ソフトウェアだけじゃない。イノベーションを目指すハードウェアベンチャー


かつてモノづくり大国と呼ばれた日本は、多くのイノベーションが戦後の復興を支えました。しかし、その後、世界に先駆けた製造業などの一流企業が既存事業の改善へ傾き、イノベーションが思うように進まないジレンマに直面しています。しかし、一方では大企業がシェアをしめていた製造業の分野にもベンチャー企業が参入し、大胆な発想で新たなイノベーションが生まれています。そこで、世界でもトップクラスとされる産業ロボットの分野で、高い評価を得ている日本のベンチャー企業を紹介します。

モノづくりベンチャーの台頭

大手企業による新規事業への参入が後退し、イノベーションが足踏み状態の一方で、モノづくりベンチャーが台頭しています。かつて、ベンチャーといえば、ソフトウェアやインターネットサービスが主流でした。

経営資源に乏しいベンチャーが、大規模な設備投資が必要なハードウェア関連に参入するのは困難だったことでしょう。ところが、ベンチャーキャピタルの出資や企業間連携などで、小規模企業でもハードウェアを開発できる環境が整ってきたのです。モノづくりベンチャーが台頭してきた裏側には、ベンチャー企業だけではなく、それをフォローする存在があったのです。

産業用ロボットの制御部分に光を当てたリンクウィズ

モノづくりの現場では、必ず設計と製造の間にわずかな狂いが生じます。3次元形状をデータモデルとして表現する3DCADで設計したデータで製造すると、わずかな誤差が各パーツに発生するのです。作業効率の向上を図るティーチングデータの作成に多くの時間を割いていました。

2015年3月に、世の中の一歩先を実現するという理念で創業されたベンチャーのリンクウィズ(静岡県浜松市)は、自動的に製造ロボットの誤差を補正するLロボットを開発しています。3Dスキャナーと連動するLロボットがティーチングデータを自動生成するだけでなく、ティーチングデータを物体に合わせて自動補正する機能も併せ持つイノベーションの優れモノです。

同社では物体の不均衡にも注目し、3次元の自動検査で品質管理する「L-Qualify」も開発しました。これまで使いにくかった産業用ロボットの制御部分に光を当てたベンチャー的発想で、官民出資の投資ファンドである産業革新機構が2017年に出資しました。2018年は海外展開に本格的に乗り出す計画を打ち立てています。

産業用ロボットをより知能的で使いやすくしたMUJIN

産業用ロボットのコントローラーを製造販売するのが2011年7月創業のMUJIN(東京都墨田区)です。これまで工場の温度や湿度などの環境に合わせ、コントローラーにはティーチングという調整が必要でした。エキスパートが手作業で経験と勘に頼って設定していたのです。この面倒なティーチング作業をなくすため、複数メーカーのロボットでも組み合わせて制御できる汎用性のあるコントローラーを開発します。世界で初めて自律的に産業用ロボットが考えて作業することが実現したのです。

これまでピッキングや箱詰め、組み立てなどの作業には複数の動きが要求され、自動化は困難とされていました。このベンチャー的発想で開発された「汎用性のあるコントローラー」というイノベーションは、によって、これまでの産業用ロボットとは異なる独自性を見出しました。。MUJINには多国籍の優秀な人材がそろっています。かつて、シリコンバレー最大のロボット起業家集団ウィロー・ガレージに属していた専門家がテクノロジー部門をリードしているのです。

米スタンフォード大やマサチューセッツ工科大の優秀なエンジニアをインターンで呼び寄せ、半年間は正社員相当の給与を支払っています。そのため、モノづくりに魅せられたインターンが終了後に戻ってくるケースが後を絶たないそうです。

モノづくりの現場では自己実現に向かってまい進する人たちが

今回紹介した2社以外にも、いくつもの企業が自分たちの考えや構想をカタチにし、新しいイノベーションを生み出しています。従来の方法にとらわれず、もっとこうしたらどうだろうと視点を変え、試行錯誤をしながら新たなものの開発に勤しんでいる人や企業は日本中にたくさんあります。発想や考え方がち密で、大胆な人や企業には、その人たちを協力してくれる企業や人がいて、さらなる夢に近づきつつあるのかもしれません。
確かに、今の日本は世界の国々に比べると遅れを取っていると言われることもあります。しかし、そんな中でも自分たちの夢を実現するために昼夜イノベーションを起こそうとしている人たちがいるのです。モノづくりの現場から、新しいイノベーションが起きるのを楽しみにするのもよし、自分で新しいイノベーションを起こそうと一歩踏み出すのも一案です。一生懸命にモノづくりに取り組む人の様子を見て、あなたは何を感じますか。

Photo by Samuel Zeller on Unsplash