『けもフレ』に見るファン化させるマーケティング戦略とは?


「すっごーい!キミは◯◯が得意なフレンズなんだね!」

底抜けな台詞回し、ほのぼのとした世界観。2017年上半期最大……とまではいかないかもしれませんが、期待を裏切って大ヒットとなった『けものフレンズ(けもフレ)』。

『けもフレ』は、2015年にリリースされたスマホのゲームアプリが原作です。その時にはあまり話題にもならず2016年末にサービスが終了しました。マンガも2017年1月で最終回となり、それほどヒットした作品ではありませんでした。そんな『けもフレ』ブームの鍵は、『フレンズ』と呼ばれるファンの存在にありました。

間口は広く、ハードルは低く

『けもフレ』をブームにしたファンの存在。ファンを増やすためには、まずはファンになりえる「見込客」を集める必要があります。「見込客」の定義はいくつかありますが、ひとまず「潜在顧客」あるいは「顧客になりそうな人」と考えておけばよいでしょう。

熱心なファンも最初は通りすがりの見込客。いわば、ウィンドウショッピング中の通行客をいかに店内へ招き入れるかが第一の戦略となります。その点、『けもフレ』は「萌えキャラ」「ゆるすぎる世界観」「自分の気持ちを素直に表現するシンプルなフレンズ語」など、見る人が興味をひきやすいキーワードがありました。

とはいえ、ただハードルが低いだけでは人は集まりません。どこかに「ひっかかり」がないと、「見てみようかな」という気にはならないでしょう。『けもフレ』の場合は深夜アニメにも関わらず、ゆるいストーリー、声優の演技、キャラクターデザインなどがかえってひっかかりを視聴者に与えたのです。

また、ゆるさの中に不穏さを秘めた世界観は、一部の熱心なファンの考察欲を刺激しました。丸投げにされた「謎」が、人々をアニメという「店内」へ引きずり込む役割を果たしたのです。

主人公のかばんちゃんを例にしてみても、たくさんの「ひっかかり」が隠されています。かばんちゃんはヒトなのだろうか、どうして「かばん」ちゃんと言う名前なのだろうか、どこを旅しているのだろうかという疑問から始まり、次から次へと新しい「ひっかかり」に気づきます。すぐに答えが分かる「ひっかかり」もあれば、なかなか答えが見つからないものもあり、その「ひっかかり」を解消したいと思い、毎週アニメを視聴するようになっていくのです。

通常のアニメでは、最終回に向けてさまざまな謎が解け、最終回には全ての伏線を解消するものだと言われることもありますが、『けもフレ』の場合は違いました。かばんちゃんの手が徐々に黒くなっていく映像が流れるものの、その理由が明かされないまま物語は終わりました。最終回が終わって数ヶ月経った現在でもファンを離さないのは、そのような「ひっかかり」のおかげなのかもしれません。

また、面白い現象がありました。『けもフレ』のファンたちは独特の「フレンズ語」で掲示板やSNSに書き込みを続けました。加えて、『けもフレ』の謎やそれに伴う考察について書き込みをする人が徐々に増えていったのです。

周囲の人々も何が起きているのだろうかと、その異様な雰囲気を察知。最初はおそるおそる『けもフレ』の動画をチェックしたのかもしれませんが、そのクオリティに衝撃を受け、その世界に入り込み、SNSでフレンズ語を操り始める……といったサイクルで、ファンのコミュニティは拡大を続けていきました。

「広く浅く」を突き抜けるための「狭く深く」

『けもフレ』が見せたのは、「ファン」の強さです。もちろん、マス向けに広く浅くアプローチすることで大量に集客できればそれに越したことはありません。しかし、そこまでするリソースがない場合にどう見込客を集め、ファン化するのかを気づかせてくれます。

ポイントは、100人に1人でもファンになってくれればいいということです。賛否両論があるのは当たり前だとして、100人いれば60人は『けもフレ』に近づきもせず、100人に39人は『けもフレ』に嫌悪感を示したとしても、残りの1人がファンになってくれれば、彼/彼女が別の「100人に1人」を熱心に呼び込んでくれるという考え方です。それによって、結果的に100人、1,000人とファンが拡大していく……。熱心なファンはライトなファンに比べて離れていかないという考えが功を奏し、多くの人が『けもフレ』の世界に魅了されたといえるのではないでしょうか。

マーケティングによる「じぶんゴト」化

100人のうち1人をファンにするためには、その1人に強く突き刺さるメッセージが必要です。メッセージがただの「広告」「宣伝」ではなく、「じぶんゴト」として捉えられるように構成する必要があります。

有名なマーケティング用語として「ペルソナ」があります。実際に自社サービスを利用してくれそうな典型的なユーザー像のことを指します。このペルソナのニーズを満たすために、サービス開発やマーケティング戦略が練られるのです。

『けもフレ』の場合も、おそらくは最初のペルソナだと思われる深夜アニメファンに刺さったことで、結果的に多様な層へ受け入れられる結果となりました。じぶんゴト戦略+SNSによって爆発的な成功を収めたのではないでしょうか。

ファン化するための仕掛け作りを!

何がヒットにつながるのかは予測できないものですが、ヒットしたサービスを後追いで分析すると、必ずヒットしただけの仕掛けはあるものです。『けもフレ』の場合は、「徹底的なハードルの低さ」「ファンコミュニティを作りやすい言葉遣いと世界観」「不穏な『謎』」によって、視聴者を熱心なファンへ仕立てることに成功しました。

空前の『けもフレ』の大ヒットは、もしかしたら予想外のことだったのかもしれません。それでも見てみるとヒットするだけの工夫は存在します。マーケティング戦略で「ファン」を作るためのプロセスを丹念に構築することで、予想以上の大成功を収める可能性が生まれると言えます。まさに、「天は自ら助くる者を助く」のです。今後のマーケティング戦略も、「ファン化」が一つのキーワードになるのではないでしょうか。

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