FinTech―クラウドファンディングによる自己実現の可能性―


2017年9月13日、海外で圧倒的な規模を誇るクラウドファンディング大手のKickstarterが、日本のクリエイター向けにサービスを開始しました。クラウドファンディングは新しい資金調達のあり方として、FinTech(フィンテック)分野の中でも注目が集まる分野の一つです。その成長はどのようなものなのでしょうか。

クラウドファンディング市場の動向

株式会社矢野経済研究所によれば、2016年度の国内クラウドファンディングの市場規模は前年度比96.6%増の745億5,100万円でした。芸能人を始めとしたクリエイターによる資金調達や、大企業の新技術・新商品のテストマーケティングを兼ねた資金調達などの事例もあり、その規模は拡大しています。市場を牽引しているのは融資型(貸付型)クラウドファンディングで、2016年度の資金調達額は672億円で全体の90.3%を占めています。

同研究所が発表した2017年度のクラウドファンディング市場規模の予想は、1,090億400万円(前年同期比46.2%増)と予測をしています。Kickstarterを始めとする海外企業の新規参入や、2016年に日本で初めて誕生した株式型クラウドファンディングへの期待などから、まだまだ市場は拡大すると考えられています。

クラウドファンディング市場の好調さを示す事例として、和歌山県のベンチャー企業のファイントレーディングジャパン株式会社が2017年5月30日から開始した、折り畳み式電動ハイブリッドバイク「glafit(グラフィット)」が挙げられます。このプロジェクトでは、開始3時間で目標金額の300万円をクリアし、その後も支援額が伸び続けて約50日で1億円718万円もの金額を集め、国内最大規模となりました。

「glafit(グラフィット)」は自転車モード、電動バイクモード、ハイブリット走行モードの3つの走行方法があります。見た目がオシャレなだけではなく、電気エネルギーで動く環境に優しい設計、折り畳んで持ち運びができる軽量でコンパクトな設計、車体の鍵に指紋認証を導入して防犯面にも配慮するなど、今までありそうでなかった機能が、多くの人から共感を得たのではないでしょうか。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングは購入型、寄付型、投資型の3種類があり、投資型はファンド型、株式型、融資型(貸付型)に更に細かく分類されます。

支援が目的のタイプを「寄付型クラウドファンディング」と言います。寄付型は支援に対する見返りはなく、災害復興支援や病気を治すためなどといった社会貢献を目的としています。寄付型クラウドファンディングは2011年の東日本大震災での復興支援を始め、熊本地震での復興支援他、さまざまな支援が行われています。

投資をした見返りとして、モノやサービスの提供が受けられるタイプを「購入型クラウドファンディング」と言います。去年、ある芸能人が絵本制作等のためにクラウドファンディングで資金を募ったのは記憶に新しいことでしょう。これ以外にも、監督自らがクラウドファンディングにて資金調達を呼びかけて集まった資金で制作して大ヒットした映画、音楽活動のプロモーションを兼ねたアーティストなど、購入型クラウドファンディングにはさまざまな例が見受けられます。

最近では購入型には目標達成型(All or Nothing)と実行確約型(All in)と呼ばれるタイプが登場しています。目標達成型はプロジェクトの調達資金が目標額に達しなければ全額返金され、プロジェクトも実行されません。実行確約型は目標額達成しなかった時には支援者には原則返金されませんが、プロジェクトは実施されるためリターンを得ることもできます。

複雑なのは投資型です。投資型クラウドファンディングは株式型、ファンド型、融資型(貸付型)に分けられ、金融庁の登録を受けて初めて業務を行うことが可能になります。投資型クラウドファンディングは、事業などへの投資を行うのが一般的です。投資の見返りとして株式発行が行われるものや、分配金が支払われるものがあります。投資型クラウドファンディングは事業等の収益状況によっては損失を被ることがあるので注意が必要です。

17日間で1億ドル調達したThe DAO

日本より遥かに市場規模の大きな海外ではどのような動きがあるのでしょうか。2016年のアメリカではThe DAOが、クラウドファンディングでの資金調達額を塗り替えました。17日で1億ドル以上の資金調達を行い、関係者も驚いたと報道されています。これは単純に資金調達額が大きかっただけではなく、仮想通貨のイーサリアムによる調達だったことも話題になりました。

しかし、あまりに注目されたためか、その後ハッカーによって盗難される事態が発生しました。当初予定していた300倍の資金が集まり、数日後に60億円が盗難にあったのです。市場の穴をついた事件でしたが、新しい取り組みにはこのようなリスクあるので注意が必要なのかもしれません。

日本円換算で10億円以上集めた事例

上記のような不安要素はあるにせよ、クラウドファンディングの市場は拡大を続けており、海外のクラウドファンディングでは日本円換算で10億円以上集めた事例もあります。

・22億円以上集めたスマートウォッチ「Pebble Time」
「Pebble Time」は軽量で、日中でも見やすいディスプレイであり、1週間程度バッテリーが持つと言われています。このプロジェクトは資金調達額もさることながら、調達スピードが速く、開始1時間で100万ドル調達したと当時話題になりました。その後、Pebbleは別の会社に変わってしまいましたが、歴史に残るクラウドファンディングだったと言えるのではないでしょうか。

・23億円以上集めたトラベルジャケット「BAUBAX」
BAUBAX社の多機能のトラベルジャケット「BAUBAX」は、日本上陸前にアパレル史上最高額の23億円を調達していました。旅行かばんの中に小物類を多く入れてどこにしまったか分からないというような悩みを、このジャケットは解決することができます。このジャケットのポケットに収納すれば荷物を減らせるように、ジャケット内にはポケットや収納部分を備えています。加えて、ジャケットの裏地にはネックピローやアイマスクになるような工夫も見られ、大ヒットしました。現在、日本でも1,000万円以上クラウドファンディングにて資金調達を行っています。

・累計20億円以上調達したクラフトビールBrewDog
BrewDogは、クラフトビールのベンチャー企業です。BrewDogでは、クラウドファンディングを行うとパンク株と呼ばれる株が発行され、さまざまな特典が得られることが特徴です。2009年に初めてクラウドファンディングで資金調達をした時には、その調達額は約1億円(75万ポンド)でしたが、2016年には22億円(1,900万ポンド)調達しています。会社や商品の知名度が上がるに連れ、調達額も増えています。日本でもスーパーやコンビニなどで購入できるほか、六本木に店舗を構えています。

クラウドファンディングの未来

クラウドファンディングでの資金調達を行おうとしているユニークな例として、2016年にロシアのアシュルベイリ博士が成層圏の外に平和で民主的な場所である宇宙国家「アルガルディア」を作ると発言してメディアを賑わせていました。200以上の国から30万人以上がこの国の市民登録を行い、正式に国民になった人までいるそうです。彼は、宇宙への打ち上げ費用はクラウドファンディングで募る予定だとしています。

クラウドファンディングは、自分のやりたいことや想いを言葉にして資金調達が出来る新しい自己実現のプラットフォームとして有効なのかもしれません。今後のクラウドファンディングの動向について、着目してみてはいかがでしょうか。

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