世界一革新的?中国の新興企業「美団点評」を知れば、中国型イノベーションが理解できる!?


アメリカのビジネス誌『Fast Compay』が毎年発表している「世界の革新的な企業ランキング2019」において、中国でフードデリバリー事業を展開する美団点評(メイチュアン・ディエンピン)という新興企業が、アップルなどの有力企業を抑えてトップに輝いたのです。

美団点評は中国でナンバーワンシェアを誇るフードデリバリー事業で成功を収め、現在の時価総額は約7兆2000億円(2019年10月時点)、ユーザー数6億人、月間アクティブユーザーも2.5億人にのぼり、次なるBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)として目されるようになりました。

そんな中国テック界の第三勢力とも呼ばれる「美団点評」の存在を読み解くと、近年の中国企業成功の秘密が見えてくるかもしれません。

そもそも美団点評とは?


もともと美団点評は「ランキングと口コミで探せるグルメサイト」を運営していた点評と、オンライン共同購入型クーポンを販売する美団という2つの企業が2015年に合併したことによって誕生した企業です。

フードデリバリー事業が中国で大成功したのは、「口コミ」と「デリバリー」をワンストップで提供しているからです。

中国人のあらゆる消費活動は口コミサイトのレビューによって意思決定されるほど、口コミは中国人にとって身近なもので、「お腹が減った」と感じたらまず最初に口コミサイトを開き、飲食店を探します。

そして店までの距離や時間の余裕に応じて、店に行って食べるか、デリバリーを注文するかを決めるのですが、中国では女性もフルタイムで働くことが当たり前とされ、都市部になればなるほど労働時間は長くなるため、外食やフードデリバリーの需要が高まっていたのです。

そうした背景があり、口コミサイトとフードデリバリーを掛け合わせたことによって化学反応が起き、現在ではアリババなどを抑え、デリバリー市場の中で美団点評がナンバーワンシェアを誇っています。

ただし、これは美団点評が提供するサービスの一部であり、美団点評がここまで注目を集めるのは、中国最大のOMOプラットフォーマーだという点でしょう。

中国型イノベーションの起点となったのはITからDT(データテクノロジー)への大転換


OMOとは「Online Merges Offline」の略で、オンラインとオフラインの垣根を超えたマーケティング概念を意味するのですが、実際に美団点評は映画、演劇、カラオケ、ホテル、食品スーパー、美容院、歯医者、そして旅行など、考えうるありとあらゆるサービスを集結させているのです。

美団点評が興味深いのはシェア自転車大手のモバイクなど、本業とは関係のないサービスをどんどん増やしており、暮らしの総合会社になろうとしている点だと言えるでしょう。

美団点評がありとあらゆるジャンルを網羅し、次々と事業内容を広げていく背景にあるのは、顧客との接点作りとそれに伴うデータ収集が目的でした。

実は、この「データ収集」に近年の中国企業の大躍進の秘密が隠されているのです。

美団点評に限らず、現在、中国で急成長を果たしている企業の特徴はいずれも、ITからDTへの転換によってユーザーの利便性を高めるという共通点があります。

IT企業によるサービスが様々な分野に浸透することで、プラットフォーム企業に「誰が、どこで、何を買った」といったデータが蓄積され、それらのデータを元に、新しい商品やサービスが次々と生まれ、そこでもさらにデータが蓄積されるという「データ蓄積の循環」が起きます。

中国型イノベーションはすべてQRコードから始まった


データ蓄積の循環を可能にしたのが中国国内で爆発的に浸透していったスマホと、それに伴うQRコードの浸透です。むしろQRコードの浸透こそが現在の中国のイノベーションのすべての起点と言っても過言ではありません。

中国ではQRコードが爆発的に普及し、その結果、世界の先頭を走るキャッシュレス社会が誕生したわけですが、ここまでQRコードが普及したのは偽札が横行していることに加え、中国の金融インフラの脆弱性が理由に挙げられます。

中国ではクレジットカードの保有率が低かったこともあり、ネットショッピングの際には、口座引き落としを選択するケースが一般的でした。しかし、銀行のネットバンクの認証手続きが非常に複雑で、決済に失敗することが多々ありました。

そうした状況の中、決済手続きを簡略化したQRコードが誕生し、モバイル決済が普及、それに伴いECサービスやシャリングエコノミーなど新しいウェブサービスの普及にも寄与することになったのです。

膨大な人口を抱える中国では、莫大な決済情報がデータとして蓄積され、これらのデータを元に次々と新サービスが生まれ、それが現在の中国版デジタル・イノベーションのサイクルの起点となったと言われています。

古代中国が発明したものとして、紙、印刷術、羅針盤、火薬の4つの総称とし中国四大発明と言われることがありますが、これになぞらえて、中国を起点に爆発的に発展した「スマホ決済」「ネット通販」「シェア自転車」「出前アプリ」の4つを総称して「現代中国の新四大発明」と言われるようになりました。

これらのサービスはいずれも、顧客を理解するためのデータ収集のツールとなり得るサービスで、これらのサービスを起点にこれからも「データ収集→サービス開発→さらなるデータ収集→さらなるサービス開発」といったサイクルがこれからも続いていくことになるでしょう。

中国で成功したテック企業がリアル店舗を作るのか?


美団点評は顧客との接点を増やすため、今後は、インストア(店内)・ホーム(家庭)・サービスプラットフォーム(口コミサイト)の3つを軸に事業を展開していくようです。

美団点評が特に注力するのが生鮮食料品の販売で、すでに北京に「小象生鮮(Ella Supermarket)」と呼ばれるスーパーマーケットを開業しました。

中国のEC市場は非常に巨大化しているものの、実は中国国内のEC経由の売り上げは中国全体のまだまだ2割程度であり、オフラインでの消費活動が8割を占めています。

中国最大のOMOプラットフォーム企業として、美団点評はオンラインとオフラインを「顧客接点の一つ」としてとらえ、オンラインとオフラインを一体のものとして、心地よい購買体験を追求しているのです。

顧客との接点を増やすことによって、さらなるデータの蓄積が見込まれ、それに伴い新サービスの登場が期待されています。

本家を超える徹底した顧客サービスを提供することが中国企業成功の要因?


中国企業の発展には「模倣問題」がついて回ることが常ですが、美団点評のCEOである王氏は中国国内では「模倣の天才」と名高い人物です。

実際、王氏の起業家としてのキャリアは、Facebookそっくりの「校内網」やTwitterをコピーした「飯否」など一貫してアメリカ企業のコピーを作ることに終始しており、大成功を修めた美団点評に関しても、アメリカのグルーポンとウーバーイーツを合体させたようなサービスだと言われています。

こうした王氏のやり方は中国国内ですら「模倣がすぎる」と非難に晒されてきましたが、王氏は「本家のモデルを完全にコピーした上でサービスをブラッシュアップして、本家よりも充実したサービスを提供することが王道だ」と複数のインタビューで答えており、確かに中国企業のブラッシュアップ力には目を見張るものがあります。

例えば、BATの一角を担うテンセントの開発には、「10/100/1000」ルールがあるのだそうです。

これは毎月10人のユーザーにアンケート調査、リリース後にWeibo(中国版ツイッター)での反応を100人分チェック、1000人の利用データを収集してフィードバック、といった具合にユーザーの口コミやコメントを精査し、さらにサービスを磨いていくというもので、こうした姿勢は美団点評をはじめあらゆる中国企業にも見受けられます。

今となっては海外から大勢の視察団やビジネスマンが学びを得るために訪れる中国のベンチャー企業群。今後も中国企業から目が離せません。

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