米富裕層間で「私立より公立」を選ぶ親が急増 その理由は?


米国では「お金持ちは子どもを私立校に通わせる」という考え方が徐々に移行し、教育レベルの高い公立校に通わせる富裕層が増えています。アメリカ合衆国国勢調査局のデータによると、2006~2016年にわたり私立の幼稚園~高等学校の入学数が14%減ったのに対し、公立の入学者は2%増加しました。

「子育ても重要な投資の一つ」と見なす富裕層が、あえて公立校を選ぶ主な3つの理由を探ってみましょう。

富裕層が公立校を選ぶ3つの理由

1.公立校の教師の質の向上

米国では州により教員資格の規定が異なるものの、規定を厳しくする州が増加傾向にあります。現在公立校の教師になるためには、全ての州において教員免許状取得試験 (PRAXIS)と州の認定する教員免許、そして教員職の応募の際に修士号を取得している、あるいは勤務開始後5年以内に取得することが義務付けられています。

資格や学歴が教師としての質を保証するとは限りませんが、公立校の教師がこうした厳しい基準を満たしているという点では、子を通わせる親としては安心感があります。また、厳しい基準をクリアしていることから、公立校の教師の年収は私立校の教師より平均1.4万ドル高く設定されています。

2.公立校の生徒の方が学力が高い?

世帯所得が子どもの認知能力や社会行動、健康に影響を与えることは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスなど数々の調査から明らかになっています。経済的に余裕のある高所得家庭の子どもは一流の教育環境で育つ機会を与えられ、その結果が将来に反映されるというわけです。

そのため全国共通テストは私立校の生徒の方が良い結果を出す傾向が見られますが、世帯所得による優位性と劣位性を考慮すると、総体的には公立校の生徒の方が、学力的に優れてい可能性を示唆する調査結果が報告されています。

一例を挙げると教育科学研究所(IES)の調査では、偏差値が平均以下の公立校の生徒でも、私立校の入学者を対象とする奨学金プログラムの参加者より、平均点が7.3%高いことが明らかになっています。

3.「多様性のある教育環境」を望む親の増加

近年多様性の重要性に焦点が当たっていますが、「自分の子どもにも多様性に富んだ環境で学んで欲しい」と考える富裕層が増えています。様々な背景や文化、趣味嗜好、思考をもつ仲間とのコミュニケーションを通し、批判的思考や問題解決能力、創造性などが培われるためです。

人種的な多様性という点は世界中から生徒が集まる私立校にも該当するものの、経済的・社会的多様性という点でやや偏っている事実は否めません。

富裕層は子どもの教育にもかしこく投資

その他、2007年の景気後退後、教育費を節減する家庭が増えたこと、手頃な学費のカトリック系の私学が減ったことなどを、私立学校協会や研究者は理由として挙げています。
どのような理由にせよ富裕層の親の教育観が変化し、「高い学費を払って私立に通わせる代わりに、トップレベルの公立の学区に家を買う方が賢明な投資である」と判断する富裕層が増えていることに間違いはありません。

高級住宅エリアには私立校だけではなく、評判の良い公立校もあります。例えばニューヨークの高級地域の一つであるマンハッタンの公立小学校ビークマン・ヒル・インターナショナルやサイモン・バルーク中学校は、生徒の学力や学習環境を評価する「グレイト・スクールズ」で、高スコアを獲得しています。

ニューヨーク の実効固定資産税率は平均1.40%と51州中14番目に高いものの、納めた税金の一部は地元の教育機関や公立校の支援に使われます。つまり子どもを公立校に通わせると、税金が子どもの教育費としての投資になるわけです。一方私立校に通わせると、学費と固定資産税を別々に納めることになります。公立校は学費が無料であるため、その分のお金を学校外の習い事などに投資することも可能です。

公立校にとっても勉強熱心な生徒が多数集まることは、学校全体のさらなる学力や学習環境の向上につながります。親としても公立校のレベルが高くなればなるほど、効率的に大きなリターンを狙える投資対象となるため、公立校へ子どもを通わせる富裕層がさらに増加するものと予想されます。

Photo by ASDF&Proxima Studio on AdobeStock.com

 
【この記事を読んだあなたにオススメ】
・夢を叶えるための値段は?“ワンランク上”の教育にかかる資金はいくら?
・教育とITの融合 Edtech(エドテック) ブロックチェーンの活用も
・夢を叶えるための値段は?アイビーリーグに入学するまでにかかる費用は?
・アイビーリーグに入った日本人はその後どのような活躍をしているのか
・「STEAM教育」とは? 子供のためには、まず大人から