電動キックボードのスタートアップに3000億円の企業価値が付く理由


UberやDiDiを始めとしたモビリティサービスが次々と登場し、さらに自動車メーカーもMaaSに本格的に取り組むなど、モビリティにまつわる話題が尽きない近年、どういう訳か電動キックボードに注目が集まっています。

どうやら電動キックボードは、「徒歩で移動するには遠く、タクシーを使うほどでもない絶妙な距離感の移動」を支える新しいモビリティとして注目され、資金が集まる的になっているようです。

実際、米カリフォルニア州・サンタモニカに拠点を構える電動キックボードのスタートアップ「Bird社」は2017年の創業からわずか9ヶ月でアメリカ市場で史上最速の時価総額1000億円を達成、そして今ではその時価総額は3000億円にまで膨らんでいます。

電動キックボードに注力する企業はBird社だけに留まらず、今ではBMWやFordを始めとした自動車メーカーも次々と電動キックボードへの参入を決めており、電動キックボードの今後の動きに目が離せない状況です。

一体、電動キックボードのどこにそのような魅力があるのでしょうか。

電気キックボードに資金が集まる背景「電動キックボードは都市の毛細血管としての役割を期待されている」


世界中の大都市では必ず「大動脈」と呼ばれる鉄道網や幹線道路が整備されており、都市の発展と交通インフラとの間には切っても切れない関係性があります。

日本経済を例にとってみても、高速かつ大量に人やモノの移動を可能にした新幹線や全国に張り巡らされた高速道路などの大きな交通インフラは、経済の発展に欠かせない要素の一つでした。

しかしここに来て電動キックボードが注目されるようになったのは、既存の大きな交通インフラとは対極にある「小さな交通」に価値が置かれるようになったからです。

都市を人間の体に例えると、大きな交通インフラは体全身に血液を巡らせる「大動脈」といえますが、指先など体の細部を柔軟に機能させようと思えば「毛細血管」の存在が必要不可欠です。

電動キックボードは、徒歩とタクシーの中間に位置するマイクロモビリティと呼ばれる立ち位置で、都市の毛細血管としてその存在が注目されるようになりました。

電動キックボードのメリット1:データで都市をアップデート


アメリカ合衆国運輸省の調査によれば、私たちが行う全ての移動の40%は2マイル以下(約3.2キロ)であり、さらに1マイル以下(約1.6キロ)の移動の60%が自家用車によるものなのだそうです。

3キロの距離を徒歩で移動すれば45分かかるため、大抵の場合、自動車や電車が主な交通手段として選択されがちですが、電動キックボードを使えば10分ほどで移動できるようになります。

駅から自宅(あるいは店)などの短い距離の移動は「ラストワンマイル」と呼ばれるのですが、電動キックボードによってラストワンマイルの移動が補完されることにより交通機関が発達していない都市で生活する人や、自動車を持たない人々の活動範囲が広がり、都市の活性化が見込まれるのです。

また、電動キックボードが都市に定着することによって街のデータが蓄積されるという利点もあります。

電動キックボードには安全性を考慮してGPSやIoT技術を用いた高次元の安全制御が行われているのですが、それと同時に乗車位置、降車位置、交通状況、そしてホットスポットを始めとした人々の移動に関するビッグデータの収集が可能です。

そして電動キックボードの利用に伴い収集されたデータによって、渋滞や交通事故が起きやすい場所やアクセス状況の悪い場所を特定・分析・改善することによって都市のアップデートが期待されています。

電動キックボード2:O2Oサービスの発展に寄与する


近年、フードデリバリーからシェアリングサービスまで様々なO2Oサービスが登場してきましたが、これらのサービスは現実世界の都市を舞台に展開されていることから、都市の機能を最適化することは、サービス普及にも貢献すると考えられています。

例えば、中国でフードデリバリーサービスを始めとしたサービスが広く定着しているのは、マイクロモビリティが発達しているからです。

日本では500円の商品を配達してもらうためには、商品の値段と同じくらいの配送料を支払う必要がありますが、シェア自転車から電動キックボードに至るまでラストワンマイルの移動手段が整備されている中国では500円の商品を50円で配送するビジネスモデルが成立しています。

これはデリバリーサービスだけに留まらず、介護のサービスなど人の移動をサービスとしている場合にも効果が期待されているようです。

通常、交通費がサービス料と同じくらいかかっていたものが、マイクロモビリティが発展することによって、サービスの利用がより気軽になり、高齢化時代に需要が高まる訪問介護とも相性が良いと考えられています。

日本でも電動キックボードの動きが活発化してきた


こうした電動キックボードの動きは日本のスタートアップ聖地として認知度を高めている福岡県福岡市で進んでいます。

現在の日本では、法令と道路整備状況の兼ね合いで、電動キックボードを受け入れるための制度がまだまだ整備されていません。

そんな中、福岡市にある創業特区では国内初の電動キックボードの実証実験が進んでおり、現在は法規制のある電動キックボードに対して、福岡市が公道走行を提案するなど積極的な実証実験が進んでいます。

日本初上陸を果たした大手電動キックボード企業の「Lime」やメルカリが運営する「メルチャリ」が実証実験を進めており、公共交通機関と組み合わせて使うことで、ラストワンマイルの補完を目指しているようです。

これまで遠く離れた2つの都市を繋げることに価値が見出されていた時代から、最寄駅と目的地という短い距離を繋げることに価値が見出される時代へ。

電動キックボードに大きな期待と莫大な資金が集まるという事実は、モビリティに求められる価値が大きく変わってきたことを表しているのかもしれません。

 
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