オンラインで選択肢は増えた!僕がWeb漫画家になった理由 やしろあずきさん Vol.1


元ゲームプランナーで現在はWeb漫画家として活躍するやしろあずきさん。ブラックユーモアたっぷりの社畜ネタや学生時代のあるあるネタなど、身近なところに潜む題材を持ち前のテクニックで笑いへと昇華させています。新しい漫画業界を支える若きリーダーの過去と現在、そして未来に迫ります。

4コマ漫画と動画サイトで大ブレイク!Vineでは5,500万回再生で世界一を記録!

–やしろさんはWeb漫画家としてご活躍されていますが、どのようなお仕事をされているのかお聞かせください。

Web媒体をメインに漫画家をしています。僕は自分のことを漫画版YouTuberと説明していますが、好きな時に動画を配信したり「日常のあるある」をブログにつづるなど、Webを中心に活動を行っています。漫画家という枠を越えた仕事も行っています。例えば、ぺらいちGANMA!のディレクターとして、才能ある漫画家の卵を発掘したり、「一緒に面白いことやりませんか」と自ら声をかけたりもしています。編集者と広告代理店のメンバーが立ち上げた(株)wwwaapでは執行役員として、若きクリエーター、漫画家の橋渡しもしています。SNSに埋もれた漫画家はたくさんいるので、自分のことだけではなく、彼らにもチャンスが訪れて、芽が出ればよいと思っています。

–ツイッターのフォロワー数やブログのPV数の凄さには驚くばかりです。圧倒的な人気を誇るやしろさんが初めて漫画をWebに配信したのはいつ頃のことでしょうか。

最初に配信したのは4〜5年前。今はサービスが終了している「Vine(ヴァイン)」に動画をあげたり、ツイッターに配信したりしていました。当時はゲーム会社勤務で会社員をしていて、息抜きのつもりで漫画を描いていたので、配信頻度は1週間に1度、日曜日がめどでした。最初のうちは読んでくれる人がいるのかと思いましたが、次第にリツイートされる回数が増え、多くの人の目に留まるようになりました。読者からダイレクトに作品の感想が寄せられるのでとても刺激的でしたし、フォロワー数が日に日に伸びていったのも嬉しいと感じました。

ありがたいことに反響が大きく、漫画と動画の両方から認知されていったという実感があります。

— 6秒だけの動画サイトVineでやしろさんの作品は5,500万回再生されて世界一を記録しました。それにしてもこの数字、何度見てもすごいです。

当時はさほど実感はなかったんですけど、中国のニュースサイトで「話題!」と取り上げられたことによって一気に中国本土と台湾のフォロワーが増えたんです。ただ、彼らが引いていくのもあっという間でした。おそらく日本語の動画しか上げていなかったので、内容を理解できなかったのかもしれないのですが、少し寂しい気持ちになりました。

Vineは6秒という短さの動画です。そのため、面倒くさがり屋の僕にはちょうど良かったんです。YouTubeは基本的に5分以上の長さの動画を配信しなければ広告収入を得られません。また、得られたとしても編集には長い時間がかかります。Vineは撮影後にほぼ編集なしで配信することができたので、僕の性格とも相性が良かったと思います。あとは6秒という短い時間で自分が表現したいことをどこまで詰め込めるかと考えるのが面白かったです。動画に登場していた家族も絶妙なキャラなので、ずいぶん助けられました。

–Vineや漫画にはご家族がよく登場されています。特にお母さまの描写がユニークです。ファンも多いのではないですか?

そうですね。母は昔からノリが良くて、僕の漫画に登場していることも知っています。僕の活動に協力的で、同人誌のイベントでは売り子をしてくれることもありました。

読者から「この漫画で描かれたことは本当に起こったことですか?」と聞かれることがありますが、読者の皆さんに楽しんでいただくために描写やシチュエーションは盛ることもあります。ツイッターでも何度かつぶやいていますが、基本的には出会った人や出来事をベースに漫画としての肉付けを行っています。漫画は分かりやすく面白いことが大前提のため、その2つを肉付けして4コマに仕上げるようにしています。

ですから、フィクションも入っていますし、表現が過激になることもあります。

–まるで起業家のようですね。

確かに起業家と言われればそうかもしれませんね。昔は出版社あっての漫画家でしたが、ここ数年でSNSを介して自分で仕掛けて作品を発表するケースが本当に増えてきました。ツイッターは作品を見た読者の共感が得られると世界中にリツイートされます。それが編集者や企業や広告媒体の人の目に留まることで仕事がいただける時代。漫画家への道のりが昔よりラクになったとまでは言いませんが、チャンスが多いのは確かです。

何が起こるかわからないのがオンラインの世界。ドカンと来た時の勢いは計り知れない。

–やしろさんがオンラインにこだわっているのは、なぜですか?

こだわるというよりも、僕の場合はこの世界への入り口がSNSだったというだけです。雑誌でも描いているので、オンラインに執着していたわけではありません。

オンラインは修正できる点が紙媒体とは異なる点だと感じます。例えば、漫画雑誌は本になってしまえば修正は一切できませんが、Webなら手直しが可能です。また、オンラインだと読者の感想もすぐに読むことができます。厳しい意見をいう人もいますが、どんな反応であれ僕は楽しく読ませてもらっています。

雑誌で活躍中の漫画家さんが以前こんな話をしてくれました。「自分一人で戦っているようで嫌だな」「感想はあとからドッと届くから怖い」と。オンラインの場合は作家に直接メッセージが送れますし、面白くなかったよというネガティブな感想を含めて読者と常につながっているところが楽しい。そこが好きです。

–先ほど、リツイートされることで人の目により留まりやすくなるとおっしゃっていましたが、実際に仕事の幅が広がったという実感はありますか?

それは間違いなくあります。実際に僕はそれで本格的にデビューするチャンスをつかみました。「スタバの竹やん」という、スターバックスで出会った小学生の話を漫画にしたものは、ありがたいことにリツイート数が12万を超える反響でした。それがきっかけで連載の機会をいただきました。この他にもバズった作品はいくつもありますが、そういったことの積み重ねが仕事の間口をどんどん広げていくきっかけになったんだと思います。今では企業広告、雑誌など、さまざまな方面から仕事をいただけるまでになりました。

オンラインは自由気ままなんです。しかし、ちゃんと担当者がついていて、全部が全部自分の思い通りというわけにはいきません。もちろんブログやインスタグラムなどは自分の裁量でやっていますが、作品を企業様などと一緒に進める案件は、企業様のイメージが損なわれないように配慮しなければなりません。僕には担当者が10人以上ついていますが、何かまずい点などがあればすぐに手直しできるよう環境は整えています。そんな風に臨機応変に対応できるのも、オンラインのメリットではないでしょうか。

–では雑誌媒体で掲載することのメリットはどのようなことでしょうか。

有名な漫画誌で描けば、やはり多くの人の目に触れるというメリットがあります。オンラインの場合は拡散しないと届かないのがデメリットです。書店のどこかに置かれているわけではないので、目に触れる触れないという点ではオンラインは圧倒的に負けていて、雑誌のほうが強いと思っています。ただ、オンラインの場合はデメリットもありますが、拡散力が強くドカンときた時の勢いはもう計り知れません。

アメリカの人気歌手、ジャスティン・ビーバーさんがピコ太郎さんの動画をリツイートしたことがきっかけで、世界を巻き込むことに成功しましたよね。どこでどうジャスティン・ビーバーさんの元にピコ太郎さんの動画がたどり着いたのかは定かではありませんが、拡散力というのはつまりそういうことなんです。僕はその爆発的な一種の賭けのような100%運のような、何が起こるか想定できないオンラインの勢いに惚れています。

>>会社員は向かない!信頼、信用が大事なフリーランスとして生きる Web漫画家やしろあずきさん

やしろあずき
1989年生まれ。自由業。株式会社wwwaap執行役員。元ソーシャルゲーム会社員で、2015年の投稿漫画が年間RT数4位の約13万RTを獲得し書籍化。動画サービス「vine」で再生数世界一位も記録。

 

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