リアル店舗の価値を再定義する、アフターデジタルとは?


経済産業省が発表した「DXレポート」によると、2025年までに日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まなければ、12兆円にも及ぶ経済損失が生じると試算されており、DXの重要性が徐々に認知されるようになりました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を浸透させることによって人々の生活を良いものへと変革したり、既存の価値観や枠組みを覆すような革新的なイノベーションをもたらすものであり、日本企業でもすでに様々な取り組みが行われ始めています。

そうした状況の中、近年注目を集めているのがアフターデジタルという考え方です。

デジタルトランスフォーメーションの潮流の中で、既存のビジネスに新たな価値をもたらすアフターデジタルという概念とは、一体どのようなものなのでしょうか?

アフターデジタルとは?
「デジタル技術がリアル世界を包み込み、オフラインが存在しなくなる世界観」

アフターデジタルとは、IoTやセンサーなどが偏在し、デジタル技術がリアル世界を包み込むことによって、オフラインの状態がなくなるような世界観を意味しています。

例えば、電子国民化が進むエストニアや、体内マイクロチップの埋め込みが広がるスウェーデン、そして、AIスコアリングが普及する中国などの海外諸国ではすでに、デジタル技術が人々の生活を覆うようなアフターデジタル化した社会が形成され始めるようになりました。

国内においてもデジタル化が進んでいるのは事実ですが、デジタルトランスフォーメーションと言うと、あくまでもオフラインの現実世界を起点として、そこに付加価値的な意味合いでデジタル技術を用いるケースが多いのが現状です。

しかし、デジタル技術の普及によりアフターデジタル化した社会が広がると、全ての行動がデータに紐づくなどしてオフラインの状態が存在しなくなっていくため、これまでのオフラインを起点とした考え方自体も徐々に成り立ちにくくなります。

そのため、デジタル化する今後のビジネスモデルや社会基盤を見直すための物差しとして、アフターデジタルという概念が注目されるようになったのです。

アフターデジタル時代では、ユーザー体験を高めることが競争原理になっていく


アフターデジタル化した社会において考案され、海外諸国のビジネスシーンですでに浸透している思考法の一つに、OMO(Online Merges with Offline)が挙げられます。

これは、オンラインとオフラインを分けて考えるのではなく、一体のものとして捉え、ユーザー体験(UX)を追求していくという考え方です。

UXを重視しているのは、UXが優れていると顧客との接点が増え、そこで顧客データを集めることが可能になるからです。アフターデジタルの時代においては、そのように、集められたデータを活用してサービスを改善するという循環を繰り返すことが、企業間における競争原理になっていくと考えられています。

このようなアフターデジタル的な考え方が普及する中国では、すでに既存のビジネスモデルが変化し始めているようです。

例えば、特にOMOの取り組みが進んでいる小売の世界においては、これまで業界の主軸に置かれていたリアル店舗が、むしろ、ユーザー体験を高めるための一つの手段として利用され始めるようになりました。

レストランを内設した生鮮食品スーパー、盒馬鮮生


その例の一つが、アリババグループの運営するEC機能を兼ね備えた生鮮食品スーパーマーケット、盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)です。

フーマーの特徴の一つとしては、ECの利便性の高さが挙げられます。アプリ上で商品を購入すると、自宅が3km圏内であれば30分以内に配送してもらうことができるのです。

その一方でオープン当初懸念されていたのは、扱っている商品が生鮮食品だということでした。生の魚や野菜などは、デバイス上で新鮮さを確認することができません。そのため、生鮮食品をECで購入することに対して否定的な顧客層の不安を払拭する必要があったのです。

そのためにアリババが力を入れたのが、スーパーの内装でした。例えば、魚介類を生きたまま展示する広大な展示エリアや海鮮バー、さらには、購入した商品をその場で食べられるイートインエリアを設置するなどして、スーパーの中を体験型のレストランのような内装にしたのです。

そうすることで、店舗に足を運んでくれる顧客のUXを高めることができ、実際に新鮮な食材を見たり食べたりしてもらうことによって、ECを利用する顧客の不安な気持ちを解消することにも繋がりました。

さらに、フーマーではリアル店舗での支払いをフーマー専用のアプリに限定しています。そうすることで購買情報をECとまとめることができ、そのデータを活用して、個別にオススメの商品やクーポンの提案なども行っているのだそうです。

アフターデジタル的な思考は、既存のビジネスモデルを再定義する


近年、玩具量販店のトイザらスや、衣料品メーカーのアメリカンアパレルなど、老舗と呼ばれる小売業者が相次いで倒産したことから、リアル店舗はその存在意義が問われるようになっていました。

そうした中でも、フーマーのような先進企業の取り組みを見ると、アフターデジタル的な視点を持つことによってリアル店舗の役割が再定義されていることが分かります。

オンラインもオフラインも融合させ、ユーザー体験を重視して事業戦略を考える必要のあるアフターデジタルの時代においては、それぞれのチャネルの強みを生かして顧客との接点を作っていかなければいけません。

そのとき、これまでのリアル店舗の主な役割であった「何かを売る」という機能に関しては、手間やコストのかからないオンラインに取って代わられることは避けることができないでしょう。

一方で、リアル店舗は顧客と密にコミュニケーションが取れる場所であり、オンラインでは得ることができない顧客データを集めることのできる場として、優位性の強いチャネルと言うことができます。

その意味においては、これまで「売り場」として進化を遂げてきたリアル店舗は、その価値提供の方法を転換していく必要があり、フーマーのような体験型やエンターテインメント型へと、今後さらに多様化していくことが考えられるのです。

もちろん、デジタルトランスフォーメーションが進むのは小売の世界だけではないはずであるため、その他の業種に関してもアフターデジタル的な思考を応用することによって、新たな価値を見出していくことができるかもしれません。

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