フィンテックだけじゃない?新興国で今マイクロインシュアランスが注目を集める理由


インシュアテック(InsurTech)という言葉をご存じでしょうか。保険(Insurance)と技術(Technology)の造語で、フィンテック(FinTech)と同様に注目を集める分野の一つです。インシュアテックは先進国だけではなく新興国でも浸透しつつあります。その中でも注目を集めつつあるのはマイクロインシュアランスです。日本でもさまざまな企業が最近この分野に参入していますが、新興国で注目を集める理由とはどのようなものでしょうか。

世界のインシュアテック(InsurTech)の状況

日本ではここ数年で徐々に注目が集まりつつあるインシュアテックですが、海外ではすでにフィンテック同様に熱視線が注がれています。米国のFinancial Technology Partnersによれば、2017年は200位上のインシュアテック企業に対して投資が行われ、その額は約32億ドルにものぼるそうです。なお、インシュアテックにおけるM&Aは80社で56億ドルという規模で世界的に見ても大きな規模の投資が行われています。

インシュアテックは規模が大きな分野だと分かりますが、実は日本は世界的に見ても有数な保険大国ということをご存じでしょうか。日本は国民皆保険で医療制度の充実もあり、病院にかかったとしても保険診療の場合なら2割ないし3割負担となりますし、高額療養費制度や障がいを持つ人のための保障など、さまざまな制度があります。それにもかかわらず、日本では、公的保障の補完として民間保険に加入します。厚生労働省が2018年9月15日に発表した「医療費の動向」によれば、2017年の概算医療費は42兆2,000億円にもなります。なお、これには労災や全額自己負担などの費用は含まれていません。ただし、この規模は世界で第2位という内容です。

日本以上に民間保険についての意識が高いアメリカでは医療費は病院によってまちまちで、高所得者層のほうが医療を受けやすい状況があります。アメリカの自己破産の例を見ると、治療費の支払いができずに破産するという事例が多数あります。日本はアメリカにつぐ世界2位の保険料支払い大国だと言われていますが、アメリカの事情とは異なり、あくまでも万一に備えた保障だと考えられるのです。しかし、毎月数万円単位でかけ続ける必要があるなど、家計の圧迫になるものが多かったのが特徴です。

それが、イノベーションの力を借りて保険料を安く抑えて提供出来るようになりました。2009年にライフネット生命がモバイル保険の分野に参入していますし、損害保険の分野でもモバイルで簡単に加入できる保険が増えています。ここ数年では健康に配慮した保険が増え、健康であれば保険料が下がる保険をはじめ、さまざまなものがあり、関心が高まっています。

マイクロインシュアランス(Microinsurance)は新興国の人たちを助ける鍵

保険による保障は、先進国よりも新興国に対してのほうが重要です。なぜなら、新興国は銀行口座を持たない人の割合が高いことに加えて国として社会保障制度、貧困や自然災害への対策が未整備である国もあります。そういった人たちのために注目を集めているのが、「マイクロインシュアランス(Microinsurance)」です。マイクロインシュランスはマイクロ保険という言い方をすることもありますが、低価格かつ低コストで提供される保険のことを指します。新興国を中心に、低所得者層向けに提供されており、一定の成果を見せています。例えば、下記のような企業があります。

・CARD Pioneer Microinsurance Inc. (CPMI)

2013年設立の同社はフィリピンの大手保険会社のPioneer Lifeと提携し、低所得者層向けの損害保険サービスを開始しました。また、代理店を介した販売ができるようにエージェント(日本でいう保険代理店の募集代理人を指す)向けの教育も進めています。同社の特徴はマイクロファイナンスを行うCARD MRIが母体ですが、近年目覚ましい成長を遂げ、2009年には56万2,000ドルだった収益が2016年には1,900万ドルにも登ります。インターネット上のウェブサイトやテキストメッセージなどで顧客の声を拾い上げ、商品設計に反映させたり、自然災害を始め万一の時に迅速な対応ができるよう、顧客満足度の高いサービスを意識しています。

・BIMA

BIMAはスウェーデンの企業ですが、2010年からモバイルを活用して定期保険、医療保険、損害保険(個人向け)、学資保険、失業保険などを販売し、成長している企業です。自社のプラットフォームを通信会社(モバイル携帯)に提供して、保険の申し込みや保険料の決済を自動化しているのが特徴です。顧客が保険に加入する前にはエージェントが契約内容を説明し、理解を促しています。BIMAはフィリピンでは保険会社であるPioneerと通信会社のTelecomを繋ぐプラットフォームを提供する役割ですし、カンボジアでは引受の保険会社として活躍しています。国々の規制状況などに合わせて柔軟に展開するのが同社の強みといえます。

上記以外にも、さまざまな企業が新興国のマイクロインシュアランスで頭角を現しています。

マイクロインシュアランス(Microinsurance)がもたらす可能性

新興国では銀行口座を持たない人の割合が高いものの携帯電話が普及しているので、直接インターネットサービスを活用すれば銀行等を介さずに彼らにリーチすることができます。また、銀行口座がなくても携帯電話サービスを介して直接保険料の支払いが行えるので利便性が高いのが特徴です。

かつて、低所得者層は生命保険や損害保険に加入することができず、病気やケガ、そして天候によって農作物などに損害が起きたとしても、黙って耐えるしかありませんでした。しかし、こういった層に対して、保険を提供することで、自分たちの身を守り生き抜いていくための保障が生まれ、自分たちの日々の生活や生き方をどうしたらもっとよくできるのかをこれまで以上に考えられるようになったのです。

つまり、こういった取り組みは個々の保険リテラシーの向上に寄与するだけではなく、社会全体でより良い未来に向かって進んでいくにはどうしたらよいのかを考えるきっかけになるということです。もちろん、病気になっていないにもかかわらず病気だと偽るなどのモラルリスクもあり、課題があるのは事実ですが、ビックデータなどの情報データが連動し、より精緻なデータがインシュアテックに活用されるようになれば、そういった詐欺的行為が減る可能性もあります。

インシュアテックは、新興国でこそ期待されるサービス

フィンテックが新興国の金融のあり方を変えていくように、インシュアテックは、新興国の暮らしぶりを変えていく可能性があります。インシュアテックによって万一の時の保障が生まれ、産業が活性化すれば、よりよい社会が訪れる日も遠くないかもしれません。今後、新興国では、フィンテックと同様にインシュアテックが重要になってくるかもしれません。そして、テクノロジーは人々が安心して暮らすための一翼を担っていくのではないでしょうか。

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