『HARD THINGS』から考えるこれからの時代に必要な「メンタルケア」


これからの時代に大事なのは資金力や体力、発想力やビジネス推進力よりも「強じんなメンタル」なのかもしれません。ベン・ホロウィッツ著『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』は、著者が起業し会社を売却するまでの日々で繰り広げられた数々の経験を描いています。

起業してもうまくいかず途中で挫折してしまう人はいます。その原因が自分の中にあることを気づかせてくれるのが本書です。起業家だけではなく多くのビジネスパーソンにも大切なメンタルケアについて考えていきましょう。

0から1を生むときに起こるさまざまな問題とどう向き合うか

起業時、新規プロジェクトリーダーへの抜擢時、昇進によって部下ができた時。これからの道標を示してくれる何かを求めている時ではありますが、多くの本にはその答えがありません。なぜなら、全てのパターンで成功できる法則など存在していないからです。0から1を生みだすのは簡単なことではありません。ホロウィッツ氏が経験した顧客の倒産や優秀な社員への解雇通告などの困難は、起業家の誰にでも起こりうることです。

しかし、大切なのは事象ではありません。困難に面した時に何を考え、どう立ち回るかです。時には、ロジカルな思考よりも「必ず難題を乗り切る」と腹を括って挑み続ける粘り強さや根性、体力も必要になる場面もあるでしょう。どんなに大変な問題でも、一つずつクリアして次のステップへ進む地道な努力に耐えうる強いメンタルが起業家には必要なのです。

難題を乗り越えるために必要なメンタルケア

経済産業省がまとめた「中小企業白書2017」によると、日本の起業家の起業後5年の生存率は81.7%だそうです。これは100人が起業すると約18人は5年後に廃業している計算です。『HARD THINGS』にもあるように、起業家が常日頃外部から与えられるプレッシャーは大きく、常にリスクと成長との隣合わせです。そのため、一生懸命取り組んだあとに燃え尽きて、気持ちが落ち込んでしまい、やる気が出なくなる人もいるようです。そうならないように、常日頃からメンタルケアを意識すれば、同じような結果を回避していくことができます。

また、メンタルヘルスについて厚生労働省が発表した「平成28年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」によれば、仕事や職業生活に関して強いストレスを感じている事柄があると答えた人は59.5%で27年調査の55.7%を上回っています。また、強いストレスを感じた内容を見ると「仕事の質・量」が53.8%、「仕事の失敗、責任の発生等」が38.5%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」が30.5%と、仕事に対してのストレスは起業家だけではなく、一般的なビジネスパーソンでも抱えている事がわかります。ただし、悩みの相談相手がいると答えた人が91.1%にも上り「家族・友人」、「上司・同僚」の順です。仕事やプライベートで悩んだら、まずは人に相談して解決への道筋をたどるのではないでしょうか。

メンタルケアが必要なのは起業家だけではない。個の時代を生き抜くために

メンタルケアが必要なのは経営者だけなのでしょうか。働き方改革の推進により、企業の看板より個人の能力や才能に重きが置かれる時代へと移り変わってきています。まだまだ多くはないものの、副業が解禁になった企業もあれば、パラレルキャリアなどでさまざまな仕事に精を出す人もいます。また、企業から飛び出してフリーランスとして活躍する人も増えてきました。そういった流れの中で、メンタルケアを必要とする人が増えていく可能性があります。ここでは普段の様子からどのような方法があるのかを検討します。

・不安や恐怖を払拭するためにメンターを持つ

仕事を進める中で、初めて取り組むことに関して不安や恐怖を感じることがあるものです。先輩助言者、いわゆるメンターの存在があればマイナスに傾きがちなメンタルを整えることもできるでしょう。よくある成功談を集めた啓発本とは異なり自身の失敗とそれを乗り越えた経験を詰め込んだHARD THINGSも、メンターであり、バイブルだといえるはずです。

・気持ちを落ち着かせる方法を見つける

集中力を高めるために音楽を聞いたりガムを噛んだりするスポーツ選手のように、自分の気持ちを落ち着かせる方法を探してください。休憩時間にひとりでゆったりできる場所をいくつか見つけておくのもいいですし、ランニング、サウナで汗を流す、読書、映画鑑賞、ヨガやマインドフルネスで気持ちを落ち着かせる以外にも、人によっては習字や陶芸なども当てはまるでしょう。日々の疲れを和らげるような方法を見つけましょう。

・クラウドサービスで、VR、AIを用いたメンタルケアサービスも

メンタルケアといえば、カウンセラーのもとに通う人もいますが、最近では専門家のもとを訪れることなく、セルフでメンタルケアを行うためのクラウドサービスも登場しています。サービスに申し込むと、AIによる仮想セラピストがチャットでセラピーをしてくれるので、VR(ヴァーチャル・リアリティ)を利用してストレス軽減につなげていくことも可能になるでしょう。人を頼ると時間の制約があるので十分なサポートを受けられない場合もありますが、自分自身でメンタルケアを行う習慣をつけていけば、日々の生活を明るく向上させることができるようになります。

・専門家に相談する

メンタルヘルスと言えば、印象が悪いと考える人もいるかもしれません。しかし、メンタルヘルスとは心の健康を指す言葉です。なんとなく心の調子が優れないときや、心が揺らいでしまう場合はカウンセラーを頼るのも一案です。気づかないうちに精神疾患にかかってしまうよりは、少しおかしいなと感じた時点でカウンセラーのもとを尋ねれば、いい解決策を教えて貰えるはずです。もちろん、一番よいのは自分で自分をコントロールできるようになることです。

セルフコントロールで明るい毎日を

これからの世の中は会社に守られるのではなく、一人ひとりがそれぞれのブランドを確立し、自分自身のブランドを背負って生きていく時代になると予想されます。自分次第で生き方が変わる時代です。その分、自分に起こってくることに対して矢面にたつのは他でも無い自分自身です。『HARD THINGS』と同様に困難の日々が次々に訪れるかは分かりませんが、どのような困難に遭遇しようとも、心身ともに健康で、明るく力強く前に進むために自分なりのメンタルケアを探していくことが大切になるでしょう。

Photo by Denys Nevozhai on Unsplash