データから読み解く老後2000万円問題。理想のライフスタイルとは


老後資金として2000万円が必要というのは本当なのでしょうか。より詳細なデータを見ていくと、ライフスタイルが、老後の生活費を左右することがわかりました

IターンやUターンの前に知っておきたい、大都市・地方で異なる お金のかかり方

金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループがまとめた報告書で老後資金として約2000万円が必要であるとしたのは、「家計調査(2017年)」における高齢夫婦無職世帯の調査結果を根拠にしたものです。同調査では、実収入が20万9,198円である一方、実支出が26万3,718円であったため、毎月の不足額を約5万円として、30年で約2000万円の取崩しが必要と算出しました。

しかし、その「家計調査」をよく読み解いていくと、居住エリアによって消費支出が大きく異なることがわかってきます。IターンやUターンが注目されている昨今、こうしたお金のかかり方の違いを把握しておくことも大切になってくるのではないでしょうか。

「家計調査(2018年)」で大都市、中都市、小都市A、小都市B(町村)といった都市階級別の1ヵ月間の収支と支出を見てみましょう(※)。2人以上の世帯のうち無職世帯、世帯主の平均年齢がおおよそ74歳という調査において、赤字額が最も多かったのは大都市で、実収入は約21万8,000円に対し、実支出は約28万3,000円と月の赤字額はなんと約6万5,000円にもなりました。仮にこの収支で、老後を30年として計算すると、2340万円の老後資金を必要とすることになります。

一方、最も赤字額が少ないのは人口5万~15万未満の小都市Aです。実収入約21万9,000円に対し、実支出は約25万6,000円で月の赤字は約3万7,000円、30年で約1330万円と、大都市部に比べて約1000万円少ない老後資金で済むことになります。ちなみに赤字額が次いで少ないのは、中都市で月約4万6,000円、そして小都市B(町村)の月約4万8,000円と続きます。 ※大都市は政令指定都市及び東京都区部(静岡市を除く)、中都市は大都市を除く人口15万以上の市、小都市Aは人口5万~15万未満の市、小都市Bは人口5万未満の市、町村

ポイントは「住居費」「食費」…そして「車」

なぜこのような差が生まれるのでしょうか。

大都市が他エリアに比べて特に多く出費しているのは、住居費や食費、教養娯楽費です。まず住居費ですが、大都市は最も少額の小都市B(町村)に比べ、月約1万円多くかかっています。この調査における大都市の持ち家率は90%と小都市B(町村)より4%ほど低く、家賃地代が平均を押し上げているせいもあります。しかし、設備修繕・維持費における「工事その他のサービス」の費用も高く、他エリアより3~4,000円多くなっています。

食費は、都市規模が大きくなるほど高額になっています。調味料や嗜好品にかける費用はほぼ変わらないのですが、特に大都市は生鮮野菜の値段高く、外食にも他エリアより月2,000~3,000円多く費やす傾向があります。また、人口の多い都市階級ほど、旅行などの教養娯楽サービスにお金を使っているのも特徴的です。

逆に、地方都市が多く出費しているのは、自動車関係費です。小都市B(町村)は、大都市より月8,000円も多く出費しています。また小都市B(町村)は、他エリアに比べ、光熱・水道費や交際費が多くかかるといった特徴もみられます。

お金のかからないライフスタイルを考える

このようにデータの差を見ていくと、お金のかからないライフスタイルとして、まずは大都市から離れ、住居費や食費も抑えシンプルに生活し、庭先や畑で自家用野菜を楽しみながら自然と共に生きるスタイルがみえてきます。自然環境の良さは、旅行など娯楽への依存をも低くしてくれるでしょう。自動車関係費についても、高齢者の免許返納の話題も出ている昨今、いっそ自動車を持たない生活を考えてみることもいいでしょう。そう考えていくと、公共交通機関に頼れるため、中都市、小都市Aの街中がよいでしょう。小都市B(町村)ほど、水道・光熱費も交際費もかかりません。

ひとつの結論として、人口15万人程度の都市に居を構え、車を持たず、外食を控え、庭先の野菜をふんだんに取り入れた食事をとり、近くのハイキングで旅気分を満喫する生活がデータから読み解いた理想の生活スタイルです。

ただし、これはシニアライフを楽しむための一つの選択に過ぎません。本当に大切なのは、お金も気持ちもストレスなく自分が描いたライフスタイルを実現することでしょう。老後2000万円問題は、個々が描く生活環境によって大きく変化する課題なのかも知れません

 
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