は子供の頃からアフリカ人を夢見る娘を間近でご覧になっていましたし、キミノ氏もFacebookのアムハラ語でヨシダさんのお考えを理解してくださっていますしね。

ええ(笑)。それで早速キミノに見せたら、「この写真はすぐにブログに上げて、いろんな人に見てもらったらどう?今、お前がやりたいこと、アフリカに対する思いだとかを一度書いてみればいいよ」。と言われたんです。

彼に言われた通りにしてみると、結果的にそれが多くの人の目に留まることになりました。メディアにも拾ってもらいましたし、妙な出会い方でしたがキミノにもFacebookで拾ってもらったことになります。

–Facebookでキミノ氏と出会ってからブログに写真をアップするまで、どれくらいかかりましたか?

一年経っていなかったと思います。

振り返ってみると私の人生はずっと拾われていました。14歳の時に遊び心で自分でブログにアップしたポートレートを見た、まるで面識のないおじさんからある日メールをいただいたことがきっかけでグラビアや芸能界デビューをしました。芸能活動は長くありませんでしたが、何かしらのきっかけで物事が好転する流れはフォトグラファーになった今でも続いていることなんです。

これまでいろいろなところで拾われたのは良かったのですが、基本的な礼儀作法などができなかったので、人とビジネスのやりとりをしたり、フォトグラファーとして依頼をいただいてもどう対処していいのか分からなかったのです。もとはと言えば私をこの状況に導いたのは助言してくれたキミノがいたからですし、彼は本業が広告業ですから、それならば最後まで責任を取ってもらおうと思って私のマネジメントをお願いしたんです。

–今となってはアフリカの少数民族と言えばヨシダナギというくらいの代名詞になっています。当時のキミノさんは、まさかヨシダさんがここまでビッグなフォトグラファーになるとは想像もされていなかったのではないでしょうか。

それは分かりません。ただ、運命というべきか、彼との出会いがなければ、私はアフリカ留まりでこうやってアマゾンには行っていなかったと思います。「目には見えないご縁のパワーってすごいんだな」と日々不思議に思っています。

キミノと私はプロデューサーとフォトグラファーという間柄ですが、居心地は良いです。彼は私の欠点を120%知っていますから、たまには意見の食い違いはあれど、バランスを保ちながら二人三脚でやっています。でも、キミノは私のアフリカやアマゾンの取材にはこれまで一度も同行したことがないんですよ。彼曰く「僕は第三者の目線でいたい。なぜならアフリカに行ったことのない人の代表としてヨシダを見ていないと、どこが面白いのか・何に感動するのかという部分が見えなくなってしまうから」。

–ひょっとして、へき地が苦手なのではないでしょうか?

男性は総じてお腹が弱いものなんでしょうかね。同行するスタッフを見ていても、お腹どころか精神的にやられているのは女性ではなくて男性。キミノは綺麗好きというか根っからのシティボーイなので、多分あらゆる面でへき地は無理だろうと思っています。もし、現地の人が勧めてくれた食べ物を「僕は遠慮します」なんて断れば、現地の人たちはきっと悲しむと思います。

キミノはプロデューサーという立場ですから、現地であれやって来い、これやって来いと、あらゆる案件をたくさん私にやらせようとするんですよ。アフリカの環境や少数民族の性格なども知らないくせに、仕事を詰め込んでくるんです。ただし、私の負担が大きくなっているのも事実なので、一回現地がどれだけ過酷なのかを「どうぞ自身の体で感じてください」と、一度行ってもらうつもりでいます。そうは言っても、同行者が一人増えるということはそれだけお金がかかるということ。なので当面は、財布とのにらめっこですね。

>>Vol.3に続く

(撮影:髙橋明宏)

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