自分が最も必要としていたのは、「代弁者」 フォトグラファー・ヨシダナギさんから見る拾われる力 Vol.3


フォトグラファー・ヨシダナギさん。彼女の代名詞といえば鮮やかに世界の先住民族たち。アクティブに見える彼女ですが、実際にお話をお聞きしてみると一つ一つの言葉をしっかりと考えながらお話されます。そんなヨシダナギさんの書籍『ヨシダナギの拾われる力』には、周囲の人との関わり方やご自身のお考えが散りばめられています。ヨシダさんから見る拾われる力とはどのようなものでしょうか。また、ヨシダさんの今後の展望についてもお聞きしました。

>>本当はマイペースで自由。そんな私は多くの人に拾われている フォトグラファー・ヨシダナギさん Vol.2

 –プロデューサー兼マネージャーでもあるキミノ氏と出会ったことは、偶然やご縁が重なってのことでした。結果的に彼という存在は、自己実現するための支援者でしたか?

とりあえず、生きていくためには何かしらの職業を持つことが前提としてあるものの、私にはこれと言ってやりたいことはありませんでした。小さい時からアフリカ人にはなれないという絶望感がありましたが、人とは違う仕事をしなければならないという感覚をどこかに持っていました。幼少期の頃から漠然と抱いていたことですが、それが何なのかということが分かりませんでした。

でも、自己分析をすると性格的に自分から情報を発信し続けるタイプでもなければ、自分を売り込むことも得意ではないので、代わりに営業をしてくれたり、誘導してくれる人が必要だということをキミノと出会ってからは痛感しています。キミノと出会えて、自分がやりたくないことではないというギリギリ耐えうる仕事にいつか巡り会いたいと思ってたのが、たまたまフォトグラファーという道でした。ですから、自己実現に手を差し伸べてくれた人=キミノではなくて、自分が必要としていた、あるいは私の代弁をしてくれる人が運良く見つかったというのが率直な気持ちです。

–とてもヨシダさんらしい、独特な言い回しですね。

私は本当にある意味で無力で無欲。一人では何もできないのです。私のように拾われる力が備わっているのならば、放棄せずに待ち続けていても損はないのかなと思います。よく分からない相手から声をかけられて一瞬不審だなと感じても、相手の言葉に一度耳を傾けたりと、直感を感じるのも悪くはないと思います。

おそらく記憶の中で一番に私のことを拾ってくれたのは、中学時代の担任でした。私は引っ越してからいじめに遭っていたのですが、そのことを周囲に話せませんでした。ある日、授業が終わると先生が「ヨシダはちょっと残れ」と言ったんです。なにか悪いことしたかなぁと思いながらビクビクしていると先生が「お前は一人じゃない。俺がいるから大丈夫だ」とおっしゃったんです。私がいじめられているのを目の前で見ていた訳でもないのに、気づいてたんですよ。私を見つけてくれた。学校へ来ても、一人じゃないんだなという安心感を得ることができたんです。

ありがたいことに、私は人生の節々で自分に気づいてくれる、拾ってくれる人と巡り合っているので、「今が自分のターニングポイントだ」と感じた時に知りあった相手は逃さないようにしています。きっとなにかを変えてくれると信じて。

–キミノ氏との出会い以降、拾ってくれた人はいましたか?

先程もお話をしたのですが、雑誌『Pen』の編集チーム、および編集長です。私はあまり人を好きにならないんですよ。その分、もちろん嫌いにもあんまりならない。人に対してほとんど情を持たないというか。でも、『Pen』の人たちは初めて会った日からいいな、好きだなと思えました。そのあと、特集号を組んでいただいたり、取材のオファーをいただいたりと、ワクワクするようなことをたくさん運んでくださいます。

それから、西武渋谷店の美術キュレーター。その方は私がテレビに出る以前に、Facebookを通して拾ってくださいました。先方から連絡をいただいたので挨拶しに行ったのですが、初対面なのにいきなり厳しいことをバンバン言われてしまって。だけど、なぜか関係が途切れることはありませんでした。彼のお陰で今の作風に辿り着いたということもありましたし、西武デパートで写真展示を3年間させていただきました。

–テレビに出る前ですか。さすがキュレーターだけあって、先見の明がありますね。

彼との出会いは、TBSの『クレイジージャーニー』に出演する前のことなので、もう5年ほど前になります。初めてお会いした時は、「君の写真にはコンセプトがない」と、めちゃくちゃ怒られました。それなのになぜ私に声をかけたんだろうと、最初は本当に不思議でした。でも、根気よく真摯に向き合ってくださいました。たくさんアドバイスもいただきましたし、現在までずっと面倒を見てくれている恩人です。

–『ヨシダナギの拾われる力』では、「拾われる」以外に「あきらめる」「受け入れる」という章もありますね。

それは、諦めの多い人生だったという意味ではありません。例えば、友達が少ないとかコミュニケーション能力に乏しいということは、世間ではあまり良い印象を持たれませんよね。でも私はそれをネガティブに捉えていなくて、それどころか個性だと自負してるんです。コミュニケーション能力に長けた人間になりたい、そうなるように努力したいとも思っておらず、これでいいでしょ?どこが悪いの?と思っています。つまり、世間一般でいうネガティブな部分を、私は諦めているんです。

おかしなことに、「諦めてしまうことは悪だ」という風潮もあります。夢を諦めるのはカッコ悪い、なんで前向きになれないの?って。でもその押し付けって、本当に息苦しい。世間の妙な風潮はすっぱり諦めて、自分を受け入れてしまうこと。それもまた勇気ではないのかなって。

気の合う仲間とチームを組んで、映像も手掛けてみたい

–最後になりますが、今後の活動予定やチャレンジしたいことがあれば教えてください。

普段は無欲全開のヨシダではありますが、映像のディレクションをやってみたいなぁと思ってます。写真だと情報量に限りがありますが、映像ならさらに幅広く表現できるというのが面白そう。今は現地へ取材に行っても、すべて自分が取り仕切って動いてます。ロケハン、ライティング、ポージングに至るまで。それらをさらに突き詰めて考え、私よりもずっとテクニックのあるプロたちに、写真や映像を撮ってもらう。それがチームとして動けるようになったら、また新たなヨシダナギをみなさんに知ってもらえるのではないかなと。

誰とでもチームが組める訳ではないですけれど、見つかったんですよ、素晴らしい映像チームと。男臭いんですけど、彼らとの仕事が実現できれば嬉しい。クリエイターと映画監督がすでに世界観を持ってくれていて、「映像にしたら、もっと面白くなるよ」などアドバイスをくれました。とてもありがたいことです。そして私はまたしても拾われてしまった、と(笑)。

–ロケハンやライティングもお一人でされてたんですね。

はい、撮影は一日2回、朝夕各1時間ずつ。現地の人たちは、肌の色はそれぞれ。綺麗に見せるためにも撮影する時間帯は重要です。少しでもずれてしまえば、肌がくすんで見えてしまうから。

ちなみに撮影以外の時間は何をしているのかといえば、スマホでゲーム三昧です。朝起きて、ランチの後、寝る前、この3つのタイミングで必ずゲームをしています。少数民族の集落には残念ながらWi-Fiは通ってませんが、オフラインゲームがありますから。オンラインゲームでは課金することもありますよ。だって、課金すればレベルアップして強くなって早く次の場面に行けたり、クリアしたりするのは、それだけ投資をしているってことだから。実はガチの課金勢でもあります(笑)。

(撮影:髙橋明宏)

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