サブスクの到来で、タイヤメーカーはコンサルティング会社になる?


世界時価総額ランキングに名を連ねるTOP10のうち、7社にはある共通点があります。それは、7社のいずれも「サブスクリプション」によって大きな収益を得ているということです。

例えば、マイクロソフトはそのうちの1社です。かつてパソコン市場を席巻した同社は、スマホシフトに乗り遅れた上、急成長をとげたGAFAの登場によって存在感が弱まっていました。

そんな中、マイクロソフトは2014年ごろから売り切り型のパッケージ版ソフト「Office」を、サブスクリプション型の「Office 365」に置き換えたことで、業績が大幅に改善され、16年ぶりに時価総額世界1位に返り咲きました。(2019年8月末時点)

窮地に陥ったマイクロソフトを救った「サブスクリプション」とは一体どのようなものなのでしょうか。

サブスクリプションとは?「実は、決して新しい概念ではない」


サブスクリプションとは、利用期間に応じて料金を支払う「購買予約モデル」のことを指します。とは言っても、これは決して新しい概念ではありません。

そもそも、牛乳の定期配達、月極で停め放題の駐車場、新聞紙、そして携帯電話のかけ放題プランに至るまで、サブスクリプションの概念自体は昔から存在していました。

従来のサブスクリプション・モデルは、会員が支払う月額料金によって継続的な利益を確保することができる手段として重宝されていたのです。

しかし、そんなサブスクリプション・モデルは現在、単に継続的な利益確保を目的とするだけでなく、顧客との関係構築に活用されるようになりました。

今、サブスクリプションが見直される理由とは?「商品中心主義から、顧客中心主義への大転換」


従来のビジネスでは、「購入前→購入時→購入後」という全体プロセスのうち、購入前と購入時に各企業は力を注いできました。それはモノが売れていた時代には、競合他社よりも迅速かつ大量に商品を市場に送り出すことが直接的に利益に結びついたからです。

ところが、あらゆる商品がコモディティ化し、市場に商品が溢れかえっている現代において、モノの価値は相対的に低くなりました。そして同時に、顧客の選択肢も大幅に増えたことによって、商品ファーストから、顧客ファーストへの転換が求められるようになったのです。

サブスクリプション・モデルの成功例1「graze」


「商品を買っているのは誰か」を具体的に理解しているからこそ、最適な提案ができる。それをよく表しているのが、お菓子のサブスクリプション・サービスを提供しているアメリカのお菓子通販サイト「Graze」です。

同社は商品を購入した顧客からのフィードバックをもとに、顧客の好みを分析し、その上で顧客が好むタイプのお菓子はもちろんのこと、顧客の好みを“あえて”ハズした商品も提供します。

そうすることによって、顧客は自身が自覚していなかった「新しい好み」に出会うことができ、そこから生まれる「次はどんなお菓子が届くのだろう」というワクワク感が会員継続のインセンティブになっているのです。

サブスクリプション・モデルの成功例2「ラクサス」


国内にもサブスクリプション・モデルで成功している企業があります。それは海外高級ブランドバッグのサブスクリプション・サービスを提供する「Laxus(ラクサス)」です。

同社は月額6,800円で約60種類の海外高級ブランドバッグ約3万点の中から選び放題サービスを提供しています。もちろん同社が行なっているのは単なるレンタル事業ではなく、ビッグデータ解析などのテクノロジーを活用して、顧客の行動履歴をもとに、それぞれの顧客がどのブランドを欲しがっているのか独自に分析・提案を行なっています。

その中でもっとも大きな特徴は、貸し出すバッグにICタグを埋め込み、スマホ上のアプリに搭載されたGPSから顧客の位置情報と行動履歴を把握するという試みでしょう。(※アプリのGPS機能をオンにしたユーザーからのみ位置情報を取得)

そうすることによって、例えば、顧客が同社からレンタルしたバッグを持って、ルイ・ヴィトンの店舗に入店すると、スマートフォンのアプリ上にラクサスでレンタル可能なルイ・ヴィトンのバッグが優先的に表示されるという仕組みです。

同社のこうしたシステムは顧客からの評価が高く、会員の継続率は90%以上、そして9ヶ月以上契約を続けた会員に限れば、なんとその継続率は98%にも上ります。

このようにサブスクリプション・モデルで成功している企業は、顧客のフィードバックに応じてどんどんサービス内容を変化させていくのです。

常に変化し続ける姿は、いわば永遠に完成しないベータ版サービスのようにも見えますが、顧客の好みが細分化し簡単に心変わりしてしまう現代において、常に変わり続けることが求められているのでしょう。


サブスクリプション・モデルへのシフトは、あらゆるビジネスに広がる成長機会であり、これまでは特にデジタルサービスを提供する企業が先立ってサブスクリプションの恩恵を受けてきました。

ところが、サブスクリプションの波はいま、あらゆる産業を飲み込み始め、ビジネスの常識を変えようとしています。

例えば、大手タイヤメーカーの「ブリヂストン」は、トラックやバス事業者向けにタイヤの供給とメンテナンスを一括して請け負う、BtoB向けのサブスクリプション・サービスを始めました。

タイヤのみを売るという既存のビジネスモデルからの脱却を目指したブリヂストンは、月額料金で1社ごとにヒアリングやタイヤ使用状況の調査を行い、その上で、顧客企業に合わせて、採用するタイヤの種類、メンテナンスの内容、燃費改善方法を提案しているのです。

こうしたサブスクリプション・シフトによって、同社はタイヤの販売店から、タイヤの「コンサルティング会社」に、同社社員はタイヤのセールスマンから、タイヤの「コンサルタント」に大胆な変身を遂げました。

恐らく、サービスカンパニーへのシフトはブリヂストンだけに限らないでしょう。これからサブスクリプション・モデルがあらゆる産業に浸透するにつれて、あらゆる企業が顧客中心主義にその姿を変える可能性があるからです。

そもそも、企業にとって商品を売ることは「ゴール」ですが、顧客にとって商品を買うことは、あくまでも「スタート」でしかありません。

そう考えれば現在のビジネスが顧客中心にシフトしていることはとても自然な流れなのかもしれません。