今さら聞けない、5Gネットワークの正体と強みとは?


近年、よくニュースなどで耳にするようになった「5G」。ただ、これだけ話題になっていながら、その実態が見えづらい通信規格ほど珍しいものはありません。

5Gは通信規格が高速化することによって、2時間の映画を3秒でダウンロードできるようになると言われますが、それは5Gによってもたらされる恩恵のほんの一部で本質ではないようです。

5G技術は、工場の機械化が起きた18世紀の第一次産業革命、電力を用いた大量生産を可能にした第二次産業革命、そしてオートメーション化の第三次産業革命に続く、次なる抜本的な社会変革をもたらすと考えられているのです。

中でも特に「外出」の概念が大きく変化すると考えられています。2Gの登場でメール機能が普及したことで、携帯電話の概念が「話すもの」から「使うもの」へ変化したように、クルマの乗車体験や外出先での体験も、その概念が抜本的に変化するかもしれません。

今さら人に聞けない・・・5Gの正体と強みとは何か?


これから訪れる5G時代を読み解くために、まずは過去の通信規格の変遷をたどり、新しい通信規格の登場が私たちの暮らしをどのように変えてきたのかを理解することから始めましょう。

1980年代

1Gの登場で携帯電話が普及し外出先での通話が一般的になったことで待ち合わせの概念が変化した。

1990年代

2Gの登場でメールが普及したことでコミュニケーションのあり方が多様に。

2000年代

3Gの登場でiモードやezwebが普及したことで何かを「検索」する行為がPC以外にも拡大。ブログの普及にも寄与した。

2010年代

4Gの登場で動画視聴やスマホゲームが普及したことで、ユーザーがクリエイターになることが容易になった(YouTuberなど)。それに伴い新しい仕事のあり方が注目されるように。

それぞれの時代を振り返ると、新しい通信規格が人々の暮らしに与える影響の大さが分かりますが、次なる通信規格として登場する5Gには「高速大量通信」「低遅延」「多数同時接続」の3つの機能が注目されています。

5Gは現在の4Gと比較して通信速度が約100倍になるため、よくニュースで「2時間の映画が3秒でダウンロードできる」と話題となるのですが、5Gの本当の強みはデバイスからデータをアップロードする速度「アップリンク」の高速化です。(ダウンロードのスピードは「ダウンリンク」と呼ばれる)

つまり、5Gが革新的なのはデータを高速に「受信」できることだけではなく、データの「送信」速度が飛躍的に高くなったからなのです。それに伴い遅延も従来の1/10になるため、自動運転や遠隔操作などの技術の進化に期待が寄せられています。

また、高速かつ大容量でデータの受け渡しが可能になったことで、4G時代には一つの基地局に100台のデバイスしか同時接続できなかったものが、5G時代にはその100倍の10,000台のデバイスが同時接続可能になるのです。

こうした「高速大量通信」「低遅延」「多数同時接続」の3軸によって、これからあらゆるモノがインターネットに繋がるIoT化、自動運転技術、そして遠隔操作などが急激に進み、リアルの世界を大きく変えていくことになると考えられています。

5Gの登場で想像世界と現実世界の境界線が曖昧になるかもしれない


現在、日本では自動運転はドライバーの運転をサポートする運転支援が普及してきているものの、完全な自動運転のためにはクルマが道路状況などを瞬時に判断し、適切な危機回避を行う必要があります。

現在の4Gでは0.1秒の遅延が発生するため、時速60キロで走行するクルマの場合、遠隔からブレーキをかけてから1.7mも進んでしまい、これでは緊急時に間に合いません。

しかし、5Gは0.001秒しか遅延がないため、この誤差を1cm以下に抑えることができ、5Gを起点に自動運転技術が飛躍的に普及することが期待されています。

5Gによってもたらされる恩恵は都市部はもちろんのこと、交通機関が少なく過疎化や高齢化が急激に進む地方において、より力が発揮されるのかもしれません。

現在、日本全国の自治体で実証実験が行われており、例えば、高齢者が多く住む大阪府河内長野市では、住宅地と商業地帯を循環する自動車運転の実証実験が2019年から開始されました。交通手段の利便性が向上することによって高齢者の外出機会の拡大と、それに伴う経済効果が期待できるでしょう。

また、スポーツ観戦などのエンタメ業界でも5Gを見越した取り組みが進んでいます。

例えば、auは横浜DeNAベイスターズ(横浜スタジアム)や名古屋グランパス(豊田スタジアム)と協力して、5Gを活用したAR(拡張現実)や自由視点などの新しいスポーツ観戦のあり方を模索し始め、沖縄セルラー電話株式会社も同様の取り組みを行なっているようです。

これらの試みは、会場内に設置された大量のセンサーを活用したもので、ARやVR(仮想現実)によって、目の前でプレーしている選手のプロフィール、戦績、そして見るべきポイントなどを表示することができるようになるというもので、スポーツ観戦の新しいあり方を模索する糸口となるかもしれません。

5Gの本当の強みは未知数


このように5Gの登場に先立ち、さまざまな未来予測やそれに伴う実証実験などが活発に行われていますが、まだまだ5Gの本当の強みは未知数です。

と言うのも、アメリカの調査会社PSBが2019年に企業幹部3,500人を対象に行った調査によれば、回答者の91%が5Gを活用した新サービスに関して「考案すら行っていない」ことがわかっており、5Gの真の強みを引き出すサービスの登場にはまだまだ時間がかかるのかもしれません。

実際、新しい高速通信規格が登場してから新サービスが登場するまでにはタイムラグが常につきもので、2G時代の「写メ」、3G時代の「音楽ダウンロード」、4G時代の「動画サービス」などは、いずれも新しい通信インフラが整ってから急激に発展したサービスでした。

それに技術進化による人々の行動変化を予測することも困難を極めます。例えば、動画配信が浸透したことで音楽ライブを自宅で無料で楽しめるようになった時代に、わざわざ遠方まで足を運んでリアルのライブを観に行くなど、一見、矛盾することが多々起きているのが現実です。

5Gの登場でスマホ主役の時代は終わりを迎え、「人間」が主役の時代が訪れる?


まだまだ不確定要素の多い5Gに関する話題の中で、ほぼ確実に訪れるだろうと目されているのが「ソサエティ5.0」です。(「ソサエティ5.0」とは、少子高齢化、地域格差、貧富の差などの課題解決に繋がる新しい社会のあり方のこと)

これまで狩猟社会「ソサエティ1.0」、農耕社会「ソサエティ2.0」、工業社会「ソサエティ3.0」、情報社会「ソサエティ4.0」と、新しい時代を迎えるごとに私たちの暮らしの質は飛躍的に高くなりました。そして5Gの登場によって、いよいよ「ソサエティ5.0」の到来が目の前まで迫っています。

これまでの通信規格の進化は、1Gでは音声サービス、2Gではメール、3Gは音楽や写真、そして4Gでは動画と、これらはデバイス上での変化であり、いずれもソサエティ4.0の一部でしかありませんでした。

ところが、5G時代には、IoT、クラウド、ドローン、自動運転車、そして無人ロボットを始めとした5Gテクノロジーが、人の動きと連動して「スマホの外」の現実世界を変えようとしているのです。

つまり、5Gの時代には私たち「人」が新時代の中心に置かれることになると言えるでしょう。

それに伴い、時代の中心はスマホから「私たち」へと移り、家のドアを開けた先の景色も今とは全く違ったものになっているかもしれません。