STEAM教育に学ぶ「AIにできない付加価値」の身につけ方


AIの進歩によって、私たちの社会は大きく変わりつつあります。AIに取って代わられない「人間としての価値」を身につけるにはどうすればいいのでしょうか。そのヒントとしてSTEAM教育を紹介し、AI時代を生き抜く人間の在り方について考察します。

AIの進歩で人間の職域が侵される? STEAM教育が注目される背景

AIが人間を超える瞬間を、シンギュラリティ(技術的特異点)と言います。SFなどで度々取り上げられてきたテーマですが、近年一気に現実味を帯びてきました。レイ・カーツワイル博士は、2045年にシンギュラリティが来るのではと予測しています。

それに伴い、これまで人間が担ってきた多くの仕事がAIに取って代わられると考えられています。

2015年、野村総合研究所はオックスフォード大学と共同研究を行い、「人工知能やロボットなどによる代替可能性が高い100種の職業」を発表しました。その中には、銀行窓口係やバスの運転手といった身近な職種も含まれています。

<人工知能やロボットなどによる代替可能性が高い100種の職業>
IC生産オペレーター/一般事務員/鋳物工/医療事務員/受付係/AV・通信機器組立・修理工/駅務員/NC研削盤工/NC旋盤工/会計監査係員/加工紙製造工/貸付係事務員/学校事務員/カメラ組立工/機械木工/寄宿舎・寮・マンション管理人/CADオペレーター/給食調理人/教育・研修事務員/行政事務員(国)/行政事務員(県市町村)/銀行窓口係/金属加工・金属製品検査工/金属研磨工/金属材料製造検査工/金属熱処理工/金属プレス工/クリーニング取次店員/計器組立工/警備員/経理事務員/検収・検品係員_検針員/建設作業員/ゴム製品成形工(タイヤ成形を除く)/こん包工/サッシ工/産業廃棄物収集運搬作業員/紙器製造工/自動車組立工/自動車塗装工/出荷・発送係員/じんかい収集作業員/人事係事務員/新聞配達員/診療情報管理士/水産ねり製品製造工/スーパー店員/生産現場事務員/製パン工/製粉工/製本作業員/清涼飲料ルートセールス員/石油精製オペレーター/セメント生産オペレーター/繊維製品検査工/倉庫作業員/惣菜製造工/測量士/宝くじ販売人/タクシー運転者/宅配便配達員/鍛造工/駐車場管理人/通関士/通信販売受付事務員/積卸作業員/データ入力係/電気通信技術者/電算写植オペレーター/電子計算機保守員(IT保守員)/電子部品製造工/電車運転士/道路パトロール隊員/日用品修理ショップ店員/バイク便配達員/発電員/非破壊検査員/ビル施設管理技術者/ビル清掃員/物品購買事務員/プラスチック製品成形工/プロセス製版オペレーター/ボイラーオペレーター/貿易事務員/包装作業員/保管・管理係員/保険事務員/ホテル客室係/マシニングセンター・オペレーター/ミシン縫製工/めっき工/めん類製造工/郵便外務員/郵便事務員/有料道路料金収受員/レジ係/列車清掃員/レンタカー営業所員/路線バス運転者
※50音順 「株式会社野村総合研究所2030年研究室2015年12月2日発表より」

このように、AIの進歩によって私たちの生活や価値観は大きく変わるでしょう。変化の激しい時代を生き抜くために、必要な教育としてSTEAM(スティーム)教育が注目されています。

STEAM教育とは?創造性を育む新時代の教育に要注目

STEAM(スティーム)教育は、Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)から成るSTEM(ステム)教育に、Art(芸術)を加えたものです。

STEAM教育の前身であるSTEM教育は、2011年にオバマ大統領が国家戦略として掲げるなど、理系科目4分野を横断的に学ぶ方法として、以前よりアメリカを中心に推進されてきました。

しかしAIが急速に進歩したことで、「STEM教育によって人間にしかできない価値を提供することは本当に可能なのか」と疑問視する声が上がるようになりました。

AIが代替できないもの、それは人間の創造性や発想力です。こうして、創造性を育むためのArt(芸術)を加えたSTEAM教育が重視されるようになったのです。

STEAM教育では、論理的思考力や知識だけでなく、対話する力や豊かな感性、好奇心を身につけることも同様に重要視されます。目指すのは、AI時代において「人間にしかできない価値」を提供できる人材を育てることです。

STEAM教育からに学ぶ「AIにできない付加価値」の身につけ方

人間にしかできない価値を提供するキーとなるのは、STEAM教育でも重視されている「創造性」です。

たとえば、AI技術が進歩すれば「簡単な作業をAIに委ねることで、人間はより人間らしい仕事に集中できる」のではという見方があります。

観光産業に従事している人の場合、ツアーの手配やパンフレットの印刷といったマニュアル通りの仕事をこなすのではなく、「旅行に来た人の経験をより豊かなものにするには?」というアイディアをふくらませる時間をより多く持つことができます。

そうすれば、地場産業とのコラボレーションで個性的な企画が生まれたり、旅行体験をより豊かなものにするアプリを開発できたりするなど、人間にしかできない領域がどんどん広がっていきます。

人間らしさは「創造性」に紐付けられることが多く、AI社会においては日頃から新しいものを積極的に取り入れる感性を磨き、豊かな感性、好奇心を育む姿勢が不可欠です。

こういった「創造性」を育む方法にもコツがあります。「有名な画家の絵だから」「営業先で話のネタになるから」「知見を広げられて有利になるから」などの理由で絵画を鑑賞していても、創造性は育まれません。「どんな気持ちで描いたのかな?」「今の自分の気持ちとリンクする絵だ」というような、人間ならではの感性を持って鑑賞することが、創造性を鍛える上で大切なのです。

AIを制し、人間がより人間らしく働ける社会を実現するためには

AIの進歩を悲観的にとらえるのではなく、仕事そのものをより価値の高いものへとアップデートしていくという発想も大切になるでしょう。

次々と流れてくる情報を受け身で取り入れたり、小手先のテクニックを磨いたりするのではなく、自分の内側にある感性に目を向けることが人間らしい創造性を育み、AI社会を生き抜くすべを身につける第一歩といえるのではないでしょうか。

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