エクスポネンシャル思考とは?この時代を生き抜く力


2015年12月、野村総合研究所が『日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能に』というショッキングな調査結果を発表しました。この調査結果には賛否両論あるものの、身近なところでテクノロジーの進化が加速し、それによって多くのイノベーションが起きたことを多くの人が肌で感じているのではないでしょうか。『エクスポネンシャル思考』(齋藤和紀著・大和書房)は、この不確実な時代にどう生きていくべきか、その指針を示してくれています。

エクスポネンシャル思考とは

エクスポネンシャル思考は、著者も通ったシンギュラリティ大学で教えるメインテーマのひとつです。同大学は、エクスポネンシャル思考でこの時代をどう生き抜くかということを研究する教育機関なのです。

シンギュラリティ大学の共同創業者であり、未来学者でもあるレイ・カーツワイル氏は、近い将来テクノロジーが人間の知能を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」に達するだろうと予見しています。カーツワイル氏によると、シンギュラリティは通過点に過ぎず、技術が加速度的に成長し、テクノロジーも今後の進化のスピードが無限大になる日がやってくるかもしれないとしています。今後10年で今まで考えもしなかった大きな変化が訪れる可能性も十分にあります。

この技術進化のスピードはエクスポネンシャル(指数関数的)で、今後はそのスピードに対応した生き方を選択する必要があります。エクスポネンシャル思考は外部環境の変化を捉えてテクノロジーを俯瞰し、その考察に基づく「ムーンショット」を掲げて飛躍的に成長するために必要なことだと著者は述べています。

アリがゾウを倒す時代

今はアリがゾウをいとも簡単に倒せる時代です。例えば、アマゾンが創業したのは1994年でわずか20数年前のことです。オンライン書店として自宅ガレージで事業をはじめた同社は瞬く間に成長し、アメリカでNo.2の書店チェーン「ボーダーズ」が経営破たんする原因のひとつにもなったと言われています。そして、2018年現在は、「地球上でもっとも豊富な品ぞろえ」を謳い、ウォルマートなどをはじめとした大手小売業にとって驚異的な存在になっているのです。

それだけではありません。アマゾンは2006年には企業向けのクラウドサービス「AWS」を公開し、ハードウェアを月額課金でサービス化しました。今や世界中の多くの企業がシステム基盤にAWSを採用し、マイクロソフト、Google、IBMなどを抜いてシェアトップに輝いています。最近ではアマゾンが銀行業に参入するではという声が聞かれたり、日本でもQRコードを活用したキャッシュレスサービス「Amazon ショッピングアプリ」が開始されるなど、いまや「アマゾン・エフェクト」はあらゆる産業におよんでいるのです。

これまではベンチャー企業や中小企業が大手企業に勝負をするには、大手企業が参入しない「ニッチ」な分野を狙い、そこでの地位を確固とするのが定石でした。しかし、アマゾンの例を見てもわかるように、近年ではベンチャー企業もこれまでとは異なる新しい価値を創出し、既存の大手企業のシェアを短期間で奪取できるようになっています。

こういった新しい価値は、テクノロジーを俯瞰することで生み出されます。企業においても外部環境とテクノロジーの潮流を見極め、価値創造に向けてチャレンジし続けることが企業の発展と生き残りをかけて必要不可欠だといえるかもしれません。

個人の力が大きく発揮される時代

新しい価値はもちろん個人でも生み出せます。これまで個人の才能やポテンシャルは組織の中で活かされてはいるものの、「個」としては埋没していました。しかし、今ではSNSで個人の才能を世の中の人に対して自由に発信することができます。フォロワーの数、「いいね」の数で多額の収益を得るインフルエンサーも出現しています。組織や会社名ではなく自分自身を会社と見立てて信用力を高め、能力を発揮する時代が訪れているといえます。

クラウドファンディングやICO(Initial Coin Offering)の登場で資金を持たない個人でもインターネットを通じて資金調達を行うことができるため、新しい商品やサービスを生み出せるようになりました。テクノロジーによって個人の力が組織や会社の壁を超えて輝き始めています。

しかし、個人の力をエンパワーするためには、多くの人に共感・支持してもらう必要があります。そのためには大きな目標を掲げて圧倒的な成長を達成し、認めてもらわなければなりません。著者も本書の中で「10%の成長ではなく、10倍の成長を目指せ」と述べています。今より10倍の成長を目指ためにはどのようにしたらよいのでしょうか。エクスポネンシャル思考においては、日々進化するテクノロジーを活用して、根本からこれまでのやり方を見直すよう提唱しています。

AI時代のロールモデルの1人 藤井聡太7段

新しいイノベーティブな力を使って新時代を築いている1人に将棋界で注目を集める藤井聡太7段がいます。彼は将棋の研究にAIを活用していることでも有名です。2018年6月の竜王戦ランキング戦5組決勝では、AIが「悪手」と判断した手で石井5段を破って話題になりました。

これについて藤井7段は2018年6月の会見で「最近のソフトは大変強いことは言うまでもないことですけれども、部分的には人間の方が深く読める局面もあると個人的には考えていたので、 それが現れたのかなと思います」と発言しています。彼のこのような考え方は新しい時代のロールモデルだといえますし、新しい普通を生み出す源泉になると考えられるのではないでしょうか。

個人の力を信じて夢を描こう

テクノロジーにしろ、自分のことにしろ、変化する兆しは最初とても小さく、多くの人が見逃しています。しかし、あるときから指数関数的に変化の度合いが激しくなり、あっというまにその波に飲み込まれてしまいます。変化の兆候を読み取って素早いアクションを取り、時代に先駆けて成長していく力がこれからは求められるでしょう。これを繰り返すことで大きな夢に向かって圧倒的に自己成長できるとこの本は教えてくれているのです。あなたもエクスポネンシャル思考を活用し、世の中を俯瞰し、これからの時代にどう自分を輝かせることができるのかを考えてみませんか。