仕事が集まる優秀な人こそ エッセンシャル思考で最大限のパフォーマンスを


仕事ができる人はみんなから頼られ、仕事が集中するというのはよくあることです。みんなを助けようとすればするほどタスクが増えてしまいがちです。そんなデキる人に向けて、仕事を減らし大切な仕事にフォーカスするための思考法を示した本が『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン著・大和書房)です。

大切なことを「選び取る」ためのエッセンシャル思考

ひと昔前までは、「マルチタスク」はデキるビジネスパーソンの必須スキルだと言われていました。もともとマルチタスクはCPUを切り替えながら複数のタスクを同時に処理するというものでしたが、これがヒューマンタスクにも応用され、膨大な仕事を効率よく行うことだと言われるようになりました。今ではビジネスにおけるマルチタスクと言えばどのような状態を指すのか説明しなくても分かるという人もいるかもしれません。

しかし、人は時としてささいな仕事に振り回されることがあります。MTGとMTGの間の30分の時間を事務処理にあてようとしていたのに、気がつけば1日中同僚や部下の相談事などに追われることもあるのではないでしょうか。

職場にはタスクが溢れかえっています。そのため、多くの人は自分に与えられたタスクをすべて取り組もうとするのです。自分がやるべき価値のある仕事と、他に引き継ぎして自分がやらない仕事に棚卸しをするスキルを持っていないと筆者は指摘しています。

増え続ける選択肢の中から自分にとって重要度の高いタスクを適切に選び、そのタスクに集中するために必要になるのがエッセンシャル思考です。いくら仕事ができる人でもタスクが膨大になれば、それぞれにエネルギーが分散され、パニックゾーンに陥り、ミスを誘発するおそれもあります。そのため、企業における自分のポジションを理解し、必要なタスクを選び、それにすべてのエネルギーを注ぐほうが結果的に自分にとっても組織にとっても正しい働き方になると筆者は言います。

労働生産性に課題を抱える日本企業

エッセンシャル思考をもとに日本の状況を考えてみるとどのようなことが言えるのでしょうか。仕事がデキる人こそ時間内に帰宅するとは言われるものの、長時間残業を余儀なくされ、ワーク・ライフ・バランスがアンバランスであることが指摘されます。

そして、多くの人が真面目に働いているにもかかわらず、日本の労働生産性は決して高いとはいえない状況です。日本生産性本部の「労働生産性の国際比較 2017 年版」でも、日本の労働生産性はOECD加盟35ヵ国のうち20位にとどまっていることからも示唆されます。

生産性を向上させ、社員がゆとりをもった働き方ができなければ社会全体が疲弊します。そこで、進められているのが働き方改革です。世界を代表するモーターメーカー日本電産は、かつて永守重信社長(現会長)が「元旦以外休みなし」を公言していましたが、今では2020年までの残業ゼロを目標としてかかげ、生産性向上のために1,000億円の投資を決定しています。

同社が取り組んだのが会議の見直しでした。会議を減らす、出席する人数を減らす、1時間の会議を45分に短縮するといった会議の見直しと、残業を減らそうという声かけだけで平均残業時間を約半減できたといいます。

社内全体のワークフローだから、社内の慣例だから、お客さまに明日提出してほしいと言われたという理由で行うタスクはどこの企業にもあります。本質的な仕事と本質的ではない仕事を会社全体で見極め、削ぎ落とす時期にきているといえます。

考える習慣を身に着けることで大事なことが見えてくる

これは個人でも同じです。デキる人に仕事が集中するというのはよく言われることですが、彼らは本当に取捨選択ができないのでしょうか。

彼らは自分がやるべきこと・やらなくてもよいことを分かっていないのではなく、薄々分かっている可能性もあります。自分がこのタスクを手放しても社内に引き継げる人がいない・引き継ぎしたとしても後任が自走するまで時間がかかるおそれがあるなどの理由から手放せていない可能性もあるのです。忙しくなればなるほど目の前になる膨大なタスクを完了させることを優先し、本当に大切なことを「考える時間」を犠牲にしているともいえるでしょう。

エッセンシャル思考では、1日のなかで考える時間を確保することをすすめています。1日5分でも時間を確保し、自分にとって必要なタスク、無駄なタスク、ゴールへの最短距離をしっかり考えれば、生産性は確実に向上するはずです。

何もすべてのタスクを自分でする必要はありません。スマートフォンやAI(人工知能)の登場により、私たちの生活はよりストレスフリーに過ごせるようになりました。ビジネスでもAIによるサポートやタスク管理用ツールなどさまざまなものが登場しています。自分がやるべきことは自分が、他の人にお願いすることは早めにお願いする、そしてデータ収集など正確さと迅速さが求められることはAIに任せるなどし、自分の能力や時間は「自分が一番すべきこと」に集中しましょう。

エッセンシャル思考を活用して成果を生まない努力をやめよう

「頑張れば報われる」という言葉は、やるべきことを正しく選ぶという前提があってこそ成り立ちます。選ぶということは何かをあきらめるということです。しかし、一度始めたことや、苦労して続けてきたことを手放すのは意外に難しいかもしれません。しかし、自分の能力を活かしたり自己成長をするためには、何かを手放し選ぶという取捨選択できる力が必要で、これからの時代に求められる力なのです。あなたもエッセンシャル思考を活用し、最大限のパフォーマンスを目指して「選ぶ・手放す」を始めてみませんか。

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