起業だけじゃない?M&Aという選択肢も


アメリカなどでは、会社名よりも自分の職種を重視する傾向がありますが、「日本ではどこの会社の誰それ」という、会社名を重要だと思う風潮があります。しかし、少しずつその風潮も変化しているようです。会社を辞める・辞めないにかかわらず、別の会社を立ち上げる時には一から事業を興す以外に、会社や事業を買うという方法があります。インターネット上のマッチングサービスを活用して小規模のM&Aを行い、事業を始める人が増加しています。

小規模M&Aが増える背景には後継者不足の波

M&Aといえば、大企業同士やベンチャー企業のEXIT目的で売買が行われ、「1回で億単位のお金が動く」というイメージを持つ人が少なくありません。2018年1月に中小企業庁が発表した「中小企業・小規模事業者政策について」では30歳以上40歳未満における経営者層について、直近3年間の売上高が増加する傾向があり、経営者の代替わりが生産性向上に寄与する可能性を秘めているのです。

しかし、事業承継の実態を見ると経常黒字にもかかわらず廃業する企業が49.1%もあります。この背景には、日本の少子高齢化の問題があり、引き継ぐべき後継者がおらず、廃業という選択をせざるを得ないのです。

また、今後10年間で日本の中小企業や小規模事業者の経営者は約245万人になるそうで、そのうち127万社の中小企業で後継者が決まっていません。この社数は日本企業全体の3分の1にあたるそうです。この状況が続けば、日本のGDPが約22兆円失われる可能性があるという試算が出ており、後継者不足問題をどう解決すべきか早急に対策を考えなければなりません。

税制などの国の制度改正が行われる一方で、ここ数年、数百万円から数千万円単位の小規模のM&Aが増えてきているようです。企業をまるごと買収するだけでなく、事業の一部を買い取るM&Aもあります。こういったM&Aは対面以外にもインターネット上のマッチングサービスによって行われているのです。企業経営者だけではなく、会社員やフリーランスの中からも「数百万円ほどで事業や会社を買う」という動きが見受けられるのです。

会社や事業の買収は夢への実現にかかる時間をショートカットする

大会社に入社して社会人としての基本動作や仕事の仕方、人脈形成をしてお金を貯めてから起業したいと思う人もいるようです。ただし、実際に企業で働くのと会社を立ち上げて軌道にのせるのは別のスキルが必要です。いくら大企業で優秀な成績を収めたとしても、起業後のビジネスがうまくいかずに夢を途中で諦める人もいます。

日本では起業しても10年後にも存続しているのはほんの数%の割合だと言われています。その数%になれるかは自分次第です。事業内容次第では軌道に乗る前に会社の資金が枯渇するかもしれませんし、別の会社が同様のサービスをローンチしたり、シェアを拡大するかもしれません。販路拡大がうまくいかなければ売上も見込めません。

一方、会社や事業を買う選択をする場合のことを考えてみましょう。特に後継者が不足している地方では、優良な中小企業や小規模事業者がたくさんあります。そこには販路やノウハウ、人材、資材、特許、免許、不動産といった有形資産や無形資産がすでに揃っており、承継するだけで事業をスタートすることができるのです。また、すでに売上があれば一定のキャッシュフローが確保できるので事業計画書が作りやすく、自分の夢の実現に向けた時間のショートカットも可能です。また、事業をイチから始めることに比べれば、事業に失敗するリスクを抑制することにも繋がります。

一方、他から会社や事業を買うということは、有形資産や無形資産だけではなく、そこにいる従業員の雇用や社内規程なども引き継ぐことになる場合もあります。それぞれの従業員の雇用契約書や社内規程をよく確認し、従業員たちが安心して働けるよう仕組みづくりを行わなければ、他社への流出につながる可能性もあります。そのため、会社の状況をよく理解することが大切ですし、それ以上に会社に属す経験を生かして仲間の従業員たちと一緒に会社内の課題を解決し、よりよい会社作りに務めることが大切です。

M&Aのマッチングサイトも登場

M&Aを行う場合には、購入資金が億単位になるケースが大半で、個人が事業を買うには不向きだと考えられます。そのため、まずは各都道府県に設置されている「事業引継ぎ支援センター」(中小企業基盤整備機構)に問い合わせ、登録されている数百万円で買える売上高数千万円規模の会社を紹介してもらうのがよいでしょう。

しかし、忙しい人の場合、平日の日中にセンターに足を運ぶことは難しいかもしれません。そういった人はインターネット上のプラットフォームをチェックしてみるのも一案です。小規模のM&Aプラットフォームが海外にあるように、日本でもインターネット上のマッチングプラットフォームでM&Aが成立するようになっています。

例えば、アンドビズの「Batonz」、ビズリーチの「ビズリーチ・サクシード」、トランビ「TORANBI」、FUNDBOOKの「FUNDBOOK」などです。ここでは地方の黒字経営の会社や優良企業を始め、パン屋や花屋、美容院、伝統工芸品や飲食店など、さまざまな事業が売りに出されています。それらを見ていると、自分の方向性のある事業や、興味のある優良事業が見つかる可能性もあります。

これは、事業を手放す側の企業経営者にとってもメリットがあります。後継者不在で廃業を検討する企業にとっては、社名や形は変わるかもしれませんが、廃業せずに後世に受け継ぐことができます。黒字廃業をせずに新しい経営者との道を選択すれば、これまでとは別の形でビジネスを拡大できるかもしれません。

M&Aにより多様性のある働き方や生き方ができる世の中が訪れる

こういったM&Aは数百万円単位でも行えるので、会社員でも事業投資や副業として投資が行われています。会社を退職して起業せずとも、会社に属しながら副業やパラレルキャリアとして別事業に携わることができるのです

今後、本格的に大相続時代を迎える日本は真剣に事業承継について考えていかなければなりません。2018年11月にはカレーチェーンの「ゴーゴーカレーグループ」が後継者不足に悩んでいるカレー屋さんの事業を引き継ぐとして、ビズリーチ・サクシード経由で募集を始めています。これは法人の取り組みですが、今後は個人でもこういった事業譲渡の呼びかけが進んでいくはずです。現在の会社経営者たちが築いてきた事業をM&Aによって引き継ぎ、新たなエッセンスを加えて現代流にアレンジすれば新たな可能性が生まれるかもしれません。それが夢の実現に向けたショートカットになるなら、選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。