バンクシー(Banksy)から学ぶバズマーケティング


東京の湾岸を走るゆりかもめの「日の出駅」近くで、落書きのような絵が見つかりました。これが世界的に注目を集めるアノニマスなアーティスト、バンクシーによるものではないかと話題になっています。バンクシーの正体は未だに不明ですが、彼の作品はいつも話題となります。なぜバンクシーの作品はバズを生むのでしょうか。本記事ではマーケティング観点から解説します。

謎に満ちたアーティスト、バンクシーとは?

バンクシーは、イギリス出身のアーティストと言われています。それ以外はほとんど知られていません。本名、年齢、容姿、生い立ちなど、すべて謎に包まれています。自身のHPで作品は公開しているものの、プロフィール等は一切公開されていません。こういった謎に満ちた彼のプロフィールから、バンクシーは、「覆面芸術家」とも呼ばれています。


世界を騒がせるバンクシー作品の特徴とは?

では、そのようなバンクシー作品には、どのような特徴があるのでしょうか。

バンクシーの手法は、「イグジステンシリズム(Existencilism)」と彼自身によって名付けられており、実存主義(Existentialism)と、ステンシル主義(Stencilism)を掛け合わせたものになります。バンクシーは、あらかじめ型紙(又は型板)を作成し、その上からスプレーを吹き付けるステンシルという手法をよく用います。

そして、彼の作品の特徴は、世の中に対する皮肉を含んでいることです。たとえば、彼はネズミを好んで描きます。ネズミは、弱者や嫌われ者の象徴として書かれています。他にも、火炎瓶の代わりに花束を持った絵などは、争いに対する皮肉と言われています。こういった、シニカルなメッセージを投げかけるのが、バンクシーの作品の特徴です。

ロンドン郊外に作られた陰気なディズニーランド

そんな彼の代表作は、「ディズマランド(Dismaland)」でしょう。ロンドンから車で約3時間のところに造られた、期間限定のテーマパークです。「Dismal」とは、「陰気な、憂うつな」という意味で、この言葉とDisneylandを掛けています。中では、荒廃した城や、歪んだ人魚姫像などが展示されました。このダークなテーマパークに5週間でなんと15万人もの人が来場しました。

バンクシーはこの作品に対して、「夢の国の個性のなさにうんざりとしているようなタイプの人にぴったりの娯楽になるだろうと思った」と語っています。大がかりなテーマパークに対する強烈なアンチテーゼだと言えるでしょう。

人はなぜバンクシーに翻弄されるのか

なぜ我々はバンクシーに魅力を感じるのでしょうか。作品のクオリティの高さ以外にも、2つの理由があると分析できます。

1つは、その「ゲリラ性」でしょう。バンクシーの作品は、いつどこで書かれるかわかりません。その、いつ発表されるかわからない、というのが、ファンに渇望感を与えるのです。そして、作品が発表されると、口コミ、特にSNSによって、情報は一気に拡散されます。この大きな渦に、いろいろな人が飲み込まれていくのです。

もう1つは、「非公式なのに、公式に認められる」という、他者を巻き込むその手法です。たとえば、バンクシーが勝手に作品を展示した美術館は、その後、その作品を公式に展示するようになりました。こうした、他者を巻き込んでいく手法のうまさも、彼の人気の理由の1つでしょう。

バンクシーから分かるバズマーケティングの本質

以上の2点は、デジタル技術が発展した現代にもっとも即した手法と考えられます。たとえ小さな活動であっても、そのコンテンツに強さがあればSNSで世界中に発信ができる。これはツイッターやフェイスブックでシェアされていく現象と同様ではないでしょうか。心が動かされた文章やビジュアルをリツイート、シェアしてしまうこの感覚。バンクシーのアイロニカルな風刺画に心動かされる人がたくさんいるのでしょう。

例えば、「ゲリラ性」が特色の話題になったコンテンツとして、GUCCI 2016年クルーズコレクションの日本キャンペーンが挙げられます。同キャンペーンでは、グッチが渋谷のスクランブル交差点の大画面をジャック。ニューヨークで行われた2016年クルーズコレクション動画を流し、さらにそれをインフルエンサー10人が撮影し、多くのフォロワーへ届けるといったものでした。ある1点で行われた強いニッチなコンテンツをバズの力で世界に広めたのです。

大切なことは、コンテンツが圧倒的に面白く、人の心を揺り動かすこと。それが渦を生み、バズとなる。論理を突き詰めるだけではなく、ビジネスにアートの発想を取り入れることが重要と叫ばれている昨今、人を動かす面白い創造ができる企業こそが時代の覇者となっていくのかもしれません。

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