小松美羽

【インタビュー】小松美羽さんに聞く「あなたのターニングポイントは」Vol.1


――人には、自分だけの物語がある――

人には数え切れないほどの可能性があります。
夜空に無数にある星の中でひときわ煌めく星のように、自分の可能性を信じ、夢に向かって一歩踏み出し、輝き続けている人の原点やターニングポイントはどのようなものなのでしょうか。

今回は小松美羽さん。彼女の物語とは?

国内外で愛される、神獣たちをモチーフにした作品

銅版画をはじめ、ペインティングや墨絵、陶芸品など、日本の伝統的な文化に現代アートを融合させた芸術作品を世界に向けて発信している画家・小松美羽さん。その、唯一無二ともいえる奇異な世界観と迫力に満ちた作風は、世界中のファンを虜にしています。

–小松さんの作品からは力強さだけではなく、愛情やどこか儚さを感じることがあります。世界中の人から支持される理由をどのようにお考えでしょうか。

私の作品のベースとなっている神獣たちは、実は誰しもの心にも根づくリアルな存在だと思っています。ただ、造形が違うだけ。海外に自分の作品を持っていく時は、狛犬などの日本の神獣をベースとしたものが海外の人たちに受け入れて貰えるのか、またはどう説明すればその存在を知っていただけるのかと考えました。

日本では狛犬といえば、神社にいるあれだというイメージを持っていただけるかもしれません。しかし、アメリカでは狛犬といっても多分これがなんなのか分からないと思うのです。犬なのか、ライオンなのか、それともまた別のものなのか……。だから、どう伝えれば共鳴してくださるのかと考えました。どこの国の人であったとしても、記憶の中に根づいている神獣がいて、どこかに造形としての記憶があるはずだから、説明すれば心の根底で通じると思っています。

イギリスだと、体は獅子で上半身が鷲のグリフォン、エジプトはスフィンクス、イスラエルだとケルビムでしょうか。狛犬は日本発祥のものではなく、ルーツは別の国なんです。形を徐々に変えて日本に伝播してきています。私の作品を良いと思ってくださる方々は、作品を通して何かご縁を感じとってくださるからではないかと思います。

–10月(2017年)にはアジア最大級と呼ばれるアート台北で新作を披露されていましたね。

台湾はご縁をいただいている国の一つです。神獣や龍に対する信仰が深い国ということもあり、作品を感じてくださいます。4月には私の作品を購入してくださった産婦人科医の先生とお話をする機会があったのですが、「あなたの作品を見た瞬間、買わなきゃならないと思った。縁起がよくて、悪いものから守ってくれると思った。私が経営している病院の入り口に飾りたい」と思われたそうです。それがとても嬉しかったです。

10月に出展したアート台北は、アジアで最も古いアートフェアです。今年で23回目だったそうですが、今年は専用ブースを設けていただきました。夏から作り始めた新作を7、8点飾り、会期中は私も現地の人たちと交流しました。12月も2日から約1ヵ月間、ホワイトストーン・ギャラリー台北で個展を行います。会期中は私も画廊に顔を出す予定なので、多くの皆様と交流ができればと思っています。現地の人と交わることで見える新しい考え、文化が見えることは作品作りの糧になっていますから。

–その個展が始まる直前には、ホワイトストーン・ギャラリーの銀座新館オープニングにも出展されるそうですね。

はい。11月18日から12月3日(2017年)の会期で、銀座に2店舗目となる新たなギャラリースペースのオープニング特集として、最新作を中心に披露いたします。創業50周年を記念した大きなイベントですが、国内でも、海外でも作品を多くの人に見ていただける機会があるのは本当にありがたいことだと思っています。11月18日から2日間は私もギャラリーにおります。日本国内の活動だけではなく、海外でも作品を広めていこうと思い、今年から本格的に動き出しています。

作品と対話し、一心に思いを込める

–作品から伝わってくるものが多いと感じます。

作品を作る時は、作品を見る人の魂に問いかけるように、気持ちを込めています。人は、純粋なものと触れ合った時には魂が曝け出されるので、私の作品を怖いと思う人もいるかもしれません。なにもされてないのに犬が怖いという人がいますが、それと似た感覚なのかもしれません。私の神獣を愛らしいと表現される人もいれば、「目が怖い」とおっしゃる人もいます。

絵を描く時はまずは瞑想し、心を落ち着かせ、気持ちを切り替えます。そして、神獣を描く時には、必ず最初に目の輪郭を作ります。目を描いて総体的なバランスを考えつつ、そこから少しずつ肉づけしていていくんです。

神獣というのは目が一番重要だと思います。仁王像もそうですが、ギョロッとした鋭い目つきが印象的で、「なんでもお見通しだぞ」と念を押されている気持ちになります。だから、日ごろ悪い行いをしていれば、直視するのが不思議と辛くなってくるんです。少しスピリチュアルな言い回しになってしまいますが、目をあえて大きく象徴的に仕上げているのは、恐怖心を植えつけるためではなく「どうか人を見放さないでいつまでも見守り続けてほしい……」そんな意味を込めています。

–今、目の前にいる柔らかい印象の小松さんとは対照的な情熱、強さを作品から見て取れます。

神獣という存在はどの人の心の中にもいるものだと思っているんです。私は神獣が生き物であるという捉え方をし、作品の制作中には、彼らが自分に乗り移ってほしいと思っています。だんだんと、彼らが動いてくるような感覚で描くように心がけていますし、色味に関しても、インスピレーションを大切にしています。作業中は作品に入り込んでしまうので、足元やそこら中に絵の具が散らばっていますが、スピード感と直感で絵の具を手に取って、色を加えています。

「死生観」 子どもの時から動物たちと触れ合ってきて培われた感性

–小さい頃から絵を描くことが好きだったのですか?

絵を描くことは大好きでした。兄の影響で小さい時から描いていました。自分は絵がうまいという思い込みが強く、妹が生まれるという時にお祝いの絵をたくさん描きすぎて、祖母に叱られたこともあります。うちは母が動物好きだったこともあり、たくさんのペットに囲まれた生活をしていました。主にそれらを描いていましたが、一番思い入れがあったのはウサギのラビちゃんです。あとはインコにハムスター、モモンガ、猫や犬なども描きました。

飼っていた動物は、日中は放し飼いにしていたんですけど、「夜は必ず小屋の中に入れてから寝なさい。学校に行く前は小屋の掃除をしてから行きなさい」というのが両親との約束だったので、動物に始まって動物に終わるという環境で過ごしてきました。

蚕を育てている母の実家からは「天の虫と書いて蚕。蚕は神様の使いだから、夏休みの自由研究でまとめてみたらどう?」と、提案されたこともありました。犬のように表情豊かではないものの、蚕も観察を続けると愛着が湧いてきて、本当に可愛いなと思っていました。

でも、私が一番生と死を感じたのは、ウサギのラビちゃんと祖父です。

 

>>Vol.2では小松さんのラビちゃん、お祖父様の死と現在の作風である大和力に迫ります。小松さんの死生観と現在の活躍のターニングポイントとはどのようなものなのでしょうか。

小松 美羽
1984年長野県生まれ。2014年に出雲大社に「新・風土記」を奉納。2015年には、有田焼の狛犬「天地の守護獣」を大英博物館に永久所蔵を行う。また、2016年にはニューヨークのワールドトレードセンターに「The Origin of Life」が常設展示される。2017年11月18日から12月3日まではホワイトストーン・ギャラリーの銀座新館オープニングにも出展。